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新:脚気の病理「蘇る脚気細菌説」~糖質×ウイルス×細菌×黴毒四重奏とプリオン~

割引あり

新年も明けたというのに、この21世紀の世を生きていながら最近明治時代の騒動ばかり調べている。特に北里柴三郎についてだ。今年から新千円札の顔になる男だが、私は明治時代を混乱させた諸悪の根源だと考えている。

そういえば、12月13日はビタミンB1(チアミン:旧名オリザニン)が発見された日だったらしい。この件について触れたかったのだが、だいぶ時間が経ってしまった。

https://x.com/UV312GwqDkt0/status/1734784965521621466?s=20

Twitter(恐らく”X”に慣れる日は来ないだろう)のこの投稿に多くの反応が見られる。知識人気取りがドヤ顔で教科書知識を披露しつつ、案の定、森鴎外への皮肉が頻出した。森鴎外は昔は軍医であり、日露戦争の時にまさにその”脚気細菌説”に固執して”犠牲”を出した戦犯として未だに槍玉にあがる。

※脚気論争をご存知ない方は、こちらのゆっくり解説が短くいい感じにまとまっていたのでご紹介する。

その「戦犯:鴎外」の説に関して批判的に検証した良記事をシェアさせていただく。端的に、日露戦争の時の鴎外には兵食の決定権などなく、また当時の陸軍の対応に関しても悪い形で歪曲されて伝わっているという内容だ。

私は別に森鴎外のファンでもないし、彼の小説も一冊も読んだことはないが、日露戦争で”医学的な権威に固執して判断を誤った”人物とされているのが気の毒だと思う。無思考で下品な現代の反ワク連中が、”森鴎外”を侮辱の代名詞にしていることが気に食わない。(※彼を否定するなら、彼がワクチン狂信者であった点であり、無自覚な正真正銘の殺人犯だと言うべきだ。)


さて、その鴎外が固執した(らしい)という当時の脚気細菌説、何ならForbesとかいう雑誌が「鴎外が脚気菌を分離してコッホ原則を満たしたと主張」とかいう根も葉もない捏造までしているが、本当にこの説は誤りだったのだろうか?を真剣に調査している。が、最近行き詰まっていたのでとある方に助言を求めた。そのやり取りをシェアしようと思う。とある方…というのはお察しだ。



ーーーここから送信メールーーー

「Organisms depleting us(我々を枯渇させる微生物)」

Hi Pat!

Googleに閉め出されたって聞いたよ。つくづく権威と権力って奴は忌々しいなと思うね。

日本(石川県)は新年早々大地震に見舞われた。僕は被災地外に住んでるから問題なかったけど、記録的な大被害だった。SNSでは自然地震か人工地震かで論争が起こってるよ。

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以前patが脚気に関するメールで言ってた「我々を枯渇させる何等かの微生物の存在があると考えている。」を真剣に調査しているところだ。過剰な糖質摂取で糖尿病を介することなく何故いきなり欠乏症になるのか?と考えたら、もう一つ(白米以外の)別の因子があるに違いないと見ている。
脚気は東洋特有の疾患だから文献の多くが日本語か中国語なので使命感を抱いている。

だけど、調査に行き詰まった所だから知恵を貸して欲しい。

脚気のWikiページがあるけど全て日本語だ。

「日本の脚気史」

手頃な文献にある歴史に依ると、脚気が初めて記述されたのは古代中国の晋王朝(265-420)だ。インドから仏教が伝来し、白米食偏重と肉食忌避に移行してから脚気が流行した。

この時期に中国にはインド医学も流入していて、アーユルヴェーダには脚気に相当する疾患概念はないけど、効果的なハーブはあるようだ。だから、病名がないだけで古代インドには既に脚気があったのだろうと思っている。

簡単にアクセスできる歴史に関してはほぼ全てが山下政三という一人の学者の調査に基づいている。この時点で、更に昔の話や詳細を知っていたら是非教えて欲しい。

僕は「Beriberi」と日本の「脚気」が本当に同一疾患なのかをも疑う必要があると思っている。というのも、ロベルト・コッホが、脚気に詳しくないと前置きしつつ、『脚気と呼ばれる疾患には伝染性と非伝染性とがあるように思う。2、3種類の疾患が同じ病名で呼ばれている可能性がある。』と言っているからだ。僕はこの言葉が正しい可能性を考えていて、少なくともウイルス発見の20世紀以前まで、ポリオと脚気は誤診され続けていただろうと思う。似たような疾患が複数あっても不思議じゃない。


明治時代(1868-1912)の日本には脚気の原因に関する3つの説があった。

伝染説
 -ペーケルハーリング、ベルツ、ショイベ
精白米説
 -遠田澄庵(1819-1889)
黴米中毒説
 -榊順次郎(1859-1939)

