千年の祈り感想
中国の生活を垣間見た気がする。家族という単位を特別視すること。体裁と恥の文化。とてもとても狭い単位の村がいくつも集まってできている事。
いびつな家族関係。とても幸せとは言いきれない関係性。そして、その集合体としての村。まあ、村だったり集合住宅だったりするのだけれど。
筆者はあまり中国のことを好きじゃないんだろうなあと思う。そして、アメリカな好きなんだろうなあとも思う。
ただ、だからこそ中国の人たちの感情が鮮やかに描かれていて、まるで隣にいて息づかいが聞こえるようだ。全ての登場人物が呼吸をしている。
そして、この作品を通して私はとてもとても中国に興味が湧いた。中国の村社会、中国共産党原理主義、そして伝統と面子、恥の文化。関心が高い。筆者はこれらをやや否定的に綴っているけれども、もしかしたらこれらの旧態依然とした洗脳こそ、綿々と受け継がれるべき必然性のある文化なのかもしれないとも思う。
歴史は人を裏切らない。時間は人を裏切らない。長い長い歴史の中で、ずっと守られてきた対人関係。それにこそ意味があるのかもしれない。
だって、書いてあることの本質が史記の世界と変わらないのだもの。
ここが中国文学の魅力なのかもしれない。どの書物でもなにか目に見えないそしてとても薄い、しかし確実に存在する細い糸のしがらみの中で生きていくような。なにか灰色のスカッと晴れないほんの僅かに質量が大きい空気に周りを取り囲まれているような閉塞感。どうもその世界には独自の魅力があるに違いない。
いずれにしても、とても好きな本であることは間違いない。何度でも読むだろうなあ。