幸せのフォトンを飛ばそう〜『小鳥とリムジン』読者感想文
ドラマを観ていて料理を作るシーンや食べるシーンが出てくると何故か幸せな気持ちになる。今観ているドラマ『天狗の台所season2』、田舎の古民家で手間暇かけて作るお料理の、その美味しそうなことったら。観ているだけで、まるで自分までが丁寧な暮らしぶりをしている気になってしまう。
次女がこんなことを言う。
「料理を作るシーンや食べるシーンが出てくるドラマとか小説が多いのは、結局人間って食べることで一番幸せを感じやすいってことだよね。そう思うと人間って可愛い」
確かに。
食べることに関するテレビ番組でも本でも、どこそこのラーメン屋さんが美味しいよなんていう職場での雑談にさえ、幸せな気持ちにさせられてしまっているのだから。
そして私は匂いに敏感だ。良い匂いはもちろん、家の中でも外でも“いつもと違う匂い”がすると気になって仕方がない。
小川糸さんの新刊を買いに行った際、たまたま通りかかったドラッグストアでミッフィーがデザインされた“良い匂いのもの(ミスト)”を見つけ即購入してしまった。家に帰って買ってきた本を開くといきなり“匂い”について書かれていて、もうそれだけでこの本は私の好みに合うと直感した。
小鳥とリムジン/小川糸
小鳥って人の名前だったんだ。
リムジンも名前だったんだ。そうなるとこの物語はタイトルからして2人の物語なのだろう。
この世には自分ではどうにもならないことがある。例えば親。親は選べない。その意味では小鳥もリムジンもハズレ組だ。
『黄色い家』(川上未映子)を読んだ時にも感じた、誰からも何も教えてもらえないことの不幸がここにもあった。でもむしろ、小鳥にとってはそれも良かった気もする。何も知らずに生きてきた小鳥はスポンジみたいにいろんなこと、それは具体的な家事だったり誰かを思う気持ちだったり自由だったり、を吸収して、どんどん“普通の”女の子になっていく。
コジマさんは小鳥に仕事と居場所をくれた。小鳥がコジマさんのために焚くアロマオイルの香りが読んでいる私の気持ちまで落ち着かせてくれる気がした。香りそのものを知らなくても、きっとそれは良い香りで、意志とは関係なく私の中に入ってくる。コジマさんへの思いやりが何故香りだったかというと、
と気づいたからだ。そうか、と私も気づいた。もし私が病気になって意識もなくなってただ呼吸をしているだけになっても、最期まで良い香りを吸わせて欲しいって思った。だからこのことは娘たちにお願いしておこう。そう思ったらなんだか嬉しくなった。
リムジンは小鳥に、美味しい物と、愛し合う幸せをくれた。リムジンは少しスピリチュアルなとこがあるけど、すごく素敵なことを言ってた。
そうか、と私も気づいた。幸せのフォトンを撒き散らす人になりたいって思った。遠く離れてても幸せのフォトンは光の速さで皆に届くから。
リムジンの作るお料理はどれも手が込んでいて、美味しそうで、良い匂いがする。
アロマオイルとお料理。
香り(匂い)がもたらす幸せが私を包む。紙の本だけど、実際には匂いなんてしないんだけど、想像と経験値のおかげで読みながら私は幸せだった。
生まれ育つ環境は子どもの時には選べない。大人になるというのは、好きな時に好きな場所へ自分の意志で行けるようになることなのかも知れない。
小鳥の場合は高校生の時だったけど、ある程度自分の意志で行動出来るようになって、自分で選択して自分で行動を起こしたからこそ得られた生活。初めて「道は拓ける」ことを実感したと思う。
オジバや小百合ちゃんみたいな大人がいて、その人の生き様そのものが大切な教えで、それを素敵だなとかカッコ良いなって思える幸せ。
なんて言って頭をなでてくれる人がそばにいる幸せ。
まるでこの本が幸せのフォトンを撒き散らしてるみたい。
それに私の母が言ってたこと、
人生には良いことと悪いこと、同じだけ起きるよ、って。
人生がプラマイ0で終わるとしたら、小鳥の人生はこの先良いことだらけなんじゃないかな。
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この記事はこちらの企画に参加しています。
かなこさんからはいつも幸せのフォトンが飛んできます。
素敵な企画とサポートをありがとうございました。きっと今、私からも幸せのフォトンが出てるはず、です。