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やがて王国を追放される貴族の僕の英雄物語 第31話 僕と第一皇女はメイドと元許嫁と女神様と合流する

  *

 しばらくして落ち着いたところで、僕はバーシアさんに尋ねてみた。

「さっきの爆発って一体なんなんですか……!?」

 すると、彼女は真剣な表情で話し始めた。

「おそらくですけど、何者かによる襲撃だと思います」

「襲撃をおこなうメリットがあるのですか?」

「それはわかりません。ただ、一つだけ言えることがあります」

「なんでしょうか……?」

「どうやら、この帝国に敵がいることだけは、わかります」

 その言葉を聞いた瞬間、全身に寒気が走ったような気がした。

(これからどうすればいいんだろう……)

 そんなことを考えながら途方に暮れていると彼女が話しかけてきた。

「ゴーシュ君、大丈夫ですか?」

 心配そうな表情を浮かべる彼女を見つめながら僕は考えていたことを口にした。

「大丈夫です……それよりも今はここから逃げることが先決だと思います!」

 すると彼女は優しく微笑んでみせた後で僕の頭を撫でてきた。

「……えっ!?」

 驚いて固まっていると彼女が言った。

「ふふっ、ごめんなさいね。ゴーシュ君がかわいくてつい撫でてしまいました」

 そんな発言をされたせいで顔が真っ赤になってしまったが、なんとか平静を装って返答することに成功した。

「い、いえ、だ、大丈夫ですよ!」

 しかし、バーシアさんはクスクスと笑うばかりだった。

(本当に不思議な人だ……)

 そんなことを思っていると彼女の方から口を開いた。

「それじゃあ、そろそろ移動しましょうか?」

 その言葉に対して僕が頷くと彼女は立ち上がった。

 それに続いて僕も立ち上がると二人で歩き始めた。

 それからしばらくは無言の時間が続いた。

 お互いに何も話さないまま歩き続けていたのだ。

 そんな状況の中で僕はあることを考えていた。

(メイとドロワットさん、ソフィアは無事なのだろうか……?)

 彼女たちの身を案じていた僕だったがその不安はすぐに解消されることになる。

 なぜなら、目の前に見知った人物が現れたからだ。

「ゴーシュ様! お迎えに上がりました!」

 そう叫びながら近づいてきたのはメイだった。

 その様子を見る限りでは特に問題はなさそうだったので安心した。

 そして、次に現れたのはドロワットさんとソフィアだった。

「三人とも無事だったんだな……!」

 僕がそう言うと二人は笑顔で頷いてから返事をしてくれた。

「わたくしたちは大丈夫ですわ!」

「はい、ご覧の通り、ぴんぴんしてます!」

 そんな二人を見た後で今度はメイに声をかけた。

「それにしても、よくこの場所がわかったな?」

 すると彼女は胸を張って答えた。

「もちろんです! このくらいのことなら朝飯前です!」

(すごい自信だな……)

 そんなことを考えているとバーシアさんが口を開いた。

「さて、これでゴーシュ君のパーティーメンバーが揃いましたね」

 それを聞いた僕は頷いた後でみんなに声をかけることにした。

「よし! みんな揃ったことだし、このまま帝都の被害を食い止めよう! だって僕たちは武器を扱える冒険者でもあるのだから!」

 その言葉を聞いてみんなが頷くのが見えた。

 それを見た僕は満足気に微笑むのだった。

  *

 その後、僕ら五人は行動を開始した。

 まずは被害の状況を把握するために辺りを見回ることから始めた。

 その途中でドロワットさんから質問を受けた。

「そういえば、先ほどの爆発音はなんなのでしょうか?」

 それに対して僕は自分の考えを述べることにした。

「恐らくだけど、何者かによる襲撃だと思う」

 それを聞いた三人は驚きの表情を浮かべた。

(まあ、無理もないか……)

