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あばよ、大団円! 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 最終章』を、できるだけネタバレせずに語る

 2016年の第1期放送開始以来、足掛け9年を数えることになった武侠人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』も、いよいよ最終章が公開されました。第1期からずっと楽しんできた身としては、もちろん劇場で観てきましたが、なるほど「あばよ、大団円!」のキャッチコピー通りの内容でありました。

 というわけで、以下、内容の詳細にはできるだけ触れないようにしつつ、第4期の内容について思い切りネタばらししつつ紹介したいと思います。というのも、本作は思い切り第4期の続きの内容――むしろ超拡大版の第13話とでもいうべき内容なのですから。

ちなみに第4期の第12話の紹介記事はこちら。

 父・阿爾貝盧法の誘いで魔界に向かい、次々と強敵を倒しながら魔族として覚醒した末に、繭の中で眠りについた浪巫謠。一方、禍世螟蝗の懐に飛び込んで魔王城深くに足を踏み入れた凜雪鴉は、自分の魂が魔王・阿契努斯の切り離された一部であると知ることになります。そして地上で最後の神誨魔械・芙蓉慧刀を発見した殤不患は、手元の神誨魔械を全て護印師たちに預けると、魔界へ――そこで凜雪鴉、裂魔弦とともに、魔神と化した刑亥と激突、死闘の果てに打ち破るのでした。

 その頃、阿契努斯と結んだ禍世螟蝗=西幽皇帝は、娘である嘲風を唆して神蝗盟の法師・葬心嬌に仕立て上げ、その一方で阿爾貝盧法は、浪巫謠を魔王城の動力炉のエネルギー源に利用。地上では護印師を中心とした東離軍が魔族迎撃の準備を進める中、ついに窮暮之戰が目前に……


 というのが第4期の結末でしたが、最終章は、本当にこの直後からスタートします。
 己の分身(というかこちらが分身)である魔王に一泡吹かせることに燃える凜雪鴉、今なお炉心の中で凍てついた夢を見続ける浪巫謠、その浪巫謠を裂魔弦とともに救い出そうとする殤不患――とメインの三人がそれぞれ動く(動かない)一方で、魔王は窮暮之戰の再来に燃え、阿爾貝盧法は浪巫謠を新たな魔神の誕生に利用せんとし、禍世螟蝗は何を思ってか軍を率いて鬼歿之地の東離軍陣地を訪れ、三人の宿敵たちもそれぞれの思惑を秘めて独自の動きを見せます。
 そしてそこにジョーカーとして投入されるのが嘲風。禍世螟蝗から新たなる術(これがちょっと意外かつユニークな内容)を授かった彼女もまた、これまで以上に浪巫謠への執着心を燃やして魔王城へ足を踏み入れます。

 かくして魔王城を舞台に繰り広げられる大乱戦は、一対一の激突あれば、一対多あるいは多対一の乱戦ありと、バラエティ豊富な見せ場の連続、テーマ曲もウォウウォウ鳴り響きまくりで、大画面で観るのに相応しい内容といえます。特にここで繰り広げられた一対一の戦いは、クオリティもインパクトもこれまでで随一という印象――はたして人形劇であの動きをどうやっているのか!? と今更ながらに驚かされました。
 そんな尋常でないテンションのバトルが連続する一方で、思いもよらぬ泣かせがあるのも心憎い。初登場時を考えると、このキャラクターがこんなに魅せてくるとは全く思いもよらなかったと、バトルとは別の意味で驚かされました。本作の場合、どのような形であれ、基本的に一途なキャラクターは報われる(凜雪鴉周辺以外)印象がありますが、まさかここでも――と唸らされた次第です。

 しかしこれでもまだまだ物語は中途。ついに火蓋が切って落とされた東離・西幽連合軍と魔族たちの全面衝突、さすがに今度ばかりはアイツはもうダメなんではなかろうか、などとこちらの不安も高まる中、物語は思わぬ方向に転がっていき、ついに現れる最後の敵とは……

 やっぱ、詳細を伏せながら語るのは無理だ!

 と投げ出したくなってきましたが、なにはともあれ、終盤までバトルのテンションは高いまま展開する一方で、作中でこれまで語られ、明かされてこなかった謎と秘密はほぼ全て解き明かされ、それぞれの因果因縁にも決着がつくのはお見事というほかありません。
 正直なところ、90分の劇場版ということで駆け足になるのも覚悟していたのですが、エピローグ部分もかなり時間を割いてしっかりと描かれたのは、ファンとしてはただただ感謝です。
(阿爾貝慮法についてはちょっと残念なところもありましたが――あれはもう第4期に語りきったと思うべきかしら)

 その一方で、個人的には主人公の出自にはあまり興味がない――バカ強いキャラが当然バカ強いのは、菊地秀行育ちとしては当たり前なので――こともあり、殤不患についてはここまで描く必要はあったのかな、とは思ったのも事実です。
 とはいえ、本作が己の過去・さらには未来と向き合い、受け入れた上で、今を生きる人々の姿を描く物語でもあったことを思えば、この展開も必要なのでしょう。
(結末自体は大好物ではあるので……)

 なにはともあれ、東離劍遊紀「は」ここに完結しました。祭りの後の寂しさを感じつつも、心から喜びたいと思います。

 にしても、Febriのインタビュアーにも突っ込まれていましたが、凜雪鴉から殤不患(そして殤不患から凜雪鴉)への矢印が大きすぎて、まあ――こちらまで凜雪鴉に幻覚を見せられてるのかと思いましたよ。


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