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僕の好きなアジア映画86: 手紙と線路と小さな奇跡
『手紙と線路と小さな奇跡』
2021年/韓国/原題:기적/117分
監督:イ・ジャンフン(이장훈)
出演:パク・ジョンミン(박 정민)、イ・ソンミン(이성민)、ユナ(윤아)、イ・スギョン(이수경)
この映画、僕のあまり得意ではない「ファンタジー」という類である。しかしよくあるいかにもファンタジーという部分が目立たない作りなので、そういうのが苦手な人もほとんどリアルに近いものとして捉えることができると思う。
物語がなんとも美しい。物語が何より重要な「ドラマ」とは違って、僕自身映画をみるにあたってはそれほど物語のみに拘泥して見る方ではない。むしろ物語よりも、どう見せるかが重要だと思っている。何も起こらない(に近い)映画の方が好きなものが多い。しかしそんな僕にとってもこの物語には引き込まれた。
途中までおかしいなと、感じることがある。主人公の姉が年を取らないのである。それがどういうことかは「物語」が勝負の本作にとって決してネタバレすべきことではないと思うのでこれ以上触れないが、そのこと自体がこの映画のファンタジーたる所以である。
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一人の青年の自立の物語でもある。精神的に他者への依存や過去に対する罪悪感があるうちはこの映画のファンタジーの部分が作動し、恐らく過去の自分から自立できるとともにそのファンタジーは消失するだろうと、観るものに思わせる。この映画のファンタジーは自立できない主人公のメタファーと言える。
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主人公は非常に物理学の分野で非常に優秀なのだが、自分の道に進もうとしない。また過去の事故への罪悪感にも苛まれている。朴訥な主人公をパク・ジョンミンが好演。
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主人公の才能を信じ、彼を励ますハキハキした彼女役に少女時代ユナ。可愛い。
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そして主人公の無口な父親に名優イ・ソンミン。いつもながら上手い。上手すぎるくらい上手い。
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確かに物語は主人公のもたらした「奇跡」を描いているのだけれど、この映画の重要な部分はその奇跡のみではない。むしろ一人の人間の精神的自立していく過程と、家族や恋人の愛情を描いている。とにかく美しく切ない物語を楽しむべき、愛すべき映画だと思う。
さて韓国語の原題はその「奇跡」という意味。シンプルなタイトルの方が想像が広がって良い場合が多いのだが、これはちょっと省きすぎかもしれない。本作だけは珍しく邦題の方がより良い選択だと思う。しかし日本版ポスターのコピーは、こんな余計なネタバレ必要?
第58回百想芸術大賞映画部門作品賞/監督賞/主演女優賞/助演女優賞、パリ韓国映画祭長編映画作品賞、釜日映画賞助演女優賞、ウディネ極東映画祭観客賞
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