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ぶつかり合うことの尊さ

フジテレビでお昼の時間帯に再放送している『フリーター、家を買う』を録画して見ている。2010年のドラマ。放送されていた時は見ていなくて、でもいつか見たいなぁと気になっていた作品。

主人公は、新卒で入った会社の社風に馴染めず3ヵ月で退社後、就職試験を受けるも落ち続け、バイトをするも少しでも人間関係でトラブルがあるとすぐに辞めてしまうような25歳の若者。武誠二。演じているのはニノ(二宮和也)。

ある日、お母さんがうつ病になり、少しでも時給のいいバイトという理由だけで工事現場のアルバイトを始める。最初は汚くてキツイだけだと思っていた工事の仕事だが、職場の人たちとの関わりの中で、また家族とも、ぶつかり合いながらも、少しずつ変わっていく。そんなお話。

お母さんのうつ病はご近所からの長年にわたる嫌がらせが原因だった。医者の家に嫁いだ姉も、息子のママ友たちとの関係や姑との関係は大変そう。息がつまりそう。でも「主婦にとってはその人間関係がすべてで、逃げ出すことはできない。戦場のようなもの」。

井川遥さん演じる姉は、思ったことをハッキリ言える強い女性。何かあるとすぐ誠二に電話をして、抱え込まずに吐き出せる。

竹中直人さん演じるお父さんも、クセ強め。「プライドが高く見栄っ張りで頑固」。とことん素直じゃない。不器用。お父さんと誠二は、口を開けば喧嘩。本当は伝えたいことがあるのに、うまく言えない。ふたりの関係は、誠二の職場の職長(演:大友良英さん)が中年の立場を代弁してくれることで、少しずつ歩み寄れていく。

主婦にとっての家族やご近所との人間関係の問題。中年男性の問題。いい大学とかいい会社とか一流とか二流とか上とか下とか世の中の価値観。10年前の作品だけれど、今も問題は変わらずあるというか、むしろ深刻化しているようにも思う。

武家が家庭崩壊しなかったのは、どんなに口げんかになってもそのときは嫌な思いをしても、言い合うこと、ぶつかることを諦めなかったことがまず大きいんじゃないかと思った。あとは、誠二も姉の亜矢子も、あったことを抱え込まずにすぐに誰かに話すことができる性格と、話を聞いてくれる人がいるという環境。大悦土木の人たち。ただ聞いてくれるだけじゃなくて、間違っていたらちゃんと言ってくれる人の存在。

精神科の先生とか、専門家の助けが役に立つことももちろんあると思うけれど、一番大きいのは、大悦土木のような人たちが近くにいること、話せること、話せる人がいること、そして、世間の価値観とは関係なく、自分たちがどうなったら、どういう状態になったら幸せなのか、どうなりたいのかを、家族でとことん話し合って、同じ方向を見ること。それが大事なんじゃないかなと、この作品を見て思った。大悦土木の人たちみたいな人に出会えることが難しい世の中になりつつあるなぁと感じつつ。

いい作品でした。原作は有川浩さん。

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