覆いの中の社会/中井久夫「精神科治療の覚書」より
中井久夫の著書に、「精神科治療の覚書」というものがある。その冒頭に、「精神病院とダムの話」という項があり、これがとても興味深い。簡潔に言うと、精神科医療(病院)と地域社会との共生について投げかけたものである。精神科医療において、今なお大きな課題とは社会的入院患者の問題である。社会的入院とは退院可能な状態であるにも関わらず、本人の受け入れ先や保護者がいないために長期的入院をせざるを得ない状態のことをいう。これは国際的にみても日本における精神科医療の悪しき特色であるといわれて久し