【みたすセレクション】 名バイヤーも惚れた!武道着がルーツの頑丈トート
誰もが知るセレクトショップとコラボレーションし、数々の国際会議において配布資料用のコングレスバッグにも採用されてきた「sasicco(さしっこ)」。伝統の三河木綿の刺子織(さしこおり)生地で消防法被(はっぴ)や武道着を手がけてきた創業100年を超える「タネイ」が、2008年に立ち上げたバッグブランドです。そのストーリーやデザイン性、縫製技術は、同業者や目の肥えたバイヤーも目を見張るほど。本記事ではそんな「sasicco」の魅力に迫りながら、不動の定番アイテム2つをご紹介します。
丈夫な刺子織バッグを生み出す、女性職人の手仕事。
sasiccoのバッグがつくられているのは、愛知県豊川市。創業101年を数える「タネイ」の本社内に、その工場はあります。
工場といっても、スペースは社屋のワンフロア。そこで働くおよそ20名の女性職人が、すべての工程をひとつひとつ、手作業で行っています。
なぜ、機械化や自動化が進む世の中で手作業を貫いているのか。その理由は、sasiccoのバッグに使用する「刺子織」という生地の特徴にあります。
「刺子織」とは、補強や装飾のために生地に別の糸で刺し縫いした「刺子」を模して織られた綿織物のこと。厚手で丈夫な三河木綿は火に強く、吸湿性にすぐれ、それでいて驚くほど軽いため、もともと消防服や武道着につかわれているものだそうです。手間がかかることから一つの織機で1日わずか40mしか織れないとも言われているそうです。
丈夫ゆえ機械での裁断や縫製がむずかしく、美しい仕上がりにならないことから、今も彼女たちの手でひとつひとつ、ていねいに作られているのです。
表面にぷっくりとした凹凸が規則的に並ぶのが刺子織の何よりの特徴。その良さを最大限に生かすため、生地を手で引っ張り細かく調整しながら、凹凸の合間にまっすぐ、刃や針を通していきます。
日本の武道を道着づくりで支えて100年
繊細で高度な技術を必要とするsasiccoのバッグ。それを可能にしているのは、タネイが創業以来100年以上にわたって刺子織の消防法被や武道着を手がけるなかで磨いてきた技術があるからです。
タネイの武道着の品質の高さは業界でも有名。かつて世界の大舞台で戦った柔道選手が着用していたほか、現在も若い世代に人気の格闘家が自身のブランドのコラボ相手としてその名を挙げるなど根強いファンが存在します。
そんなタネイが変わりゆく時代のニーズに応えるため、2008年に立ち上げたバッグブランドが「sasicco」。
「今、タネイにある人材、技術、刺子織の生地で、自分の大切な人が本当に喜んでくれる品質のバッグをつくろう」という社長の声かけに応じて、全社を挙げたチャレンジが始まったのだそうです。
sasiccoのディレクターを務める中神友香さんは当時の様子をこう振り返ります。
「90年以上、消防服や道着しかつくっていなかった会社がバッグをつくる。当然、課題はたくさんありました。でも、その課題を乗り越えようと技術を磨き、できることが増えるにつれて新しいデザインも生まれていきました。」
その原動力となっていたのは「職人たちのかばんづくりに対する思い」だそう。
「武道着は自分たちが直接身に着けるものではありません。でも、バッグなら“もし自分がつかうなら”という視点をより活かすことができる。そんな彼女たちから生まれるアイデアにsasiccoは支えられているんです。」
ブランドの立ち上げ当時、バッグのデザインについては外部の協力も得ていたそう。しかし、結果的に長く支持されるアイテムはすべて、女性職人たちがみずから考案したものだったそうです。
それを裏付けるように、工場内にはある光景が広がっていました。
新作バッグは休憩時間に生まれる
工場内を歩いていると、職人の持ち場それぞれにユニークな刺子織のアイテムがあることに気がつきます。
実はこれ、道着やバッグをつくるうえで発生する「はぎれ」をつかって自分でつくったものだそう。
お昼休憩は12時から1時間。しかし、みなさん12時半頃に戻ってきては思い思いの作品をつくられているのだそうです。
