「海の農業:海苔の生産現場を見学した(前編)」 週末は愛菜家 vol.08
今回はアーティストの矢田勝美さんに協力いただき、実家(鈴鹿市)で営まれている海苔漁(海苔養殖)の現場を特別に見学させてもらいました。
おにぎりやお寿司など日々の食生活に溶け込んでいる海苔ですが、どのように生産されているのかは未知の世界。映画やアニメのワンシーンで見かけたことがあるような…そんなおぼろげな記憶があるだけでした。
実際に見学できて、まさに“海の農業”だと実感。今回は前後編に分けて、できるだけ現場の様子をリアルに感じられるよう動画多めでご紹介していきます。
アーティスト矢田勝美さんのこと
岐阜を拠点にアートシーンで大活躍されている矢田さん。
絵と字、そしてインスタレーションなどのアーティスト活動をはじめ、クリエイターとしても膨大なイラストワークや岐阜「ミツバチ食堂」のロゴマーク、「ツバメヤ」のアートワークなどを手がけています。
また、2012年に執筆した「いのちをつなぐ海のものがたり」は今年から高校の教科書に掲載されています。今はちょうど続編の執筆・編集をされているそう。
2020年夏に鳥羽市・海の博物館で行われた企画展「船霊(ふなだま)といのり」も訪問させていただきました。漁師の身を守る船の神様「船霊さま」の展示や、心にズドンとダイレクトに訴えかけてくるような矢田さんの作品を堪能できる展示会でした。
そして今回は、船上写真の提供などで戸高翼さんにも協力いただきました。戸高さんはジャンルにしばられない創作活動やソーシャルグッドの取り組みで躍進中。この日はドキュメンタリーフィルムの撮影に来られていました。
まだ暗いうちから始まる、海苔の摘採(収穫)
取材日は1月中旬。最寄りの近鉄箕田駅に夜到着し、海苔小屋(加工場)の2階で仮眠させていただきました。
深夜2時に起床。
風のないおだやかな日でしたが、それでも身を切るような寒さです。
収穫期の12月〜2月はほとんど休みなしでこの時間に起きているそう。
3ヶ月でなんと250万枚もの「やだのり」を生産されています。
海苔小屋から鈴鹿港まで車で5分ほど。午前2時半、1回目の摘採に出船しました。
養殖筏で網を固定して、そこに海苔を植え付けて育てていくんですね。
矢田家の養殖筏は80枚。そして植え付けは9月ごろ。今回は摘採のほんの1日だけの取材でしたが、実際には陸の農業と同じように時間をかけて日々手入れを行い、海苔を大事に大事に育てているんですね。
現在は弟の泰一(やすかず)さんが家業を継いでいます。
海の漢の立ち姿。ただただかっこいいですね!
海苔漁はお父さんの勇(いさむ)さんが50年ほど前に始めたそうです。
摘採に使うのは、網の巻き取りと海苔のカットが同時にできる特殊な機器。ずっと以前は掃除機のようなもので吸い取っていたそうです。
ムービーで見ると大迫力ですね! こんな雰囲気で摘採されているとは驚きました。
この日は3番海苔の収穫。12月の初海苔からスタートして、8番海苔まで摘採するそう。お茶摘みのシステムにちょっと似ています。
1時間ほどで、船は生海苔で満載に!
港に戻って荷揚げの作業に移ります。
外はまだ真っ暗。
ウインチを使ってトラックに積み込みます。
息の合った作業で次々と積まれていくコンテナ。
生海苔はすぐ海苔小屋に運び込まれ、1日に2回ほど摘採を行っています。
採れたての生海苔。ツヤツヤ感がすごい! 香りもすごいです
午前4時すぎ。2回目の寄港時には空がうっすらと明るくなってきました。
朝ぼらけの海の、幻想的な空気感。ふだんでは見られない光景です。
収穫した生海苔は、海苔小屋の屋外に設置してある円形のプールに運び込まれます。
ここでゆったりと回転させることで、からんだ海苔をほぐしているそうです。
作業は時間との戦い。みなさんキビキビと動かれています。
おいしい海苔を食卓に届けるために、かじかむ寒さの中、極寒の海に毎日出られることを考えると本当に頭が下がりますね。
ちょうどその頃。海苔小屋内では製造機器の稼働チェックに目を光らせている勇さんの姿が・・・
後編では、収穫した生海苔が加工され、私たちがよく知っている板海苔に変わっていく様子や、できたての「やだのり」を炙って試食させていただいた様子などを紹介していこうと思います。お楽しみに♪
船上写真・動画撮影協力:戸高翼
(後編は2月中旬アップの予定です!)