この内、黴米中毒説とは、その名の通り、保存過程で米にカビが生え、その真菌によるマイコトキシンが中毒を起こすという説だ。主流医学はこの説を誤りと見做しているが、その後の研究でペニシラム属の真菌が衝心脚気(心不全)の原因だと明らかになった。

Masayo Kushiro. (2015). Historical review of researches on yellow rice and mycotoxigenic fungi adherent to rice in Japan. JSM Mycotoxins, 65(1), 19–23.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/myco/65/1/65_19/_pdf/-char/ja
「日本における黄変米とマイコトキシン性の米付着真菌に関する歴史的回顧研究」

「黄変米」とは、日本におけるペニシラム菌に汚染された米粒の総称である。黄変米には3種類あり、それぞれ異なる亜種の毒素原性菌によるものである。当初はアジアの貧困による栄養不良が原因とされていたが、研究が進み、「衝心脚気」(心臓攻撃型の麻痺)「マイコトキシン」「米」の密接な関係が解明された。その後、この病気がペニシリウム属菌に侵された穀物による「黄変米」に由来することが明らかにされ、第二次世界大戦後には「アイランディア黄変米」と「シトリナム黄変米」という2種類の黄変米が発見され、学際的な共同研究によって原因毒性物質が特定された。この論文は、米付着毒性菌と日本で確認された3種類の黄変米に関する研究をまとめたものである。

この論文は、衝心脚気が、一般的なB1欠乏の脚気とは異なる疾患だと示唆した。

個人的に、これは刺激的で興味深いことだと思うが、我々を枯渇させる生物の存在は不明なままだ。

調査を進める中で、次のような仮説を立てた。

●潜在性結核

明治時代は脚気と結核が二大国民病だった。
普通ならそれぞれを別々に考えてしまう所だが、僕はこの2つが相互に関係している可能性を思い付いた。特に我々にはローレンス・ブロックスマイヤーの論文がある。

Broxmeyer, L. (2005). Diabetes mellitus, tuberculosis and the mycobacteria: Two millenia of enigma. Medical Hypotheses, 65(3), 433–439. https://doi.org/10.1016/J.MEHY.2005.04.017
「糖尿病、結核、マイコバクテリア:2000年の謎」

結核やマイコバクテリアが糖尿病を引き起こすという考えは、突飛なことのように思えるが、決してそうではない。糖尿病と結核の特異な関係と頻繁な関連は2000年以上前から観察されているが、この相関関係の理由は今日に至るまでわかっていない。インスリンが発見される以前は、糖尿病と診断されると5年以内に死亡が宣告され、その死因は結核であった。にもかかわらず、5世紀には、結核はすでに糖尿病の「合併症」として描かれていた。この見解は今日までほとんど変わっておらず、ルートが1934年に述べた「一方的な関係」(※糖尿病⇒結核)をなぞっている。つまり、依然として結核は、糖尿病の一般的な合併症とみなされているが、結核患者での糖尿病は一般の人々よりも一般的ではないと考えられている。フィッツシモンズ陸軍病院で結核に罹患した、それ以外は健康で糖尿病でない軍人178人を対象とした彼の研究では、3分の1がグルコーススクリーニング検査で異常値を示した。しかし、彼やニューヨークのローらの発見にもかかわらず、このことは他の地域では認識されておらず、ニコルズはその理由を知りたがった。ニコルズは、結核患者の糖尿病罹患率はかなり過小評価されており、結核患者では糖尿病はごく普通に発症すると結論づけた。糖尿病の発見は容易であった。結核とマイコバクテリアはそうではなかった。

糖尿病の原因が結核菌であることを示す証拠は急速に増えている。シュワルツとハースは2型糖尿病と結核を結びつけた。そして、彼らが全身性結核感染の副産物として発見した膵島アミロイド沈着物は、最近、結核に対する第一選択薬であるリファンピシンによって溶解された。エンゲルバッハは結核における "一過性 "糖尿病について述べ、カラチュンスキーは結核患者における糖質代謝の変化について言及した。さらに最近、マイコバクテリアの構成要素が、NOD(非肥満性糖尿病)マウスにおいて「自己免疫性」1型糖尿病を引き起こすだけでなく、それが発症しない場合には不可避の糖尿病を阻止するワクチンとして作用することが示された。結核発症が糖尿病発症に先行した患者の記録は広範囲に及ぶが、過小評価されており、リン氏とツァイ氏の研究はいずれも糖尿病を合併した結核について述べている。糖尿病は西暦1世紀から存在し、永遠に対処と管理を続ける状態にある。今こそ糖尿病を治す時である。しかし、糖尿病の原因に関する現在のモデルは、それを可能にするものではない。

