本を読む人の助けになる仕掛けのあれこれ
本を読む際に困ることって何ですか?
映画やドラマのように目で見て理解するのとは違い、文章で書かれている情報を自分の頭の中にイメージしないといけない。目から受け取る情報が人間の五感では一番多い。人物でも景色でも、見ればある程度の情報は受け取ることができる。
だが、文章で書かれていることを情報源として具体的にイメージしていくことは難しい場合もある。
景色/地図
写真や地図が目の前に置かれたら、ふむふむ、となるが文章で説明されたら、分かる?分からない?知らない町で道を尋ねたとしよう。ここをまっすぐ行ったら○○が見えてくるので、そこを左手に見ながら道なりに進んで、△△の先を右に曲がって云々‥パッと図を描いてくれたらすぐわかるのにねぇ。
本を読むのは、そういう作業の繰り返しだ。
そこがそんなには重要じゃない場合はいい。しかし、地理的なことが物語に大きく影響するような作品ならやっぱり一生懸命理解しようとするはずだ。
道尾秀介/いけない(2019年)
架空の街が舞台。地理的なことが頭に入っていないと理解が難しいミステリー。
そこで‥
本を開くとまず、この地図。なるほど、この街の何となくの感じをまずインプット。そこから本文へ。地名が出てくる度に最初の地図のページへ戻って、なるほど、ここかの繰り返し。これは理解の助けになる。いやぁ、助かる。
ちなみにこの作品には、他にもメモや写真のページが、各章ごとに出てきて、それが謎解きのカギとなっている、仕組み。これがまた面白い。
登場人物
次に登場人物。文庫本では登場人物の名前と簡単な人物紹介が載った栞が挟まっている場合がある。あれはとても便利。
パトリシア・コーンウェル/標的(上下)(2015年)
しかし、新刊本ではそのようなサービスを目にすることはあまり無い。登場人物の多い小説では人物のメモが必至となる。でもそれじゃ賄い切れない場合も。
村上龍/半島を出よ(上下)(2005年)
九州に外国のテロリストが上陸し制圧。徐々に日本全体を揺るがす。
とにかく登場人物が半端なく多い。本作は上下2巻編成だが、各巻頭に登場人物の一覧が載っている。そのページ数が上巻6ページ、下巻4ページの大容量。すげぇ人数。
正直、この作品に関しては登場人物をいちいち確認しながら読むことは難しかった。なぜなら、一覧からその人物を探すのがなかなか大変だから。でも、その一覧を読む、というか眺めるだけでも結構楽しめる。よくもまぁこれだけ登場人物の名前を考えたもんだと感心。
人物関係図
登場人物の名前と同時に覚えておいたほうがいいのが人間関係だ。誰と誰がどういう関係性なのか、仲が良いのか悪いのか、身内なのか、会社の同僚なのか‥。
宮部みゆき/この世の春(上下)(2017年)
表紙の裏にこちらの相関図。イラスト入りなので、人物像までイメージできて、とても有難い。もしかしてアニメ化の予定でもあるの?と思ったくらいの出来栄え。
深緑野分/戦場のコックたち(2015年)
この作品、本の間に新刊案内が挟まっていたがそこに登場人物のイラストが。本作には全く登場しないイラストだが、なかなかの力の入れ様。
本作は外国のお話なので、名前と性格がイラストがあると物凄くイメージしやすい。やっぱり目で見ると理解度が上がる気がする。
もちろん、こんな仕掛け無くても、どの作品も読み応えのある秀作だ。
そこに少しの企画性と心遣い。それがこの上なく楽しくて嬉しいのだ。
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