穂高養生園 森のリトリート2024
【穂高養生園 森で暮らす家】
子どもに戻る時間
誰かが起きる音、
おはようという声、
廊下を歩く音
お布団のぬくぬくの中で
うらうらしていると
そんな音で目が覚めて1日が始まる
Wi-Fiも電波もない毎日
湯たんぽのお湯をタライに入れて
顔をすすぐ
こんな顔してたっけと、
日に日に鏡の中の自分に出会う
コンディション確認をして
何をするかを、決める
ゆっくりと沈黙の時間と朝の匂い
木と人カフェで、ハーブティーとスコーン
ゆったり日が指して
世界はだんだんクリアになっていく
一人でノートに向かう時間
本を読む人
ハンモックに揺られる人
一緒に何かに取り組んでいるわけじゃないけど
一緒にいる時間
川で、石積み
ヒョイって出来たり、バランスくずして落ちたり、何度も繰り返す
手の感覚、石の手触り、ちょうどいいところ
一人でそうやって、あそぶ
出来たら「見てみて〜」って誇らしげにみんなに見せる
カンカンと5回板を打つ音がご飯の合図
ていねいに作られたご飯は、身体も心も満たしていく
口の中の食感 味、音、目をつぶって味わう
お天気雨で遠くの雨はゆっくりで
手前の雨は急いで降る
木々に見守られながらモグモグシャクシャク
ゴックン
自分の食べたモノを洗って拭くまでがワンセットの流れ 気持ちいい繰り返し
森のふかふかの土
ずんずんと深く進む
キノコや苔がツヤツヤして
川は勢いを増す雨あがり
ハーブの香りのサウナ
汗ダラダラで
川を登って滝に打たれる
冷たさにプハっと目を開けると
弾く水が羽みたいに広がる
山からの水は甘くて冷たくて
シーンと背中が涼やか
煖炉のパチパチの音
寝転がって大型犬みたいだと笑われる
自由ってこんな感じ
話しても話さなくてもいい
内圧のポンプが上がった時に
口から言葉を出す
病んで辛かったこととか
辞めるにいたった理由とか
自分のここまでのこととか
わかってもらいたいというフェーズは
終わっていて
もう飽きたんだなぁとわかる
箱根山学校で、自分のことを話すと
「慣れてるの?」とか「ちゃんと話せるんだね」とか言われて、自分の中では物語として話せるぐらいに熟成したものになっていて、
話す仕事を長くやってきた弊害もあって、自己完結してしまうのだなぁ、と思う
子どものこと
夫婦のこと
仕事のこと
やりたいことをやれていてうれしいという話
新しいことにチャレンジする話
モヤモヤすることなど
いろんなフェーズの話を聞いて
うらやましいなぁ、と思ったり
眺めたり、自分はどうだろうと思ったりして
なんとなく話すことも置くこともなく
ぼわぼわ
煖炉にくべられることなく
横に置かれてる乾いた薪を見る
記憶の蓋がいっぱい開いて
いろんな時代の自分に出会い直す
思考ではないところ
話すこと以外のところ
繋がってそこにいる感覚
スマホという外界に気を取られず
今ここに集中できる時間
外からの情報のない時間は
森をたくさん感じる時間だった
ゆらゆらハンモックに揺られて
あ〜きもちいいなぁ、と
目の端に紫陽花がいったりきたりするのを
車窓のように感じながら
その揺れに身を任せて空気に溶けていくように眠る
その場に自分たちがいたこと
目的のない時間
子どもに戻る時間
ああ、そうか
森の家とはそういうことか
家なんだなぁ
ただいま わたし