小さな旅・思い立つ旅|本を巡る旅[書店・図書館・古本屋]
考えるときは、本を読む
「本を読んで考える」ではないところがミソ。何かの本か雑誌で目にした言葉だったと思うけど、とても共感できたので、すごく覚えているいい言葉。
本を読みながら、本の内容について考えるのではない。本を読みながら、いつの間にか別のことを考える。本を読んで、本の内容もなんとなく入ってきているんだけど、別のことも同時並行で考えている感じ。
本をきっかけに、思考の旅に出る。
何か考え事をしたいときに、一人静かなところで目を閉じても雑念が邪魔をする。そんなときは本を読む。本に集中してしばらく経つと本の世界に入り込む。その状態を維持したまま、さらに時間が経つと、いよいよ思考の旅が始まる。
早く思考の旅に出たいと思ってしまうと、雑念が入ってなかなか旅に出ることはできない。まずは本に集中して、本の世界に入るしかない。
本は“思考の旅”へ誘う“切符”かな
と、いうことで、ここ数年で印象に残った書店と図書館と古本屋をご紹介。いずれもオーナーの本に対する愛情がしっかりと伝わるいいところ。
books+kotobanoie[一の鳥居]
本のあるところ。
自分が暮らしている家(=コトバノイエ)を、奇跡のような本当の出会いの場にしたいと思い、そんな場所を書店といっていいものかどうかさえわからないから、とりあえず「本のあるところ」と呼んでいる、とのこと。
完全予約制、見た目は住宅。
知らない人はそこが書店だとは全く思わない。そんな佇まい。
本棚でできた平家の家。個人邸にお邪魔して、本棚に並ぶ本を見て、気になる本を手に取って、読んでみる。時にはオーナーと本や建築について談笑する。
本棚を中心に回遊できる住宅で、その周りに庭が広がる。とてもよくできた住宅。最高に心地いい。
Lucha Libro[東吉野]
人文系私設図書館
聞きなれない言葉だけど、簡単に言えば、自分たちが持っている本を並べて図書館と名乗っている、とのこと。オーナー夫婦は、元図書館司書と関大博物館の元学芸員。
蔵書は歴史や文学、思想、サブカルチャーといった人文系の本を中心としており、「役に立つ・立たない」といった議論では揺れ動かない一点を常に意識している、と。
吉野の山奥、川のせせらぎと木漏れ日に包まれる理想郷のような場所。川向かいを通る車で行き交う人たちは、おそらくここに図書館があることなんて、思っても見ないだろうなぁと。図書館以外は何もない贅沢さ。
橋を渡り、木立を抜けて、古民家の図書館でひとときを過ごす。
とても心地いい読書体験。
三歩書店[伊賀]
週末限定の古本屋さん。
ご夫婦が60歳を過ぎたころ、玄関横に使用しないまま放置していた約8畳の空間を改装してできたお店。店名は3歩で店内を回れてしまうことが由来とか。でも、店内には芸術、旅行、エッセイ、小説、絵本など幅広いジャンルの約2千冊が所狭しと並ぶ。
建物もとてもいい。
道路際にあえて塀をつくらず、低木少なめで、とてもすっきりした外観。木製の建具と板張りの外壁が山の中に佇む小さな山小屋を想起させ、もうただの古本屋さんではないことがすぐわかる。
オーナーのセンスがだだ溢れ。