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【映画】新時代のマイフェアレディ「哀れなるものたち」感想(ネタバレあり)

 この映画、話題になっているわりに、感想を読んでも一向にどんな話か想像できない感じが逆に気になっていた。
 あらすじだけ聞くとギャグかと思うけれど、予告編の映像は美しく、衣装も素晴らしい。が、観てみないと、どんな映画か想像できない感じだ。それが、逆に気になっていた。

 先日、やっと観に行けたので感想を書いておきたい。ちょっと長めの2時間 21分、たっぷりと独特な世界にひたることができた。没入感がはんぱない。
 今年度ナンバーワンな予感!~どころか、おそらく10年後にも語り継がれるような、数年に一度の傑作だと思う。ヨルゴス・ランティモス監督の作品。

「哀れなるものたち」ポスター

 なんといっても、独特な世界がすばらしい。豪華客船の様子も諸国の街並みも作ったという大がかりなセットもステキだし、アンティックな雰囲気もありつつ近未来も感じさせる独特な衣装も素晴らしい。どこかで見たことがあるような世界でも、特定の時代だとすると時代に合わないものがあるような、お伽噺のような世界を作りたかった、とのこと。まさに、そんな世界。
 
 基本的にはマッドサイエンティストな話で、どぎついエログロもある。けれど、直接的ではありながら、シンプル。まるで「シンデレラの姉はガラスの靴を履くために足を切りました」というような、お伽噺のようなザックリさがある。過激ではあるけれど、さっくりしている。エログロの湿度が高くない。

 天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手術によって、自殺をしたために瀕死の状態だった成人女性の体に、その女性が妊娠していた胎児の脳を移植されて蘇生してから急速に成長していくベラ(エマ・ストーン)の話だ。
 ベラが、最初は性的な興味を強くもって、色々な世界を冒険していくが、次に、色々なことを考え始めて豪華客船で出会った老婦人にすすめられて読書をしたり、医者を目指して勉強していくというのが、「現代のマイフェアレディ」という感じがした。男性によって何かをもたらされるのではなく、自分で様々な冒険をすることで世界を知り、自分で自分がしたいことを手に入れていく話。「結婚はするけれど結婚する前に冒険したい」という展開も面白い。
 ベラが冒険していた時に娼婦をしていたという話を、もといた家に戻ってから婚約者マックス(ラミー・ユセフ)に話した時のマックスのセリフ、「君とそんな時間を過ごした男性たちには嫉妬する。けれど、君の体は君のモノなんだから、どう使おうと君の自由だよ」というのもしびれる。「君の体は君のもの」!それに対して、ベラとなって生き返る前、自殺しようとした女性と結婚していたと主張するアルフィー・ブレシントン将軍(クリストファー・アボット)が彼女にしようとしていた手術の恐ろしさ。その対比がすごい。
 が、かといって、足を打ち抜いた弾丸の処理さえすればよかった「将軍」に対してヤギの脳みそを移植してしまうというのは…ベラもマックスもマッドサイエンティストとなってしまっている怖さを感じる。
 が、最後にみんなで和気あいあいと過ごすところには、ベラが娼館で肉体関係をもっていた女性の姿もあり、おそらくマックスがその関係を知った上で一緒にいることを認めてくれているんだろうな、という、生きたいように生きようとするベラの強さが感じられた。が、やはりヤギ将軍は、みていてもつらい。これをよしとするベラたちも含めての表題「哀れなるものたち」なのか?

 色々と考えさせられる映画。そして、また映画館で観たくなる映画だった。あの素晴らしいセットの中で、撮影というひとときを過ごすことができたキャスト&スタッフの方々が羨ましい。とはいえ、観客として2時間強その世界にひたれるのも、また幸せ。まさに大画面で観るのがふさわしい、映画である必然性のある映画だった。
 原作もあるようなので、ぜひ読んでみたい。

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目隠しもあって一人でも落ち着けるカウンター席☆~映画前の時間調整にイイ場所を見つけた♪

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