読書感想「アオハル・ポイント」
「俺、ポイントにならない何かを信じてる」(本文292頁より)
まずは本編について。
あることをきっかけに、その人の価値を示す点数=ポイントが見えるようになった主人公・青木直人は、クラスメイトのポイントを細かくノートにまとめることを密かな日課にしていた。
青木は、ポイントの高いクラスの女子・成瀬に恋心を抱いていた。それを、クラスの中では低いポイントを持つ冴えない女子・春日にノートを見られたことから露見してしまう。
春日も、実はクラスの中では中心的な存在で、もちろんポイントの高い男子・曽山が好きだった。
お互いに自分とは釣り合いのない人を好きになった二人は、協力して自分たちのポイントを上げて告白する計画を立てる。
しかし、その計画はのちに波乱を起こし、青木の過去を掘り起こしてしまうことになる。そして――。
人には数値化できない価値を好む心理があります。言い表せないものに対する良さに心を震わせることができるのは、ポイントの高い低いという簡単な優劣だけで決めつけることはできません。
人の価値を単なる数値、ポイントとしてみるだけでは決してみえないものがあって、それに気付いた先に残るのは、自分にしか価値の分からない大切な物ということになります。
その存在を決して忘れてはならないと、読みながら考え込んでいました。
たぶん、当たり前のことなんだと思います。その当たり前のことに気付く難しさを、小説として丁寧に描いていました。むず痒くなってしまいそうになるシーンや、読んでいるこちら側も怒りを覚えてしまうシーンもすべて含めて、読者がその「当たり前にある価値」を見つけるきっかけを、この作品は与えてくれているように感じました。
佐野徹夜さんの作品は、デビュー作であり映画化も決定した「君は月夜に光り輝く」から今作まですべて読んでいます。
すべてに共通して言えるのは、佐野さんは本当に素直な方で、誇張なしで、小説の可能性を信じているように思います。毎回、あとがきを読む際に考えさせられています。
きっとそれこそが、佐野さんにとっての「当たり前にある価値」のような気がします。
自分も、自分自身の価値を信じたいです。
それでは、またいつか。