ナイちゃんの華麗《カレー》なる人生の記録 第6話
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「あたしがなぜ、痛みのない存在として生まれたのか、それを知っているの?」
「ええ。私はあなたの謎をすべて知っている存在。華麗《カレー》の存在を人間界から消滅させるために存在する神」
「神様?」
「そう。神様なの。あなたからすべての痛みを奪った元凶。私に勝つことができれば、その謎をすべて教えましょう」
「だったら、あたしは……あたしのすべてを、あなたにぶつけるわ」
ナイちゃんは「伊丹さんちのカレー屋さん」で調理していた「あのカレー」の原型をつくった。
そしてナイちゃんの謎を知る神にカレーを食べさせる。
どかーん!
神は爆発した。
「これがイタミ・ナイの最先端華麗技術の結晶……やられたわ」
「さあ、とっとと謎を教えなさい」
「ええ、すべてを教えましょう。あなたは華麗神《カレーしん》という神様の生まれ変わりなの」
「華麗神《カレーしん》? その生まれ変わり?」
「そう。すべては人間から華麗《カレー》を消滅させるために仕組んだ私の計画だったの。私は神の食べ物だった華麗《カレー》を人間界で意図的に広めた華麗神《カレーしん》を憎んでいた。だから人間に生まれ変わったあなたに痛みを与えなかった。新たな華麗《カレー》を誕生させないために」
「どういう意味よ?」
「あなたに痛みを与えなかったのは新たな華麗《カレー》を人間界に誕生させないためだった、ということよ」
神は言った。
「華麗《カレー》には人間にはもったいない食べ物だわ。痛みを知り、痛みを愛す人間にとって贅沢な食べ物だ。それを人間に食べさせるなんて贅沢の極みよ。だから、新たな華麗《カレー》を誕生させる存在――華麗神《カレーしん》の生まれ変わりであるあなたから痛みを奪った。あなたの存在がそれだけ憎かった。それが理由」
神は笑顔で微笑み。
「さあ、行きなさい。今、あなたの体は瀕死状態よ。この天下一華麗料理会に『優勝した』ってことは『願いが叶う』ってことよ。あなたは生きて帰りたいのでしょう、人間界に」
「そうだったのね。あたし、華麗神《カレーしん》の生まれ変わりだから、こんなところで、こんな料理の大会に参加することになってしまったのね。だから人間界で、あたしが今、瀕死状態になっているから、あたしの願いは『生き返る』ことなのね」
「ええ。舞台は華麗神《カレーしん》のために整えられたようなもの。だから生き返りなさい、伊丹《いたみ》奈衣《ない》っ! あなたは神の生まれ変わり。短命は天才の宿命よ。残りの人生の三十日間をかみしめながら生きていきなさいっ!」
爆発した神の残骸は霧となって消えた。そしてナイちゃんは――。