中小企業だから取り組むSDGsとESG経営
こんにちは、「笑顔工学」の専門家、木村光範です。
笑顔工学って何??という方は、ぜひ自己紹介をご覧ください!
近年、SDGsであるとか、ESG経営という言葉を耳にすることが多くなってきました。そんな中、「うちは零細企業だから関係無い」と考えている方も多いかと思います。
「持続可能な社会を目指す」ということが世界的な動きになってきている今、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)は、単なる理想論ではなく、企業の経営戦略そのものに深く取り入れられるようになってきていて、これは中小・零細企業でも例外ではありません。
そして、SDGsと親和性の高い、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を重視するESG経営も着実に浸透してきて、中小企業としても考えていく必要がある状況にあると思います。
私が研究している、「千年企業」と呼ばれるような永続する仕組みを持つ企業では、SDGsやESG経営を大切にする傾向が見られます。なぜなら、長期的視点で社会に貢献し続けることが、結果として自社の存続と信頼獲得にも直結するからです。
本記事では、SDGs、ESG経営の考え方を交えながら、中小企業がどのように具体的な成果を生み出しているのかを事例とともに深掘りしてみましょう。
SDGsとは何か?
SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連が2015年に採択した17の目標からなる持続可能な開発目標です。以下がその17の目標となります。
貧困をなくそう
飢餓をゼロに
すべての人に健康と福祉を
質の高い教育をみんなに
ジェンダー平等を実現しよう
安全な水とトイレを世界中に
エネルギーをみんなに そしてクリーンに
働きがいも 経済成長も
産業と技術革新の基盤をつくろう
人や国の不平等をなくそう
住み続けられるまちづくりを
つくる責任 つかう責任
気候変動に具体的な対策を
海の豊かさを守ろう
陸の豊かさも守ろう
平和と公正をすべての人に
パートナーシップで目標を達成しよう
これらは全世界が共有する「普遍的課題」であり、どの企業も自社の事業領域や活動地域に関連する目標を選び、具体的な取り組みを行うことが望まれます。
169のターゲット
SDGsは17の大きな目標の中に、それぞれに設定された合計169個のターゲットによってより具体的な行動指針が示されています。たとえば、「目標12(つくる責任 つかう責任)」では、「2030年までに世界全体の食料の廃棄を半減させる」といった数値目標や、「目標5(ジェンダー平等)」では「あらゆるレベルで女性のリーダーシップを推進する」など、細分化されたターゲットが存在します。
これらのターゲットを明確に意識して取り組むことで、「自社がどの目標をどう達成するのか」というプランが具体化しやすくなり、さらに成果を測定・評価しやすくなるわけです。
ESG経営とは?
ESG(環境:Environment, 社会:Social, ガバナンス:Governance)とは、企業が長期的に持続可能な成長を実現するために、単なる財務指標だけでなく、環境負荷の低減(E)、社会課題への対応(S)、経営の透明性やコンプライアンス(G)を重視しようという考え方です。
E(環境): CO2排出削減や再生可能エネルギーの活用、省エネ対策を行うことで、将来の規制リスクを回避しながらブランド価値を高めます。
S(社会): 従業員の働きやすさや人権尊重、地域との共生などを重視することで、社員のモチベーションや企業の信用力をアップします。
G(ガバナンス): 経営陣の意思決定プロセスを透明化し、リスク管理を徹底することで、ステークホルダーの信頼を獲得できます。
SDGsの17の目標は、このESGの3要素と非常に密接に関連しています。たとえば「目標13(気候変動に具体的な対策を)」はEの分野に直結し、「目標5(ジェンダー平等)」や「目標8(働きがいも 経済成長も)」はSとの相性が良いなど、互いにリンクしながら企業の持続可能性を高める方向へ導いてくれます。
なぜ中小企業にとってSDGs・ESG経営が重要なのか?
