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身体を通じた他者との共鳴とは?「マテリアルから大人の学びを考える #01 和太鼓」イベントレポート

10/19(月)に、ミテモは 株式会社TEAM EN と共催で、「私たちを学びに引き込むマテリアルの可能性を探求する」と題したオンライン・トークイベント(ウェビナー)を開催しました。
企画告知は以下をご参考ください。

本記事では、ミテモの高橋昌紀がこのウェビナーに参加して、印象に残ったことを中心にレポートします。

☆イベントの流れ

まずミテモの代表澤田さんからミテモについての紹介がありました。その後、ミテモの小林さんから「学びにおけるマテリアルとは」と題して、本企画のテーマである「マテリアル」の認識を揃えていくプレゼンがありました。

そこから「このミテモの興味関心を一旦無視してガンガン好きに話してください」というフリが入り(笑)、TEAM ENの陽介さん、宮城紘司さんにバトンが渡されました。お二人からそれぞれ、これまでの個人の取り組みや、興味関心、そしてTEAM ENが行っているプロジェクト等について語っていただきつつ、ミテモの堀さんも交えて、パネラー総じて5人で、思うがままに対話を広げ、深めていきました。

☆印象に残ったこと

私が対話を聞いていて面白く思ったことをまとめます。

①「想像で落とす、技術的に落とす」

陽介さんが語った「太鼓を叩くときに、呼吸を沈める、重心を沈める」という話。まずそもそも和太鼓に対する知識がゼロの私としては、「沈める」という身体感覚が興味深く感じました。グッと沈むことで、地面から伝わってくるエネルギーを逃さずに、身体を通して太鼓の演奏につなげる。その様子が、なんとなく目に浮かぶ気がしました。

さらに面白かったのが、じゃあどうやって「沈める」のかといったときに、「想像で落とす、技術的に落とす」の2つがあるのだという話です。想像というのは気持ちとも言いかえられて、すなわち「気を落ち着ける」ということに近いのだと私は理解しました。

たとえば私自身の経験だと、大人数を前に何かを発表するときには、緊張するので「気を落ち着けよう」と思ったりします。しかし、思うだけではなかなか落ち着かない。どうすればよかったんだろう。そう、思うこともあります。

ここで陽介さんのおっしゃる「落とす技術がある」という話から、和太鼓の技術体系の厚みを感じました。演奏の技術だけでなく、身体の状態を整える技術も明示化されており、教え学ぶことができる。陽介さんはさらっと語っておられましたが、これはよく考えるととてつもない練度の世界なのだと思います。

和太鼓を学ぶことは、「楽器の演奏を学ぶ」に留まらない。それどころか、むしろ順番が逆で、心身のパフォーマンスを高める営みの連鎖を通じて表現されるものが、五感を通じて聴衆、そして演者に響き渡っていく、このプロセスを和太鼓と呼称する、というほうが理解として真実に近いのではないかと思いました。

②「透明でいる、自分でいる」

宮城さんが「陽介さんは太鼓の指導をするときにも、細かい立ち方や打ち方はあまり教えない」と話されて、それに対して陽介さんが「それぞれの人の打ち方はそれぞれに正しい。その人の中で、より自然に感じる打ち方を探してみてほしい」と返されました。そこに加えて、「もちろんチームとして統一するときもある。そういったときには、透明でいることと、自分でいることの2つ(の軸)がある。透明というのは、素直に言われたとおりに、カメレオンのように自分の色を変えていくこと。しかし、言われるだけではなくて、自分の感覚も基準として持っておく。自分の中の基準を参照にして、言われたことがそこからどれくらい離れているかを測る。1つの正解があるとは思わない、そうしてしまうと可能性がなくなる。まだ見たことのない打ち方が生まれるかもしれないから。」と語っていました。

今回のウェビナーは興味深い話ばかりでしたが、ここに取り上げたやりとりは、その中でも特に印象深いものでした。というのは、陽介さんの、太鼓ならびにそれに携わるすべての人に対するかぎりなく深い関心が、集約されていることばのように感じられたからです。

卓越した奏者である陽介さんに太鼓を学ぶ機会があったら、おそらく私もそうですが、多くの初心者・初学者は「どうやったらいいか、正しい方法を教えて下さい」と聞いてしまうと思います(笑)。しかし、陽介さんの太鼓、人に対する捉え方は「1つの正解はない、そして自分の感覚を大事にしてほしい」というもの。明示できる、記述できる正しさの知識を会得することよりも、自らの身体に向き合うことを重んじています。

と、そうはいっても本当の初心者は、自分の感覚に沿う、すなわち「自分でいる」ことも難しいと、思い悩んでしまうことになるように思います。そんなときに心がけたいのが「透明でいる」という姿勢なのではないかと感じます。素直な気持ちで、学びを身体に溶け込ませていくことに集中する。それと併せて、少しずつ、自分の身体から語り出てくる気持ちよさを感じ取っていく。この並行するプロセスを、オープンな気持ちで楽しめるようになっていくならば、きっとそのときには「自分の太鼓」がそこに生まれ出て、その場を共有する人々と共鳴を生じさせることができるのではないか。それを感じる時、どんな感覚が流れてくるのだろうか? 興味深い想像をしています。

以上、私が印象に残ったところのまとめでした。
本ウェビナーはミテモのYouTubeで配信していました。現在でも録画を見て頂くことが可能です。本記事では一部しか取り上げられませんでしたが、示唆に富む対話に満ちています。関心を持った方はぜひ、YouTubeをご覧くださいませ!

☆ワークショップのご紹介

最後に本ウェビナーに関連する、実践型企画のご紹介です。

「TEAM EN INC. 太鼓企業研修」と題して、リーダーシップ開発及びチームビルディングをテーマにした2泊3日のワークショップを開催いたします。本記事にも登場されたTEAM ENの陽介さんが講師を務められます。
ワークショップ参加にあたり、和太鼓に関する知識は一切不要です。和太鼓の技術習得が目的ではなく、組織開発・人材育成が目的です。

本記事を読んでいただき、あるいは上掲のウェビナー動画を見ていただき、和太鼓、TEAM EN、陽介さんに関心が湧き、これまで経験したことのない学びに飛び込んでみたい!と考える方は、ぜひご参加を検討くださいませ。

「TEAM EN INC. 太鼓企業研修」
イベント概要
日時:11/21(土) 12:00 〜 11/23(祝月) 12:00
会場:増位山随願寺
住所:〒670-0808 兵庫県姫路市白国5番地 増位山山頂
費用:¥28,000 (税抜)
定員:10名

ご興味をお持ちいただいた方、ご参加を検討される方は、お手数ですが ミテモの問い合わせフォームからお送りください。

それでは、お読みいただき、ありがとうございました!


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