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絵本のたのしみ、その1


絵本=子どもの本”という固定概念は余りに勿体ないと思うようになったのには、素敵な絵本たちとの出逢いがあったからだ。大人のための絵本という分野が注目されネットにも沢山紹介されているが、私がいいなぁと思った絵本はそこには載らないような類らしい。

絵を見ながら文章を理解していく物、とするならば、”絵があるからこそより伝わる”という観点で選んだ絵本を紹介する。


マッチ箱日記

主人公は貧しいイタリアの少年。彼は字が書けなかったので日記代わりに、小さなマッチ箱の中に思い出の品物を入れることにしました。オリーブの種や、折れた歯。それを見ればその時自分がどんな生活をしていたかが全部思い出されます。イタリア移民への差別や貧困がテーマですが、彼は晩年結構な資産家となり、孫娘にも字がわかるようになるまでマッチ箱日記のようなものを作ってはどうかと勧めます。ラストページはキャンディの空き缶にブロックやヘアピンを入れている孫娘の絵ですが、おじいちゃんを思う気持ちや表情がとても可愛くて愛おしい。


全体的に絵が緻密でリアルなんですが何より、マッチ箱の絵がとても素敵なんです。私は可愛い箱とか包装紙が大好きですが、もし雑貨屋さんにこんなマッチ箱のセットを売ってたら絶対欲しい、と思ってしまったほどとにかくマッチ箱にくすぐられます。



木を植えた男

名誉も報酬ももとめない、まことにおくゆかしいその行いは、いつか必ず、見るもたしかなあかしを、地上にしるし、のちの世の人びとにあまねく恵みをほどこすもの。(まえがきより)

土地はやせて荒れ果て、廃墟が点在している山に、一人木を植え続けた老人のお話。どんぐりを1つ1つ植えそれがやがて森になったのですから、相当な年月を費やしているはず。まるでそこが最初からそのように素晴らしい森であったかのように、放っておいても勝手に木が育ったかのように、その景色が当たり前のように、緑を求めてやって来ては喜んでいる人々。しかし老人はそんな事とは関係なく一人黙々と木を植え育てています。自分の日々の活動が人々に幸福を与え、その土地自体にも有益だという事を分かっているのでしょう。


他人のために何かをする時、心のどこかには”褒められたい”とか”感謝されたい”という思いを否定できません。陰で良い行いをするのはとても難しい事だと思うのです。この老人のように何の見返りも求めず淡々と日々人のために働く生き方、真似しようにもなかなか出来る事ではありません。(私の場合職場で人知れずトイレ掃除をするぐらいがせいぜいです。)絵のタッチが、絵なんですけどなんというか動きが感じられます。また老人の孤独や気概も。絵本ですが文章量は多いので、絵が読む人の助けになる事は間違いないですね。



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