大規模な投資や広範なリソースが必要となると考えられがちな SDGs や ESG経営は、大企業が取り組むべきと考えられがちです。しかし、実際には中小企業だからこそ意義が大きいと言えます。
1. 地域課題の解決とブランド強化
大企業ほど大きな資本はなくても、中小企業は地域社会に密着しているという強みがあります。地域住民や自治体の課題と自社の活動をリンクさせることで、社会的な信用と支持を得やすくなり、新規顧客獲得や優秀な人材確保にもつながります。
2. グローバルな潮流への合流
SDGsはすべての国や地域が賛同している大きな流れです。ここに中小企業が沿うことで、今後拡大する商機を捉えられる機会が増えていき、国際的なビジネスパートナーとつながる可能性も出てきます。
3. 投資や取引の拡大
「ESG経営に取り組んでいる企業だから安心」と評価されることで、環境負荷削減や社会貢献、透明性の高いガバナンスといった点で長期的な安定成長を実現すると考えられ、資金調達や大手企業との取引で有利になることが期待できます。大企業や金融機関、投資家は、短期の利益だけでなく、リスク回避と持続的な成長を重視するため、ESG情報やSDGs対応を重視する傾向を強めています。
中小企業でSDGsに取り組んだ事例
実際に私が目にしたSDGsの取り組み事例をご紹介します。
いずれの企業も、SDGsを、単なるコストではなく、戦略的に活用していく姿勢で取り組んだことで成果を得ています。
■ 目標5(ジェンダー平等)
製造業の事例
長年続いてきた男性中心の社内文化を改善しようと、以下のような取り組みを進めました。
女性リーダーを育成するプログラムを導入
在宅勤務(リモートワーク)制度や短時間勤務の整備
社員同士が協力しあう風土を醸成するための勉強会や研修を実施
成果
新たな発想が製品開発や営業戦略に取り入れられ、今まで対応できなかった顧客ニーズにもアプローチ可能に。
離職率が低下し、企業イメージや顧客からの評価が向上。
関連するターゲットの例
ターゲット5.5: あらゆるレベルで女性のリーダーシップと意思決定への参画を確保する。
ターゲット5.c: ジェンダー平等を推進するための政策や法整備、行動計画を強化する。
■ 目標8(働きがいも 経済成長も)
卸売業の事例
社員の働きがいと経済成長を両立させるために次のような施策を実施しました。
AIや自動化ツールの導入によりルーティンワークを削減
社内公募制度を導入し、部門移動やプロジェクト参加を自由化
社員が新規事業アイデアを出す「アイデアソン」や勉強会を定期開催
成果
社員のスキルアップを促しながら、実際に新規サービスを開発して売上増を達成。
「成長実感が得られる会社」として評判が高まり、採用が増えた。
関連するターゲットの例
ターゲット8.2: 高付加価値セクターや知識集約型産業への生産性向上を促進する。
ターゲット8.5: 2030年までにすべての人(特に若年層と障害者)が生産的な雇用にアクセスできるようにする。
■ 目標12(つくる責任 つかう責任)
食品加工業の事例
廃棄物削減や環境配慮を目指し、以下の施策を展開。
食品ロスを減らすために、製造工程で出る野菜くずを飼料に再利用するパートナーと連携
パッケージをリサイクル素材に切り替えて、消費者に「環境に配慮する企業」というメッセージを発信
規格外野菜を積極仕入れして加工品に転用することで、フードロス削減とコスト削減を両立
成果
食品ロス率が約20%低減し、ブランド力の向上やエコ志向の流通業者との取引拡大を実現。
社内のコスト意識も高まり、他の業務プロセス改善にも波及。
関連するターゲットの例
ターゲット12.3: 2030年までに世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させ、食品ロスを削減する。
ターゲット12.5: 2030年までに廃棄物の発生を予防、削減、再利用、再循環を通じて大幅に削減する。
取り組みを成功させるポイント
トップのコミットメント
中小企業では、経営者の意思決定や方針が組織全体に大きな影響を与えます。社長や経営陣が「SDGsとESG経営に本気で取り組む」という強い意思を示すことで、社員や外部の関係者も「この会社は本気なんだ」と理解し、行動しやすくなるのです。下記の具体策が挙げられます。
方針の明文化: SDGsやESG経営に関する目標や行動指針を社内のドキュメントやWebサイトにきちんとまとめて発信する。
コミュニケーションの場づくり: 朝礼や定期ミーティングで経営者自らが意義を語り、社員からの質問や意見を受け付ける。
資源配分への配慮: 環境改善や社会貢献に必要な予算や人員を確保する。トップが積極的に投資や配置換えを行うことで「優先度が高い」というメッセージが伝わる。
自社の現状を把握する
