「ポタジェガーデン」のある暮らし
風のふくまま、庭ぐらし vol 4
こんにちは。ガーデンデザイナーの柵山です。
みなさん、”ポタジェ“って聞いたことはありますか?
何かおいしそうな響きですが。
ポタジェとは、フランス語で「家庭菜園」という意味なのです。
ポタージュが語源で、スープの具材を菜園で作ったことに由来するのですが、果樹・野菜・ハーブ・草花などを混植した「実用と鑑賞の両目的を兼ね備えた菜園スタイル」の事を指します。
簡単に言えば、”楽しく美しい庭“という解釈で良いと思いますよ。
欲張りでいい。やりたいことを全部詰め込んじゃおう。
私は仕事で、個人のお庭を手掛けることが多いのですが、3年程前から、多くの方に要望されていることがあるんです。
それは、「家庭菜園のスペースが欲しい」というもの。
ご依頼の7割以上の方が要望されるので、その関心の高さを実感しています。
ポタジェガーデンですが、私は、いい意味で ”欲張りガーデン“と呼んでいます。
お庭のご依頼のお客様とお話していると、あれもやりたい、これもやりたい、色々出てくるんです。
雰囲気の良い木を植えたい。
子どもが遊べる芝生エリアが欲しい。
季節のお花も愉しみたい。
収穫できる果樹が欲しい。
小さくても野菜を育てるスペースが欲しい。
ハーブも少しだけ、、、とこんな感じ。
そんな方には、「欲張りに全部やりましょう!」
と私は、ポタジェガーデンをオススメしています。
ポタジェガーデンのコツ
沢山の要素を取り入れながらも、全体の調和を意識することがとても重要です。
お庭のフェンスなどの構造物と住宅の建物などの素材や色目を合わせると良いです。
菜園部分も、土壌の水はけも考慮して、木枠で盛り土を行うと、ヨーロッパのキッチンガーデンのような雰囲気が出てオシャレになります。
ヨーロッパのお屋敷のような大きなポタジェとは異なりますが、この東海地区で、やりたいことをたくさん詰め込んだ、ポタジェスタイルのお庭の実例をいくつか簡単に紹介しますね。
私が何かしら携わっているお宅が中心になりますが、試行錯誤で庭仕事に取り組むみなさんの姿も見てもらって、自分もやってみよう! なんて思っていただけたら嬉しいです。
ポタジェガーデンのある暮らし①「四日市市E邸」
利用に困っていた出っ張りのデッドスペースをミニ菜園に。
小さなウッドデッキや石張りのテラスや芝エリアも設置しています。
果樹:レモン・ジューンベリー・ブルーベリー
ハーブ:ラベンダー・フェンネル
草花:ヤマボウシなどの花木や各種宿根草
野菜は、現在ミニトマト・ナスを育て中。
デットスペースは、突き当りにベンチを設置したシンメトリーのミニ菜園。手前は、宿根草のエリアで季節ごとに花が咲きます。木陰を作る樹木は、赤い実をたくさん付けたジューンベリーの木。
剪定枝を利用した雰囲気のあるフェンス。
野菜づくりは全くの初心者。畑では、ナス・ネギ・ミニトマトなどを少しずつ育て始めています。
ポタジェガーデンのある暮らし②「菰野町Y邸」
木々の間を抜ける素朴なアプローチ。雑草好きなYさんは、アプローチ沿いにあえて雑草エリアを設け、草刈で管理しています。
実がたくさんなったジューンベリーはジャムにする予定。
木枠もレンガも自分で調達し、手作りしたミニ菜園。
まだ小さなお子様を子育てしながらご夫婦で一緒に取り組んでいます。
ここでは、ミニトマト・きゅうり・えだまめの他エディブルフラワーなどを栽培中。
自然木の幹で囲った畑は、無農薬・無化学肥料で自然栽培に挑戦中。
雑草をマルチング材に利用したり、相性の良い植物(コンパニオンプランツ)の組み合わせを工夫して栽培をしていますよ。
ポタジェガーデンのある暮らし③「桑名市M様」
ご自分でコツコツ植えこんできたユーカリやミモザなど特徴のある木々を活かして、周遊できる宿根草中心のナチュラルガーデンを作りました。
菜園コーナーも取り入れ、ガーデン作業も可能な道具置き場も兼ねた小さな小屋も建てました。オリジナルの物置小屋というのも素敵なポタジェガーデンのための大きな要素です。
ポタジェガーデンのある暮らし④「菰野町Y邸」
このお宅は、理想的なポタジェです。
30代の子育てママですが、家族皆で一緒に木柵から石積みに至るまで全てDIYで完成させています。
味気ない市販の物置も自分たちで板を使い、雰囲気良く囲ってしまったとのことです。
幸福度が高い庭「ポタジェガーデン」を皆さんもぜひ!
このように、見ても素敵なポタジェガーデンですが、様々な植物を混植することで生まれるメリットもあります。ポタジェガーデンによって、多様性が生まれ、お庭の生態系が豊かになり、オーガニックなガーデニングへと繋がるのです。
「コンパニオンプランツ」という言葉があります。別名で”共栄植物“とも言い、一緒に植えることで、お互いの生育にとってプラスになる植物の総称です。
例えば、トマト✕バジル。
バジルは、生育する上で、水分をたくさん取って乾燥気味が好きなトマトの環境を作ってくれると同時に、その香りが防虫効果となります。
さらにそこに、レモンバームなどのハーブを加えるとその花にミツバチなどがやってきて、トマトの受粉を促す、といった相互作用が生まれるんです。
しかも、トマトとバジルは、収穫してからの味の愛称も抜群ですよね。
ポタジェガーデンは、幸福度がとても高い庭のスタイルだと思います。
ガーデニングの究極な贅沢とは、自分が育てた花を摘み取って食卓に飾る事、と言います。
そこに自分の収穫した野菜や果物があったらより幸せです。
ポタジェがあると、春夏秋冬すべての季節が好きになります。
芽出し、花の開花、花飾り、収穫、ドライフラワー、採種、生き物たちの姿・・・一年中、庭の自然の恩恵を楽しむことができるんです。
仮に大きな庭でなくても、 マンションのような土の無い場所であっても、
プランターを組み合わせることで、小さなポタジェを楽しむことだってできますよ。
いかがでしたか?
ポタジェ、楽しそうではありませんか?
まだまだ奥が深い「ポタジェスタイルの庭作り」。またどこかで続編もお届けしたいななんて思っております!