第8回 「マネジメントというキャリア選択」
みなさん、こんにちは。
キャリアコンサルタントの糸井です。
現職に転職して本稿執筆時点で9年目を迎え、また、マネジメント(管理職)という役割を担うことになった2018年から6年目を迎えております。
「語るに、たったの6年かよ。」
諸先輩方から笑われそうですが、課長→副部長(当社ではサブ部長的な役割)と移り変わる中で、本当に色々と学びが多いものだな~と感じています。
特に、自部門のメンバーのみなさんとの関わりというのは非常に大切であることは日々痛感しています。これは担当者レベルで自分の仕事を行っていくことをメインミッションとしていた日々から大きく脱却し、チーム全体を目標に向かって動かしていかなければならず、その責任を負っていく、心も折っていく・・・ということになっています。
非常に雑な言い方を敢えてしますと「自分のことより他者(メンバー)のことを考える」必要があり、そのための時間の割合がとても多くなりました。本コラムをご覧いただいている特にマネジメントを担当されているみなさまには、共感いただけることを強く願っております・・・
「で、結局あなたは、マネジメントを担うのが嫌なワケ?」
まあ・・・上記のような言い方だと、そう言われますよね。
結論から申しますと、
「やりたくはない、けれどもやりたい。」
です。
ブラウザを閉じないでください・・・何を言っているかは後程。
昨今、マネジメント(管理職)になりたくないという若い方が増えていることや、私も企業を渡り歩く中で、
マネジメントの方に「めんどくせ~」「やりたくね~」「なんで自分が・・・」という声を聞いたことも多々あります。
うーん・・・。
以前のコラムにて述べてまいりましたが、職業キャリアの選択は自分自身で行うものですので、マネジメントを担うか否か、というのは自分で決めることになります。ここを勘違いされる方が多いように思っております。
職業キャリアを考えていくに際して、「自己実現」と「組織からの期待」の双方がバランスよく満たされた状態にならなければなりません。
専門的な言い方をしますと個人と企業の「心理的契約」が交わされている状態を言います。
つまり、個人が実現したいことが、組織からの期待と合っていないならば辞めるべきです。が、個人の側から見ると、実現したいことの明確な根拠がない限り、フワっとしたい状態で「あれやりたい、これやりたい」を言っている(大方、そういう方は外的キャリア要因に寄ったものの見方をされているケースが多いのですが)と、組織からは見放されることになります。
以上を踏まえて話を戻しますと、「マネジメントを担うか否かは自分が選択する」の意味を少しお分かりいただけるのではないでしょうか。
換言すれば、会社があなたをマネジメントに任命すること(=組織の期待、外的キャリア要因)に対して、それを受けるかどうか(=組織の期待に対して自己実現の要素が含まれているかどうか、内的キャリア要因)を選択する必要があるということとなります。
従いまして、それ自体があなたの職業キャリアにおける自己実現と乖離しているならば、会社側と話し合って辞退を申し入れるか、転職するなどの方法をとる方が得策です。
さて、恐縮ながらここで冒頭の私の話を・・・
マネジメントを「やりたくはない、けれどもやりたい。」の行間について、以下の通りです。
「個々のメンバーの心情やキャリア方向性等々に関し、緻密に、繊細に、時にはダイナミックに接していかねばならず、それが個によってポジティブだったり(信頼してくれたり、仕事のやりがいを見出していただける)、ネガティブだったり(勝手な事を言ったり、やったり、挙句に去るなど)を目の当たりにしながら、大きい責任も負って心が傷つくことがあっても、孤独に闘っていかなければならない。という感情論的、時間的、労力的意味合いにおいて、マネジメントをやりたくはない。けれどもキャリアコンサルタントして成長していく過程において、マネジメントの立場を経験することは、将来マネジメントになる人への支援に向けて大切な要素であること、また異なる立場や視点で他者のキャリアに触れることは新たな学びのために非常に重要なことである。また、会社の期待が、キャリアコンサルタントとしての意味合いのみならず、難関であっても自身が仕事としてチャレンジしたいこととマッチングがとれている状況であり(そう自覚しており)、それもまたマネジメントとしての立ち位置だからこそ実現できるだろうという見通しや期待が立っているという意味において、やりたい。」
という事となります。私の将来は約束されたものでもないですし、この行間自体も綿密な計画の元に具体的なゴールを描いているとは言えないとも思います。更には、絶対実現できるとも限りません。
ただ、アルフレッド・アドラーが、「人生とは連続する刹那であり、いま、この瞬間を丁寧に生きる」と述べていることや、ジョン・クルンボルツのプランドハプンスタンス理論(よろしければ、第4回「右に左に、そして真っ直ぐに」もご覧ください)を鑑みますと、自分をよく理解した上で自己実現したいことを描き、山あり谷ありの日々を一歩ずつ超えながら、そこを目指していくために懸命に生きることが大切だと思います。
これは、きれいごとではなく、極めて複雑性の高い現代社会であるが故に、重要なポイントではないでしょうか。
マネジメントを担うか担わないかは、あなたが今の仕事を選択するのかしないのかと同じ職業キャリア選択の一環なのです。ですので、それを受け入れるかどうかは、あなたの自己実現の一部または全部として納得できるかどうかを自らに十分問うていく必要があるということだと私は考えております。