【読切小説】君の微笑みは、春風に乗って【8667文字】
冬の風が頬を刺すように冷たい。
空はどんよりと曇っていて、学食の窓にも露がついている。
外の景色はぼやけ、灰色の世界に沈んでいた。
だが、俺は浮足立っていた。
恋人である紗希に、早く結果を伝えたかったからだ。
紗希は学食の片隅で、湯気の立つ紙コップをそっと握りしめていた。
「紗希」
声をかけると、ふわっと視線をこちらに泳がせ、彼女は微笑んだ。
「悠斗。どうだった?」
今日は公務員試験の合格発表の日だった。
「受かった!受かったよ!」
持っていた合格発表の封筒を紗希に見せよう