秋のお江戸で和に浸る 2024 #2 清澄庭園・深川江戸資料館・芭蕉記念館・歌舞伎座 - 華のおんなソロ旅
本日は歌舞伎座で夜の部公演を観劇することになっているが、それまでの時間をどう過ごすか。事前にリサーチをして今回は、江東区深川近辺に行くことにした。
最初に目指した深川江戸資料館の開館は9時半だが、例によってすっかり早起きになり、まだ時間がある。どうしようかと地図を見ていたら、清澄白河駅(きれいな名ですね)の近くにある清澄庭園が目に留まった。回遊式庭園とのこと、これは時間を有効に使えそうだ。
都の管理である清澄庭園(きよすみていえん)は、あの岩崎彌太郎がこの界隈3万坪を取得して造園を始め、隅田川の水を引いた大泉水を中心に築山、周囲には全国から取り寄せた名石を配して完成した。
小雨降る中、入園。入園料は150円だが、敬老週間とのことで60歳以上は無料とのこと。こういうときは喜んでシニアになる私(笑)。
あいにく昨夜の大雨で少々道がぬかるんでおり、足元に注意しながらの回遊だったが、十分堪能した。個人旅行をするようになり、私は水と石が好きなのだと気付いたのだが、まるでそんな私のためにあるような場所ではないか。今度は天気のよい日にぜひ再訪し、ベンチでのんびり大泉水を眺めたいものだ。
開館時間になったので出向いたのが深川江戸資料館。まあなんと、ここは私の好みにぴったりで、めちゃくちゃ楽しかった。地下の常設展示室が江戸時代末の深川の町並みを実物大で再現しているのだが、こういう趣向の大好きな私は、ワクワクして家族連れの子どもたちと一緒になって喜んで見ていた。事前に調べたところでは、こういう場所だとは今一つわからなかったので、もっと宣伝したらよいのにと思う。入口で、子どもが「今日、ここに来るの楽しみだったんだ」と親に話していたのがなんとも微笑ましい休日の光景である。
ちょうどよい時間になったので、お昼は深川めし。食への飽くなき情熱を持つ私、ここで外すはずもない。12時過ぎでは入れないかもと少し早めにめざす場所に着いた。開店まで少し時間があり店の前で待つことになったが、大通りに面していることもあってちょっと恥ずかしかった。目の前のバス停に並んでいるようなフリをして、開店と同時にさりげなく入店。深川めしは深川の漁師たちが名産のアサリなどの貝を使った賄いめしを食べていたところから発祥していて、ぶっかけめし、炊き込みご飯やいまやいろいろとバリエーションがあるようである。
次に向かったのは深川温泉常盤湯。最近評判のよい銭湯で、珍しく男性の湯の方がサウナ、露天風呂など充実しているものの、女湯も狭いながらも湯船も多く、いろいろと楽しめた。蒸し暑い日だったので、これで汗を流してしばしすっきり。
次に出向いたのは江東区芭蕉記念館である。この界隈は「芭蕉のまち」。国内を旅していると各所でお目にかかる松尾芭蕉様。ここでルーツを確認できてよかったです。
歌舞伎座開演の前に一度近くの宿に戻って、いざ出陣。今回は「秀山祭」を謳った月で、中村吉右衛門の功績を称え、夜の部は「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)の「太宰館花渡し」「吉野川」と「勧進帳」が上演される。私のお目当ては「妹背山」の「吉野川」。舞台向かって右側にもう一本設置される「仮花道」を見る機会はめったにない。中央で波がくるくると回る、吉野川をあらわす舞台もぜひ見てみたかった。
あまり上演されることのない「花渡し」のあと、「吉野川」。川を挟んで両家の恋人同士のやるせない様子を描いた後、いよいよ花道から雛鳥(尾上左近)の母、定高(さだか・坂東玉三郎)、仮花道から久我乃助(こがのすけ・市川染五郎)の父、大判事(尾上松緑)が登場し、前方で掛け合いをする。私はちょうど仮花道の左側、大判事の顔が見える席だったが、定高と両方見るのに顔を左右に向けることになるのも珍しい経験だった。
主要の演者はみな素晴らしい。玉三郎の定高は今さら言うまでもなく、松緑の大判事も立派だったが、亡き吉右衛門で観たかった。人気の市川染五郎は若々しく、雛鳥の左近は乙女らしいしぐさがなんともかわいらしくて、初めての役とは思えない。名演に、目にハンカチを当てている観客も多くいた。私はと言えば、そもそもお家のために簡単に子どもの首を差し出すという歌舞伎によくある設定が好きになれないので、その点は醒めてみていた。いつも思うのだが、切腹を始めてお腹に刀を突きさしたら、早く介錯してあげないとつらいことになるよ(笑)。
幕間に3階に走ってめでたい焼を買うのはいつものことだが、この日はなぜかすぐ売り切れなかったようだ。
勧進帳は、(安宅ではなく)「またか」の関と言われるほど、上演回数が多い。私も数回は観ているが、演者によって変るので、それぞれ面白く観ている。
劇評で、幸四郎の弁慶は今一つで、菊之助の富樫が良かったとあった。たしかに幸四郎は少しお疲れ気味のようだ。菊之助は口説もよくて、立役も立派にこなすのだなあ、と感心したが、富樫は座っていることが多いのに、弁慶は動きっぱなし。幸四郎は昼の部でも出ていたから、比べられるのはちょっと酷かなと思った。亡き吉右衛門は弁慶を80歳でやりたいと言っていたそうだが、富樫が好きな私は、吉右衛門で観たかった。ちなみに私が観た最高の富樫は、亡き富十郎である。
今日の舞台では、大向こうさんの声かけがほとんどなかったのはなぜだろうか。あれがないと役者さんたちも少し寂しいのではなかろうかと思った。
明日は、両国国技館で大相撲を観戦します。