3つの好きな映画|フランスの奥深いローカルへ[ブルターニュの古城、バスクの街道、アルプスの修道院]
音がないから、聴こえてくる
言葉がないから、見えてくる
フランス・アルプスに佇むグランド・シャルトルーズ修道院。俗世間とは隔絶したこの地で、修道士たちは1日の大半をひとりで過ごす。仲間との会話が許されるのは、日曜日のたった数時間だけ。それ以外は一切の言葉を発することなく、沈黙を守る。
中世から現存する石造りの修道院で、ただ静かに黙々と祈りと学習に励む。聞こえてくるのは、人が動くときに発生するわずかな動作音。
山間に響き渡る鐘の音、風に揺れるカーテン
屋根から滴る雪解けの水、虫の声
沈黙の中で、聞こえてくる音の数々。言葉を発しないからこそ、見えてくる絵画のような光と影。映画の撮影を申し込み、待つこと16年。世界で初めて撮影を許された映画は、レンブラントの絵画のように美しい。
ということで、フランスの村々に息づく伝統と文化を探る旅。数千年にわたる豊かな歴史をもつフランスのローカルへ、映画を通して没入してはどうでしょう、という話。
ブルターニュのケルト文化と孤島の古城
アルプスに佇む中世からの修道院
バスク文化に染まる宿場町と巡礼の旅
燃ゆる女の肖像|ブルターニュ
ブルターニュのケルト文化と孤島の古城
フランス北西部ブルターニュ地方。かつてはブルターニュ公国として独立していたこの地は、ブルトン文化が息づく異国情緒溢れる場所。花崗岩からなる石造りの民家や、木組みの民家が多く存在し、深い藍色に輝く屋根に覆われている。
撮影には、孤島に実際に残っていた古城を使用。古城が醸し出す雰囲気と相まって、2人が身に着けている赤と緑のドレスのコントラストは絵画のように美しい。
ケルト民謡のような歌声響く焚き火シーンは圧巻
大いなる沈黙へ|アルプス
アルプスに佇む中世からの修道院
修道院の麓に広がる集落は、小石を積み上げて建てられた民家が建ち並び、まるで中世から時が止まったかのような情緒ある街並みが広がる。
監督は何度も何度も撮影を申し込むが、時期尚早と断られ続け。16年の時を経て「準備が整った」と修道院から連絡が来た、というエピソードは、ほんとすごい。
削ぎ落とされた暮らしの音と表情の豊かさ
星の旅人たち|バスク
バスク文化に染まる宿場町と巡礼の旅
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、ローマ、エルサレムと並びキリスト教三大巡礼地のひとつ。この聖地を目指す巡礼の道は1000年以上の歴史を持つ。
巡礼の出発地はサン・ジャン。白壁に赤や緑の窓が印象的な街並みは、バスク文化の趣。バスク地方は民族的にフランス人やスペイン人とは異なるルーツを持ち、独自の文化・言語をもつ。
息子の突然の訃報に、人生の"道"を見失う父。亡き息子のバックパックを背に巡礼の旅に出る。旅で出会う見知らぬ巡礼者たちが、互いに励ましあい、語りあい、出逢いと別れを繰り返す。
さあ、人生の旅に出かけよう
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