やさしい養蜂家とミツバチがつくる、豊橋のブランドはちみつkosaji。
冬が終わり、訪れるあたたかい春を待ち遠しく感じるのは、私たち人間だけではありません。ミツバチたちも長い冬を巣の中で耐え、春になると巣を飛び出し花のまわりを元気に飛び回ります。
そんなミツバチと養蜂家がつくる、とっておきのはちみつが愛知県豊橋市にあります。その名も「kosaji(こさじ)」。今回の記事ではkosajiを手がける養蜂家の近藤勝俊さんと、kosajiに惚れ込み 道の駅とよはし で販売する古開さんにkosajiのはちみつの魅力についてお話を伺いました。
「道の駅とよはし」は、2019年に開駅した道の駅。地元のこだわり特産品が揃うと評判で、愛知県のみならずお隣の静岡からもお客さまが訪れるのだとか。道の駅とよはしではオープン当初からkosajiのはちみつを販売。「地元豊橋のために何かをしたい」というお二人の熱い想いが伝わって、今ではkosajiは外せない人気商品となったそうです。
養蜂家の近藤勝俊さん(左)と、道の駅とよはし副駅長の吉開さん(右)。Kosajiが結んだ縁もありプライベートでも仲良しだそう。
虫が苦手だった近藤さんが、手伝いをするうちに養蜂の世界へ。
もともとは、家業を継いで働いていた近藤さん。経営の調子が芳しくなかったときに他にできることを探していて、知り合いから声をかけられたことをきっかけに養蜂業を知ります。それまで養蜂にはまったく興味をもっておらず、むしろ虫が苦手だったと言う近藤さん。それでも養蜂のお手伝いをしながら勉強しているうちに、体を動かして働くこと、自然の動きを感じながら働くことの楽しさを実感。次第に養蜂の世界に飛び込むことを決意するようになったのだそうです。
はちみつ販売のきっかけは、友人からの「おいしい」のひとこと。
お手伝いから養蜂の世界に入った近藤さん。長らく花粉交配用のミツバチの貸し出しのみを行なっていて、数年前まで はちみつの販売は考えていなかったといいます。取れる蜜の量が、年によって少なかったり季節によって変わったりするため、事業化しようとは思わなかったのだそうです。
それでも集まった分の蜜を瓶詰めして友人たちに配っていたところ、「おいしい!」と大評判。多くの人から強くすすめられたこともあり、はちみつの販売を始めることになりました。養蜂を始めてから、15年が経過した頃のことです。
今では店頭販売とネット販売を行なっていますが、当初は自転車にリアカーをつないだ移動販売からはじまったkosaji。古開さんとの出会いもこのとき偶然会ったのがはじまりだったとか。
1匹のミツバチが、一生をかけて集める蜜は“小さじ1杯”
kosajiというネーミングは「1匹のミツバチが一生のうちに集めることのできる蜜の量が、わずか小さじ1杯ほどであること」に由来します。小さじ1杯分の蜜を集めるまでのミツバチのストーリーを感じながら味わってほしいという、近藤さんの真摯な想いが詰まった素敵な名前ですね。
kosajiのはちみつ作りで最も大切にしていることは、できるだけ人の手を加えずにミツバチに蜜を集めてもらうこと。自然につくられたそのままの蜜を味わってもらいたいという想いからです。ミツバチによって集められた蜜は、巣のなかで時間をかけて濃縮されていきますが、すぐに採蜜して高熱処理をおこない、濃縮して販売するという方法もあります。効率面ではその製法が一番ですが、kosajiでは自然へのこだわりから巣の中で濃縮され完成したはちみつだけを販売しています。「これは本来、当たり前の話なんだけどね」と近藤さんは謙虚に話してくれました。
そしてはちみつ作りの工程は1年がかりです。3月から6月はミツバチが一気に増え、蜜がたくさんたまります。ミツバチの数を増やしながら、7月から秋口までは餌を切らさないなどミツバチたちを死なせないように、手厚くお世話し維持する期間です。冬になると蜜源となる花がなくなってしまうため、ミツバチたちは越冬に入ります。巣の中でおしくらまんじゅうのようにして温かくして春を待つ期間なので、あまり巣を刺激せず高温状態を保てるようそっとしておきます。この間に、ミツバチが増える春に備えて、木の箱や巣の枠をつくったりしています。