 そんな三人に向けてさらに話を続けることにした。

「最初に考えられる可能性は二つあります。一つ目はスプリング王国が仕組んだものであるということ。二つ目は、ほかの人間によるもの……というところですかね」

「確かに、可能性としてはありえますね……」

 そんな会話をしながら歩いているうちに次の目的地に到着した。

 そこは冒険者ギルドだった。

 ギルドの中に入ると受付嬢のお姉さんから声をかけられた。

「あら? ゴーシュ様と、そのお仲間たちではありませんか? バーシア様まで……」

 それを聞いて僕は事情を説明することにした。

「実は先ほど、近くで大きな爆発がありまして……」

 そこまで言うと察したのか彼女は真剣な表情を浮かべてから言った。

「なるほど。確かに爆発音は聞こえていましたので、ギルドにいる冒険者にも、その爆発の対応をおこなってもらっています。それで、ゴーシュ様たちはどうされるのですか?」

「できることならば犯人を突き止めたいと思っています」

「わかりました。協力いたします」

 そして、再び僕たちに向き直ると続けてこう言った。

「ちなみにですけど、今回の犯人はわかっているんですか?」

 その問いに僕は正直に答えることにした。

「いや、それがまだわかっていないのです……」

 そう答えた直後のことだった――。

「――っ!?」

(なんだ……今の感じは……)

 まるで誰かに見られているような気配を感じた気がしたのだが……気のせいだろうか?

 いや、そんなことはないはずだ……!

(誰かがいる……しかもすぐ近くに……!)

 そんなことを考えていると突然、背後から声をかけられてしまった。

「ほう、貴様のようなガキでもわかるようだな……?」

 反射的に振り返るとそこには見知らぬ男がいた。

(いつの間に後ろにいたんだ……!?)

 あまりにも突然のことに動揺していると男はニヤリと笑いながら言った。

「そんなに驚く必要はないだろう? それとも何かやましいことでもあるのか?」

(なんなんだ、こいつは……!?)

 そう思った次の瞬間にはドロワットさんたちが動いていた。

 真っ先に動いたのはバーシアさんだった。

 目にも留まらぬ速さで男の背後を取るとそのまま首筋に剣を突きつけるのだった。

 その動きを見ていた僕は思わず見惚れてしまっていた。

(これがバーシアさんの実力なのか……!?)

 そんな僕の視線に気づいたのか彼女は一瞬だけこちらを振り向くと微笑んだ後で男に視線を戻した。

 その直後の出来事だった。

 なんと、男が一瞬にして消えてしまったのだ。

(一体、どういうことだ……!?)

 困惑している僕に声をかけてきた人物がいた。それはメイであった。

「ゴーシュ様、あの男のことなのですが……」

 そう言って彼女が説明を始めようとした時だった。

 突如、上空から声が聞こえてきた。

「おっと、余計なことをしゃべるなよ?」

 声のした方を見るとそこに立っていたのは先ほど姿を消したはずの男だった。

 彼は不敵な笑みを浮かべながら言った。

「お前たちのことはよく知っているぞ」

(この男、まさか王国の手先なのか……!?)

 そう思っていると彼が続けて言ってきた。

「お前の名前は確かゴーシュ・ジーン・サマーだったな……?」

「なっ!?」

 なんでこいつが僕の名前を知っているんだ……!?

 そんな疑問を抱いているとバーシアさんが男に尋ねた。

「あなたは何者ですか?」

 すると男は余裕たっぷりにこう答えた。

「俺の正体なんてどうでもいいじゃないか、それよりも俺の質問に答えてもらおうか」

(くっ……! どうする……?)

 そんなことを考えていると隣にいたメイが耳打ちしてきた。

「ここはわたしに任せてください!」

 彼女の言葉に驚いていると彼女は自信満々な様子で告げた。

「わたしが時間を稼ぎます! その間にゴーシュ様は他の方々と一緒に避難してください!」

 それを聞いた僕はすぐに首を横に振った。

「ダメだ! そんなことできるわけがないだろ……!」

 しかし、そんな僕に対して彼女は優しく微笑んでみせた後で言った。

「大丈夫です! わたしのことは信じてください!」

 そんなやり取りをしている間も男は黙って待ってくれているわけではなかった。

 それどころか苛立っているように見えた。

「おい、いつまで待たせるんだ? 早く答えろよ」

 そう言いながら男は指を鳴らした。

 その瞬間、彼の周りに複数の魔法陣が現れた。

(まずいっ!?)

 そう思った時には、もう遅かった。

 無数の炎の槍が僕らに向かって飛んできたのだった。

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