隅田さんも、そのお一人。20年以上もタネイに勤務し、道着もバッグも手がけてきたベテランです。
「刺子織の生地はいいものだってみんな知っていますから。捨てるのはもったいないですよね。」
実は、sasiccoの人気アイテムは、この隅田さんが休憩時間につくったご自身のランチバッグから着想を得たものだそう。今でも彼女たちのアイデアから新作が生まれることがよくあるそうです。
「もったいない」という思いは今、なるべく「はぎれ」を出さないパターンづくりなどにも活かされているらしく、先日その取り組みが認められ「愛知県SDGs登録制度」にも登録されたそうです。
隅田さんにsasiccoのバッグづくりを続ける理由について尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「(大量生産ではないから)自分がつくったということがわかる。だから、街でつかってくれている方を見かけると、とても嬉しくなるんです。だからまた、いいものをつくろうという気持ちになる。そのくり返しです。」
いいものをつくる。その思いに触れたエピソードとして、中神さんもこんな話をしてくださいました。
「sasiccoのバッグは、使うほどに自分になじんでくる。だから新しいものを買うのではなく、修理してほしいというご依頼もたくさんいただきます。
そんなときも職人の思いの強さを感じます。例えば、取っ手を交換してほしいというご依頼に対して『ここもほつれているから直していい?』『(補強するために)1回折ってから縫っていい?』と質問が飛んでくるんです。
あぁ…そのぶんのお代はいただいていないんだけどな…と思うのですが(笑)、そんな『すこしでもいい状態でお返ししたい』という彼女たちの思いがお客様に伝わって、長くお使いいただけるのだと思います。」
性別や年齢を超えてsasiccoのバッグが愛される理由。それは、職人たちの並々ならぬモノづくりへの思いが、バッグの至るところから感じられるからなのかもしれません。
そんなsasiccoの商品ラインナップのなかから、不動の定番アイテムを2つご紹介します。今回、希望される方は名入れやオリジナルの刺繍を入れることもできます(有料となります)。
たっぷり収納、8色ぜんぶ欲しくなる「トート40」
sasiccoのなかでもゆるぎない人気を誇る定番商品が、この「トート40」。
いつも荷物が多くて困る…という方も、気にせずどんどん入れられる容量たっぷりの大きめトートバッグです。仕切りのある内ポケットもついていますので、荷物の仕分けにも便利です。
たくさん荷物を入れたら肩が痛いのでは…?という心配もいりません。太めの取っ手が重さを分散。やさしい刺子織の生地ですから、長時間肩にかけていても疲れにくい仕様になっています。
ベーシックな黒やグレーをはじめ、アクセントになる赤やカーキなどぜんぶ揃えたくなるカラーバリエーションは全8色。
sasiccoの品質の良さや刺子織の風合いを感じていただくなら、まずはこの「トート40」を手にとってみてはいかがでしょうか。
取っ手が“黒帯”のシンプルトート「OBIトートミニ」
バッグの取っ手にsasiccoのルーツとも言える柔道着の黒帯をつかった人気の「OBIトート」を、より手軽につかえるようにちいさくしたのがこの「OBIトートミニ」。
シンプルなデザインだから性別を問わず、トレンドに関係なく長くつかうことができます。
ファスナー付の内ポケットがあるから、小物が迷子になる心配もなし。
見た目以上にたっぷり入るから、近所へのお買い物はもちろん、ちょっとしたお出かけにも活躍してくれます。
本社には手に取って確かめられるショールームも
サイズ感や風合いなど実物を見てみたい、という方は、取扱いのあるショップはもちろん、タネイ本社に併設されたショールームで手に取って確かめていただけます。
もちろん、その場での購入もOK。縫製ひとつ、タグひとつにこだわりの詰まったsasiccoのバッグ。商品を手に、そのひとつひとつに耳を傾けながら選べば、より愛着のあるひとつを選んでいただけるはずです。