S&Mシリーズ 4・5/森博嗣
シリーズ4作目「詩的私的ジャック」と5作目の「封印再度」を読んだので感想。シリーズ1~3の感想はこちら。
詩的私的ジャック
死体に残された傷は何を意味するのか!?
女性が死んでいた。みな密室で。歌詞のとおりに1人、また1人。
大学施設で女子大生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮かんだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!
ここ最近無気力状態が続き休みでも1日中寝てしまうのだが、これではいけないなぁと思い、最初の数十ページだけ読んでいた本作を読んでみたら1日で最後まで読み終えてしまった。1~3までは電子で読んだのだが、これは元々家にあった紙版で読んだ。やっぱり紙も良いなぁと思った。
前置きはここまでにして感想。
犯人よりその関係者の方が印象に残っていた作品だったし、読み返してもやっぱりその人物の方が記憶に残った。
タイトルに「詩的」と入っている通り、全体的にポエミーな雰囲気が強く、理系ミステリーとうたわれながらも文系色がチラホラ混ざる感じが何となく面白かった。
ただこうふわっとしているなという印象が強くて前3作と比べるとインパクトが弱いところはあった。動機もはぁ……みたいな感じなので、ここまで読んできてそれか!?みたいな読み応えのない感じはあった。ただ動機を重視しない作品ではあるので、それを思えば許容できるかな?そういう動機で人を殺しちゃう犯人なんだと納得することもできなくもない。
ただ犀川先生と萌絵の関係性は確実に進展している感があるので、そこの面白さを加えればそんなに不満もないかな。
封印再度
不可解な死と家宝の関係は?
「天地の瓢」「無我の匣」。香山家に伝わる2つの宝と死の秘密とは
50年前、日本画家・香山風采(ふうさい)は息子・林水(りんすい)に家宝「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」を残して密室の中で謎の死をとげた。不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、林水が死体となって発見された。2つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
まずタイトルセンスがすごい。本当にすごい!森先生の作品ってどれもタイトルセンスすごいなと思うけれど、これはトップクラスに入るんじゃないだろうか!
英語まで表記すると「封印再度 Who inside」。「封印再度」と「Who inside」の韻もすごいが、どちらも物語を表したフレーズになっているのが本当に感動的。読み終わるとうおおおお!!!!となる。天才的センスじゃないか?
本編。もうね、この話はわたしにとってはミステリーなんてどうでもいい。謎解きなんてオマケと言ってもいい(暴言)。
なぜなら何といってもこの作品の見どころは犀川先生と萌絵の関係性だからだ。ある意味すべてはFになるのトリックより衝撃度が高い。初めて読んだとき度肝を抜かれた。萌絵も萌絵だが(反則技すぎる)犀川先生も犀川先生だよな!あんなことするなんてマジで衝撃的だった。わたしの記憶だと1番進展したのが封印再度で、それ以降はまたゆるやかな進展に戻った気がする。
という意味でこれ単体で読んでもさほど面白くないと思う。シリーズ読者だからこそ最大限楽しめる作品。これに限らずS&Mシリーズは後半になるにつれ、この傾向が強くなっていく印象があるが……。
改めて読むと事件に首を突っ込みたい萌絵のお嬢様ゆえのコネを最大限振りかざした横暴っぷりは引いてしまうところもあるのだが、犀川先生といるときの萌絵は可愛げあって嫌いになれないんよなあ。自身のスペックと家柄であらゆることをどうにかできてしまうパーフェクトな萌絵が、犀川先生といるときだけは思うようにいかなくて悶々としてしまうところが良い。
やっぱりS&Mシリーズ面白いなあ!!!!