S&Mシリーズ9・10/森博嗣
数奇にして模型
密室の中には首なし死体と容疑者が
模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。
S&Mシリーズは後半になるにつれキャラ小説の色合いが強くなっていくけれど、これはシリーズ全体通して見てミステリーとしてもキャラ小説としてもバランス良く面白い名作だと思う。犯人は覚えていたけれど、逆にそれ以外覚えていなかったので、事件の真相を知って「えっ!?」ってなった。
7・8作目が異色作というか番外編のような話だったので、久々に犀川先生と萌絵がガッツリ活躍する話だった。加えて2人以外のキャラクターも今回限りのゲストキャラもみんなキャラが立っていて、700ページほどある作品なのに読み終わるのがあっという間だった。めちゃくちゃ長いんだけど、キャラ同士の会話が面白いのであっという間なんだよね……。
でもってわかりやすい盛り上がりポイントもあり。犯人と対峙したときの犀川先生の発言は「おぉ!」と思った。
そしてタイトルが「好きにしてもOK」のダジャレになっているの好き。森先生の言語センス本当に好きすぎる。
有限と微小のパン
日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴン事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は…。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。
シリーズ最終作。何と800ページ超え!分厚い!圧がすごい!これ電車の中で読んでたけどさすがに腕が疲れたよね……机に置かないと読めない。
最終作ということで真賀田四季が再登場。なので結構何言っているのかよくわからない部分もある。四季と犀川先生のやりとりとか本当理解を超えている。なのにスラスラグイグイ読ませる。満足した読後感が得られるのですごい。
トリックについては反則技というか、これ普通の単発シリーズでやられたらキレてるけど「まあ四季ならな……」と納得させられるところが強い。
全体通して思うけど、S&Mシリーズって20年以上前に書かれた作品なのに全く古臭さを感じさせないからすごい。今だからVRって言われてもすんなり理解できるけど、当時の読者ついていけていたんだろうか?というかこのシリーズって色々な技術が進んだ今の方がすんなり読みやすいのかもしれない。
というわけで全シリーズ再読が終わった。今はVシリーズに取り掛かっている。
いやあS&Mシリーズ本当にどれも面白いからあっという間にシリーズ読破できた。大体めちゃくちゃ長いのに。「理系ミステリ」とか言うと難しそうだし実際難しすぎて言ってることわかんないよぉ……ってなる部分もあるけど、割と本質はキャラ小説なので文系でも全然読める。純粋にミステリとしても読みごたえあるのって大体シリーズのうちの半分くらいだし。あとはキャラクターを楽しんでいる部分が大きい。
S&Mシリーズの作品で好きな話ベスト3をつけるなら
・封印再度→犀川先生と萌絵の関係性の進展がすごい
・夏のレプリカ→犯人が良い、あと湿っぽくて切ない雰囲気が好き
・数奇にして模型→ミステリとしてもキャラ小説としても楽しい
になる。