はちみつは、ミツバチからおすそわけしてもらう大切なもの。
はちみつ作りで一番苦労するのは「自然に左右されてコントロールが効かないこと」と近藤さんは話します。ある年の夏は天候不順で、花は咲いていても蜜があまり集められなかったことがありました。少しは集まったものの、ミツバチのことを考えて無理はせず、その年は夏はちみつの販売を断念することになりました。
たくさんのはちみつを採るために、ミツバチを増やせるだけ増やし、効率よく製造するために省力化できるかを考えていた時期もありました。天候が悪くミツバチがたくさん死んでしまう経験もしました。そのときから、なにより一番大切なのはミツバチで、あくまで蜜をおすそわけしてもらっているという意識を強く持つようになったのだといいます。今は、できるだけミツバチを甘やかして過保護に育てていて、これがkosajiにとっても、ミツバチにとっても、お互いのためになるんだそうです。
そして、もうひとつ苦労するのが「ミツバチに刺される」こと。防護服を着てはいるものの、夏の暑さで汗をかいて服が肌に張り付いてしまったときや、夢中になって網が顔に張り付いているときに、針が服を貫通して刺されてしまうといいます。雑に扱うとミツバチが怒って襲ってくるので、「ちょっと開けさせてね」というやさしい気持ちで作業をしているのだというエピソードも聞かせていただきました。
”季節で味が変わる”kosajiのはちみつ
はちみつの蜜源となる花は季節によって異なるため、味わいも大きく変わります。kosajiでは“春はちみつ”と“夏はちみつ”の2ラインの商品を販売しています。
さわやかな色の春はちみつ。主な蜜源はナノハナやハゼノキで、優しく上品な甘みと濃厚で豊かな香りが特徴です。パンやヨーグルトにつけて、直接味わうのがおすすめ。
深みのある色が目をひく夏はちみつは、カラスザンショウやホルトノキが主な蜜源で、フルーティな酸味と清涼感のある甘さが特徴です。コーヒーや紅茶などにもぴったり。
どちらもやさしい甘さですが、食べ比べてみると味わいの違いにびっくりします。蜜源の花や集めてくれたミツバチを思い浮かべながらだと、その美味しさもひとしおです。
クセのない甘さなので、お料理使いにも便利だと思います。
ぜひ色々と楽しんでみてくださいね!
kosajiのストーリーを感じながら、いろんな人に楽しんでもらいたい。
お話の最後は、近藤さんと古開さんにこれからkosajiのはちみつをどういった方へ届けたいか、どう楽しんでもらいたいかという質問に答えていただきました。
近藤:kosajiの想いや、ストーリーを理解してくださる方にこのはちみつが届くといいなと思います。嬉しいことに今はそういったお客さまが多いので、これからも満足していただけるよう、おいしいはちみつ作りにこだわりながら、パートナーであるミツバチを甘やかしていきたいですね(笑)。つくれるはちみつの量にも限界がありますし、地元商品として地元の味をわかってもらえる人に、どれだけ丁寧に届けられるかを突き詰め続けていくことがこれからの目標だと感じています。ミツバチは半径2kmの範囲を飛びまわり蜜を集めます。このミツバチの特性から、はちみつの味は地域の味となるわけです。各地の味を食べ比べて楽しみながら、kosajiのはちみつで「豊橋の味」を味わってもらえたら嬉しいですね。
古開:地域のイベントにリアカーで出店して、はちみつを手売りする近藤さんをたびたび見かけていた頃から「おもしろいことをやっている人がいるな」と注目していました。Kosajiは本当にいいはちみつなので、売り手としても、ただ商品を置いて売るだけではなく、どんなふうにこだわっていて、こういう想いがあってといったところを知ってもらえるよう、おすすめしたいですね。これからも近藤さんと一緒に、豊橋の魅力をもっともっと伝えていきますよ!
ミツバチがつくる、こだわりのkosajiはちみつ。みたすショップでは「春はちみつ」と「夏はちみつ」の2つの商品の販売できるよう準備中です!近藤さんの想いと小さじ1杯に込められたミツバチの一生を、ぜひ感じながら味わってみてください!