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masaru12
まるで「坂道を転げ落ちるように」老いる
「オグさんのお宅ですか」
見慣れぬ電話番号からの着信。
それはかれこれ5年くらい前に、ふいに事務所に相談にいらしたご近所の方からの電話だった。
もはやわたしを「オグ」と呼ぶほど(漢字で読めない)の間柄なのである。
弱弱しい声で先方はおっしゃる。
先日まで数日間入院していた。
体調が悪く動けない。
相談したい。
その日のうちにご訪問すると、しばらくお目にかからないうちに、ずいぶんとその方はお痩せになっていた。
スポーツクラブに行ったり、イヌの散歩をしていたり、毎日忙しくしていた方だったが、ぜんぶ手放していた。
それでもご自身で歩行もできてしまうわけで、介護認定は要支援1出るか出ないかという感じであった。
そうなんだよなあ。
要支援になる時点でもうだいぶしんどいのだってば。
「まるで坂道を転げ落ちるように」
なにもかもわからなくなってしまったとその方はおっしゃった。
特別の病気もけがもない。
まだ、年齢的には(介護業界的には)お若い。
でも、以前の覇気はぜんぜんない。
あっという間なのだ。
いつやって来るかわからないのだ。
亡くなった父もそうだった。ある時ガクンと悪くなって上がってこなかった。
こればかりは、未来予想がわからないことも多い。
実はその方は遺言の作成についていらした方だった。
でも途中で、まあ、いいかみたいになって、作成まで至らなかった。
今日、私に電話をしたことも忘れていた彼女は、もう遺言の作成も難しい。
思った以上に、時間はないのである。