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「パストライブス ー再会ー」【映画感想文】
※ネタバレ有り感想文です。
フィルムマークスにも感想をしたためたのだけれど、
少し別角度から感想をあげてみたくなったので、こちらのnoteにも書きます。
この話は恋愛映画であるとともに、一人の女性のまっすぐな生きざまを描いた話だとも感じました。その視点からの感想を、つらつらと書いてみたいと思います。
主人公の女性・ノラは、幼い頃から人生の目標を立てて、異国の地でもなんとか踏ん張って自立して生きてきた。そんな彼女が、唯一残してきた心残りが、24年前、出身地韓国での煮え切れないひとりの少年との別れだった。
現在、ニューヨーク。大人となったノラは、ふとしたきっかけでそのとき別れきれなかった男性・ヘソンと再会する。既にパートナーを得てもいた彼女の人生に、彼はすでに必要ではなくなっていたけれども、その存在そのものは、幼いころと変わらず、いとしく大切で、特別に思えた。
交わす会話や絡む視線に、かつての親しさがよみがえる。見知ったニューヨークの景色が、美しく格別なものに見違えるように映えていく。日常が、まばゆく輝くひとときとなる。
けれど、それきりだ。
少なくとも今生は、それまでだ。
彼女は理解していた。
ノラは伴侶を得ていた。心底愛してもいた。愛されてもいる自覚もあった。そして異国でしっかりと生計を立て、今も目標に向かって歩んでいて、人生を自分の足で歩んでいる。そこへ、「特別だった人」が現れたとしても、その歩みを変える必要なんてありえようか。彼女は何ら、人生に不満を抱いていないのだから。
ただ24年前、懐かしい町の岐路に残されたままのくすぶっていた想いが彼女をわずかに惑わせた。その頃からまぎれもなく特別だった人に今の世が前世になったなら、と特別な縁を確かめ合ったものだから、ノラは嗚咽した。
別れを後悔したのではない、悲しみにくれたのでもない、ただ、小さなころから存在しつづけていた温かなものを今の人生ではっきりと手放した、その事実に嗚咽したのだろう、と、思えた。かけがえのない、イニョン=縁だったから。
この先もノラは強くたくましく生きて、きっとその歩みは止まらない。
その傍には心優しい夫が寄り添っているだろう。
イニョンのあった彼とは、もう二度とこの世では会うこともないんだろう。
けれどそれは別れではなく、いつかの輪廻の果てには、また邂逅するかもしれない。だれにそれを否定できようか。
だからこれは別れを描いた話ではなく、イニョンを感じ得た相手と出会えたことを尊ぶ映画なのだと、思えた。
三人の男女が互いを大切に想う、ただそのやりとりが連綿と綴られる。
その奥ゆかしい大人のやり取りが、とても繊細な映画でした。
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この作品に込めた監督の率直な想いや演出意図が細かく知られて、とても読み応えがありました。