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朔の話 06┃目の前の現実(積みあがる段ボール箱)

とにもかくにも、「朔」は産まれました。インバウンド向けの事業を営む当社、コロナ禍で新規事業を仕込み、アフターコロナに備えるはずでした。


商品の概要はこうです。

  • 日本酒ができるまでのプロセスを、10か月の体験として販売する

  • 購入者は、10回のオンライン体験(田んぼと酒蔵がある兵庫県・播磨地方に関するもの)に参加する権利がある

  • 申し込み後に「スターターキット」として、「バインダー」と「播州織の手ぬぐい」が届く

  • 毎月のオンライン体験の前には「旅のしおり」が届き、バインダーに綴じていく(デアゴスティーニっぽく)

  • 日本酒が完成したら、10本届く


販売前には「最低でも100人に売れる」と思っていました。15万円+税の商品は、僕のビジネス人生にとって「少額の商品」。友人や知り合いを中心に、ちょっと語ればいけるでしょ、と考えていました。甘い。

結果、採算ラインを大きく割り込む14人(それが何かをよくわかっていない僕の父親を含む)にしか販売できませんでした。慌てて、年間商品だったのを月ごとの商品にバラし、買いやすくして売り歩きました。それでも、累計でも100名弱にしか買っていただけません。

たくさん用意したものの、置き場が無くて、神戸の実家に置いていた「スターターキット」。母親に「あーあれ、すぐ無くなるからちょっと置かせて」と言ったのに、いつまでも無くならないので、ずいぶんと心配をかけてしまいました。

あ!

ちなみにそのスターターキットに含まれる「バインダー」、10回の「旅のしおり」が綴じられたものがまだ在庫あります。ご希望される方はお届けしますので、以下からご連絡ください。


さて、その状態で、毎月のオンライン体験を提供するのは、とてもしんどかったです。当時、コロナ禍における旅行の代替手段として登場していたオンライン体験は、プロの司会でなくてもいい/配信もスマホでいい/途中で途切れてもそれはそれでいい、みたいなノリがありましたが、15万円という単価なので、やはりそういうわけにはいきません。ちゃんと配信しようとすると、たくさんの課題があり、いかに「コンテンツ企画」というものが周到な準備によってはじめてできるものかを思い知りました。朔も初回に配信トラブルを起こしてしまい、2回目からは、某テレビ局で幾多の現場をこなしてきた加山郁芳さんに助けてもらいました。加山さん、一番苦しい時を支えてくれてありがとうございました。

配信チームは、回を追うごとに補強され、洗練され、安定感を増していきましたが、困ったのは「庄司が司会をやる」という構図は変えられなかったこと。お客さんを呼べないずぶの素人が、配信のMCをやらなければいけない。あれはつらかったです。

もっとも辛かったのは「能楽」の回で、オンライン体験から10名、リアル体験から5名程度の参加だったと思いますが、兵庫県の高砂神社を借り切り、能楽チーム(シテ方、ワキ方、囃子方)にお越しいただき、相当なコストをかけて配信をしたときです。多くの人を巻き込んでいるのに、その方々の文化を、ごく限られた人にしか体験していただけない・・・悔しかったです。

能楽師の藤井丈雄(ふじいたけお)さんと、高砂神社のバックステージツアーを含む、能楽体験をしました


確かに、しんどいことが多かった。でも歯を食いしばって、気力でがんばっていた・・・というわけではなく、実は、けっこう楽しかったのです。それは、このオンライン体験の企画を通じて、日本文化の面白さを学ぶことができたからです。


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