この世界に愛は存在すると思いますか?(短編小説)
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「この世界に愛は存在すると思いますか? 私は愛を諦めだと認識しています。そして、私はそれでいいと思っています」
「……それで、いい?」
「ええ、だって愛とは諦めることですから。私は愛に夢を見ていません。だから――」
そこで、言葉を区切って彼女は言う。
「――愛なんて必要ないんです」
「うん、そうかも。愛なんてなくても世界は回るし、人は生きていける」
「はい。私も、あなたと同じ考えです」
僕と彼女は笑い合う。
「それじゃあ、僕らは、ある意味、似た者同士なのかもしれない」
「ふふっ、そうかもしれないですね」
「でもさ……」
「はい?」
首を傾げる彼女に、僕は微笑んで言った。
「僕はキミを愛しているよ」
「…………」
僕の言葉を聞いた瞬間、彼女の顔が真っ赤に染まっていく。
そんな反応をされるとこっちまで恥ずかしくなってきてしまうじゃないか……。
「……ばーか」
小さな声で呟いた彼女の言葉を聞きながら、僕は自分の頬が熱くなっていることを自覚するのだった。