まずは、自社の強みや課題、事業活動が社会や環境にどのような影響を与えているかを整理しましょう。これは、SDGsやESGのどの目標・ターゲットに取り組むべきかを見極めるための基盤になります。
事業活動のマッピング: 自社の主な活動(製品・サービスの生産、販売、流通など)をリスト化し、環境や社会への影響を可視化。
製造業であればCO2排出量や廃棄物の量、卸売業であればサプライチェーンの透明性など。社内アンケートを実施: 従業員の意識や意見を収集し、現場目線での課題や改善案を把握。特に「働きやすさ」や「社会貢献への関心」に関する意見を集めることが有益。
自社の強みを確認: 自社が得意とする分野(地域密着型の事業、技術力、顧客対応など)を明確にし、それをSDGsのどの目標に結びつけられるかを考える。
社員の参画と小さな成功体験
「会社として取り組む」と言っても、実際に行動するのは現場の社員です。社員が主体的に関わり、実感を伴う成功体験を得られれば、継続的なモチベーションにつながります。下記の施策が効果的でしょう。
アイデア募集: 社員から気軽に提案を集める仕組み(オンライン提案箱など)を用意し、良いアイデアは社内報やミーティングで紹介する。
小さなプロジェクトから着手: たとえば「社内の紙使用量を1ヶ月で10%削減しよう」など、すぐにできる達成可能な小さな目標を設定し、達成したら社内で称賛し合う。
成功事例の共有: どの部署でどんな改善をしたら効果があったのかを社内SNSや掲示板で紹介し、他の部署にも広げる。
具体的な目標設定と測定
「環境にやさしくしたい」「女性活躍を推進したい」などの意欲だけでは、成果が分かりにくく、進捗管理もしにくいものです。定量的な目標を持つことで、行動計画や効果測定がはっきりし、社内外へのアピールにも説得力が増します。このため下記のようなポイントをおさえると良いでしょう。
SDGsの169のターゲットを活用: たとえば「ターゲット12.3(2030年までに食品廃棄を半減)」に対応する形で「自社の食品ロスを年内に10%削減」など、社内向けの数値目標を設定。
KPI(重要業績評価指標)の設定: CO2排出量・廃棄物量・女性管理職比率など、具体的な指標を選び、毎月・毎期の変化を集計する。
成果の共有方法: 達成状況を社内報やホームページで発信し、社員やステークホルダーに「どれだけ進んでいるか」を見せる。
社外との連携
企業が単独でできることには限界があります。取引先や地域社会、NPO、自治体などと手を結ぶことで、知見やリソースを補い合い、より大きなインパクトを生むことができます。
サプライチェーン全体の取り組み: 仕入先や協力会社にも、環境・社会への配慮を広げるように呼びかけ、共同でプロジェクトを立ち上げる。
地域イベントや啓発活動: 地元の学校や自治体、NPOとの共催で、環境やジェンダー平等に関するワークショップやイベントを開催。企業イメージの向上にもつながる。
定期的な意見交換会: 取引先や地元関係者と定期的に情報を共有し、困りごとや課題解決のヒントを一緒に探る。相手側のメリットも明確にすると協力を得やすい。
まとめ 〜中小企業にこそ広がる無限の可能性〜
SDGsやESG経営は「大企業のもの」と思われがちですが、実は地元や社員との距離が近い中小企業だからこそ、素早く柔軟に施策を打ち出しやすい強みがあります。世界全体が合意するSDGsの17目標・169ターゲットをうまく活用し、自社のビジネスモデルや地域課題と結びつけることで、コスト削減・売上増・人材確保などの経営メリットを得ながら社会貢献を実現できます。
しかも、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視している企業だと知れ渡れば、投資家や取引先からの評価が高まり、「一緒にビジネスをしたい」「融資・出資したい」という声がかかるかもしれません。こうした長期視点に基づく取り組みが、企業をしなやかに成長させるうえで重要であり、「千年企業」すなわち永続する仕組みを有する企業となる礎となっていきます。
SDGsを軸にした経営とESG経営の視点を同時に取り入れ、さらに人間性を重視する社内文化を育むことで、多くの関係者が幸せを感じ、笑顔になり、共に発展していける未来が開けていくのではないでしょうか。
もし、次の1歩の踏み出し方がわからなければ、専門機関や、商工会議所や商工会といった団体に相談してみるのも良いかもしれません。周りの取り組んでいる企業の事例も参考にしながら、ぜひ、小さな一歩からでも踏み出してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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