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僕の好きアジア映画37:ブータン 山の教室
『ブータン 山の教室』
2019年/ブータン/原題:Lunana A Yak in the Classroom/110分
監督:パオ・チョニン・ドルジ
出演:シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・へンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム
最初にひねくれた事を書いてしまうと、僕はポスターなどに「感動作」と書いている映画には退いてしまう。なぜなら感動をするかしないかは個人の感じ方次第だから、感動を押し付けないでほしい、と思ってしまう。そしてさらに「文部省選定」などと言われると、もうこれは絶対に見るものか、と思ってしまう。文部省が薦める、「お行儀の良い教条的な映画」という僕の先入観が拒否反応を起こしてしまうから。でもなぜか本作は観てしまった。それは正直なところ映画好きの方の評判が悪くないからだ。
もう一つひねくれた事を書くと、この物語の展開は予想通りだ。おそらく多くの方がこうなるだろうと思った通りに展開する。それでももちろん感動はするのであるが。では一体何に僕は惹かれたかというと。
まずはブータンの景色。ブータンの中でも秘境で、辿り着くことすら容易ではないガサ県のルナナ村が舞台。標高も富士山よりずっと高い位置にある。しかし雪をいただいた山々に囲まれた美しい草原、そしてそこに建てられた素朴な学校が御伽噺の家のようなのだ。
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その地の人々にとって、ヤクは神である。ヤクを大切に飼育し崇めると共に、ヤクは村人の生活を支える糧でもある。だから教室にヤクがいても当たり前。人と獣が共生する世界は現代の日本、そしてブータンの都市部でもあり得ない光景だろう。
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ヤクは神であるから、そのヤクを讃えた歌が村に歌い継がれるのは、自然と共生する生活においては当然のこと。しかしその山村でその歌を歌う若い女性の素朴な美しさは、この映画の魅力の一つだと思う。彼女は教師にヤクの歌を教える。そして燃料にするヤクの糞は乾燥したものを拾うようにとも教えてくれる(笑)。
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こちらが「ヤクに捧げる歌」。
そしてとどめはこの村の小さな女の子。僕、ロリコンでは全くないのだが、この女の子の真っ直ぐな、つぶらな瞳にはちょっと感動すら覚えた。この子の教師に接する時の尊敬に満ちた丁寧で純粋な態度は、傍若無人な日本の子供たち(もちろんみんなではありませんよ)と、つい比べてしまう。こんなに小さいのに人として美しい。天使です。
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この映画が単なる感動作に終わらないのは、物語だけではない映像や景観、登場人物など映画としての魅力を備えているからではないだろうか。生乾きのヤクの糞以外はとても美しい映画です。
アカデミー賞国際長編映画賞 最終ノミネート。
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