見出し画像

「コミック乱ツインズ」2025年2月号(その一)

 今月の「コミック乱ツインズ」2月号は、表紙が『江戸の不倫は死の香り』と『鬼役』(なんか美女に寄り添われて満更でもない顔をしている矢背様、大丈夫!?)、『江戸の不倫~』は巻頭カラーでもあります。今回は特別読切が『猫じゃ!!』と『すみ・たか姉妹仇討ち』、連載最終回が『そぞろ源内 大江戸さぐり控え帳』『雑兵物語 明日はどっちへ』となります。
 今回も、印象に残った作品を一つずつ取り上げていきたいと思います。


『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)

 というわけですっかり本誌の顔の一つとなった本作ですが、今回はとある長屋での五十代の隠居武士が主人公。普段施術されている同じ長屋の按摩の妻・おさとが三味線師匠に付きまとわれた末に揉め事となったのを仲裁した男ですが、それが縁でおさとと懇ろになるも……

 というわけでまた大変なことになるのですが、今回は巻頭カラーのためか直接的描写は控えめ(その分(?)今回は「かきすて!」が頑張っていた、というのはさておき……)。しかし、主人公が五十代の冴えない男というのが、非常に厭なリアリティがあります。
 これでいつものような結末となったらかなりキツかったところですが、コミカルな方向で落としたのは、まあ正月だからでしょうか。


『猫じゃ!!』(碧也ぴんく)

 猫大好き絵師の歌川国芳の猫バカっぷりを描く読切シリーズ、第三弾の題材は「丸〆猫」。浅草神社の三社様で売られたといういわゆる招き猫ですが、横座りで顔を正面に向けているのが特徴といえます。

 さて、福徳を授けるというその人形の噂を聞いた国芳ですが、初めは「猫ちゃんはそこにいるだけで福徳だろ!!」とか言っていたものの、その人形がすごく可愛いと聞いては黙っていられるはずもなく、三社様まで突撃。意気揚々とどれがいいか選び始めるのですが、しかしこの猫のモデルが、売り子のお婆さんが置き去りにした飼い猫だと知って……

 いかにも江戸っ子らしく(相手を「メェ」と呼ぶ辺りがいい)強面の国芳。そんな彼が猫ちゃんにはメロメロというギャップが楽しい本作ですが、今回はその猫好きというか猫バカっぷりがエスカレート――というか解像度が実に高いのが、同病相憐れむ身としては実に楽しいところです。
(しかしまあ、置き去りにされた猫ちゃんを探して突撃するのはさすがに……)

 もちろん最後は人情ものらしく、そして猫バカものらしく〆て目出度い結末なのも嬉しいところです。


『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)

 浦上宗景の策で毛利家をぶつけられることになった宇喜多家。前回は毛利側の動きが語られ、宇喜多側の出番はありませんでしたが、今回は宇喜多側の動きが描かれます。
 それにしても、力を蓄えてきたといえど宇喜多に比べて毛利は何十倍もの国力を持つ存在。全力で来られたらひとたまりもない相手ですが――忠家が焦りまくる一方で、「勝てません」と断言しつつ冷静な直家の姿が印象に残ります。

 なるほど、あくまでも「全力で来られたら」マズいのであって、戦国時代にあって隣国を攻めるのに全力で来るなどいうのはまずない話。その点を踏まえた直家の態度は納得ですが、しかしそれでも毛利の兵力はあまりにも大きく――というところで久々登場の一人脳内軍議。画面が直家ばかりになるのはどうかなと思っていたら、一人妙なのが居たりするのも(彼の脳内ということを考えると)楽しいのですが――それはさておき、直家「たち」は実に格好良い結論に達することになります。
 さて、それを受けて直家の策は、というところで、以下次号です。


 あまり長い記事はどうかと思いますので、次回に続きます。(全二回)

 前の号のブログ記事はこちら


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集