(掌編小説)たよりになる猫
「私、これ以上は無理です。無理ですよ!」
私は職場の給湯室で叫んだ。上司のMはなだめるように何かを言い続けていたが、私は彼の顔も見ずに給湯室を走って出ると、会社を早退した。
乗客のまばらな電車の中で、我慢しても流れてくる涙をハンカチで押さえながら、私は会社を辞めようかと考えていた。私は小さな印刷会社のデザイナー。32歳、女。もともとデザインのPC作業の他に、ちょっとした印刷ぐらいはやっていたが、それに加えて製本の仕事もやるように言われたのだ。デザインの部署のチーフとしての仕