マイコバクテリア感染で異常な糖代謝を抱えた状態で過剰な糖質を摂取すれば、劇症型脚気に発展する可能性があると考えている。

●黄色ブドウ球菌

ペーケルハーリングの発見した脚気菌は北里によって「ありふれたブドウ球菌」だとして棄却されたが、その「ありふれたブドウ球菌」がチアミン(ビタミンB1)を吸収すると報告した文献を発見した。

Citron, K. M., & Knox, R. (1954). The Uptake of Thiamine by a strain of Staphylococcus aureus from the Duodenum of a Case of Polyneuritis. Microbiology, 10(3), 482–490. https://doi.org/10.1099/00221287-10-3-482
「多発性神経炎患者の十二指腸から分離された黄色ブドウ球菌株によるチアミンの吸収」

多発性神経炎とチアミン欠乏症を伴う特発性肝硬変患者の十二指腸から黄色ブドウ球菌が分離された。この細菌は、グルコースとチアミンで洗浄した細胞懸濁液中、37℃で、1時間半以内に、存在するチアミンの75%を除去することがわかった。この過程は、温度を4℃に下げ、グルコースを加えない場合には、かなり遅れた。除去されたチアミンは破壊されず、生物の死によって、生物から懸濁液中にチアミンが遊離した。この過程は、細胞膜を越えてチアミンが活発に移動し、生物体内で濃縮されたためと考えられる。腸内細菌叢に異常がある場合、このようなメカニズムが臨床的なチアミン欠乏症の発生に関与している可能性が示唆される

特発性肝硬変患者の十二指腸から分離された黄色ブドウ球菌が、グルコースの存在下で培地中のチアミンの75%を吸収した。

その菌がありふれているという事実と、それが脚気の原因であるかには何の関係もないはずだが、思った通りだった。当時の細菌による病理は細菌毒素による直接的な傷害を想定していた為、「ビタミンの未発見」以外にも、「代謝経路の未発見」が議論を混乱させたに違いない

●チアミナーゼ

1940年代、人間の腸内でチアミン分解酵素を分泌する細菌が発見された。

日本語版Wikipediaは英語版に比べて圧倒的に情報量が少ないことで有名だが、チアミナーゼに関しては日本語版にしか書かれていないことがある。

Bacillus thiaminolyticus[8]、Bacillus aneurinolyticus[9]、Bacillus subtilis(枯草菌)[10]等の一部の菌株、また、アノイリナーゼ(=チアミナーゼ)を産生するアノイリナーゼ菌を腸内細菌として保有しているヒトも数パーセント存在しているといわれている。ただし、この菌を保菌していたとしても、脚気の自覚症状、他覚症状を呈することはほとんどない

この内、今注目しているのはB.Subtilis(枯草菌)だ。
当時のコンセンサスは、この菌を保有していても、未保有者より僅かに脚気の発症が早くなる程度というものだったが、仮にそうならGut and Psychology(※腸と心理学:腸内環境の整備で健康を考える代替療法の一派)は何故枯草菌を腸に定着させようとしているのか不思議だ

更に、第二次大戦後、日本で脚気菌ワクチンの開発がされていた。どうせ碌な結果にならなかったのだろうが、文献が国立国会図書館にしかないので現在取り寄せ中だ。

加えて、一部のカンジダ菌株がチアミナーゼを分泌するという文献もあったが、また少数しか発見していない。

●北里柴三郎の天然痘ワクチン

日露戦争で陸軍に流行した脚気は、北里の開発した天然痘ワクチンが原因だと考えている。

SOEKAWA, M. (1983, July 30). Contribution of Shibasaburo Kitasato to the Improvement of Smallpox Vaccine in Japan. 日本医史学雑誌, 29(3), 352–348.
 PDF Link: http://jshm.or.jp/journal/29-3/352-348.pdf
「日本における天然痘ワクチンの改良に対する北里柴三郎の貢献」

北里はロベルト・コッホの研究所に7年間滞在した後、1892年に帰国し、1893年に東京の天然痘ワクチン研究所の顧問に、1902年には所長に就任した。北里は細菌学の業績によって日本の天然痘ワクチンの改良に貢献した。本稿では北里の貢献について簡単に紹介する。

防腐剤にフェノールの使用、枯草菌の芽胞で「汚染」されていたらしい。

※フェノールはチアミンリン酸化の促進、低濃度で枯草菌の遊走を刺激する。

●プリオン

最後に、今注目しているのは、チアミンがプリオンと結合するという事実だ。

Perez-Pineiro, R., Bjorndahl, T. C., Berjanskii, M. V., Hau, D., Li, L., Huang, A., Lee, R., Gibbs, E., Ladner, C., Dong, Y. W., Abera, A., Cashman, N. R., & Wishart, D. S. (2011). The prion protein binds thiamine. The FEBS Journal, 278(21), 4002–4014. https://doi.org/10.1111/j.1742-4658.2011.08304.x
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1742-4658.2011.08304.x

プリオンタンパク質は進化の過程で高度に保存されてきたが、その正確な生物学的機能は未だ不明である。プリオンタンパク質の潜在的な生物学的機能を同定するために、我々はシリアハムスターのプリオンタンパク質[shPrP(90-232)]を用いて低分子スクリーニングアッセイを行った。スクリーニングは、血液脳関門を通過することが知られている149種類の水溶性代謝物のライブラリーを用いて行った。1D NMR、蛍光消光、表面プラズモン共鳴の組み合わせにより、結合定数約60μmの特異的プリオンリガンドとしてチアミン(ビタミンB1)を同定した。その後の研究から、この相互作用は進化的に保存されていることが示され、マウス、ハムスター、ヒトのプリオンで同様の結合定数が見られた。銅の存在下と非存在下で、構造化されていないN-末端領域を含む、あるいは含まない、さまざまなタンパク質構造体の長さを調べた。このことは、N末端がタンパク質のチアミンとの相互作用能力に影響を与えないことを示している。チアミンに加えて、より生物学的に豊富な形態のビタミンB1(チアミン一リン酸およびチアミン二リン酸)も、同様の親和性でプリオンタンパク質と結合することがわかった。チアミンの相互作用部位は、ヘリックス1とその前のループの間に位置する。これらのデータとコンピュータ支援ドッキングおよび分子動力学法を併用して、チアミン結合ファーマコフォアをモデル化し、他のチアミン結合タンパク質との比較を行い、相互作用の共通点を明らかにした。

正直なところ、これが最も重要だと思うのだが、現時点でプリオンに関する知識が乏しいので、この事実が何を表しているかが分からない。著者達も、チアミンが遊離型活性型問わずプリオンと結合できると述べているだけで、その生物学的意義は不明だと結論している。

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以上が調べた全てだ。

しかし驚いたのは、「チアミン欠乏症」には診断に関する明確なコンセンサスがなく臨床症状を手掛かりに決定しているらしいということだ。

Whitfield, K. C., Bourassa, M. W., Adamolekun, B., Bergeron, G., Bettendorff, L., Brown, K. H., Cox, L., Fattal‐Valevski, A., Fischer, P. R., Frank, E. L., Hiffler, L., Hlaing, L. M., Jefferds, M. E., Kapner, H., Kounnavong, S., Mousavi, M. P. S., Roth, D. E., Tsaloglou, M., Wieringa, F., & Combs, G. F. (2018). Thiamine deficiency disorders: Diagnosis, prevalence, and a roadmap for global control programs. Annals of the New York Academy of Sciences, 1430(1), 3–43. https://doi.org/10.1111/nyas.13919
「チアミン欠乏性疾患:診断、流行、グローバルコントロールプログラムのロードマップ」

多彩な症状
前述したように、チアミンはミトコンドリアに存在するいくつかの主要な細胞酵素複合体の補因子である。したがって、チアミン欠乏症は後天性のミトコンドリア病であると考えられ、神経系や心臓系を含む多臓器の病変を説明することができる[42]。TDD(チアミン欠乏性障害)の臨床症状は非常に多様であり(図5)、臨床症例の定義やバイオマーカーに関するコンセンサスがないため、これらの疾患はしばしば誤診され、おそらく世界の多くの地域でTDDの有病率が著しく過小評価されている。

質問

1.各々のピースがリンクしていないように感じている。改めて今後の調査に助言が欲しい。

2.チアミンがプリオンと結合するという事実について
全ての疾患はプリオン病」とまで言ってのける貴方が、この事実をどう解釈するのか聞いてみたい。

Mit

ーーーここまで送信メールーーー






ーーーここから返信メールーーー

Hi Mit

I never thought I would meet an investigator of your caliber.
君のような調査官に出会えるとは思ってもみなかった。

This work is ASTOUNDING.
この仕事は驚異的だ。

The A.I. allowed me to translate the wikipedia articles. I've attached them in english if you have anyone you want to send them to. I had too scroll all 14 pages for it to translate before it could be saved as a PDF.
AIがWikipediaの記事(※「日本の脚気史」と「チアミナーゼ」)を翻訳してくれた。もし送りたい人がいれば、英語版を添付しておく。PDFとして保存する前に、翻訳するために全14ページをスクロールしなければならなかった。

You have jumped feet-first into the quicksand of Continuum.
君は連続体理論の流砂に足から飛び込んだのだ。

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7,313字

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