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僕の好きなアジア映画77: 若き仕立屋の恋 Long Version
『若き仕立屋の恋 Long Version』
2004年/香港/原題:愛神 手(英:The Hand)/56分
監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)
出演:コン・リー(鞏俐)、チャン・チェン(張震)
ウォン・カーウァイが、スティーヴン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニとともに2001年に製作したオムニバス映画、「愛の神、エロス」の一編として発表した短編「若き仕立屋の恋」のロングバージョン。基本的にここでは主として2010年以降の作品を中心に紹介しているのだけれど、本作は今年再公開されているのでここで取り上げます。残念ながら山形では劇場公開がないようなのでYouTubeでレンタル鑑賞しました。
チャン・チェン扮する若い仕立て屋が、コン・リー演じる高級娼婦に憧れ、採寸をしたりお使いとして彼女に関わる中で、彼女の「手」で慰められます。そして「良い仕立て屋になるには、たくさんの女性の体に触れなさい」なんて言われます。彼が仕立て屋として成長していくのに反して、高級娼婦は徐々に落ちぶれていき、愛人にも捨てられ、経済的にも困窮して安宿で生活をせざるを得なくなります。そして体を売ることで食い繋ぐような窮状に陥ります。そして最後は病魔にも襲われ寝たきりのような状態に。それでも彼女を忘れられない仕立て屋は、彼女に手を差し伸べ、そして最後はまた彼女の「手」に包まれるのです。
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ウォン・カーウァイとしては、控えめな描写ながらエロチックな内容で(愛の神、エロスの一編ですから)わかりやすいドラマです。しかし構図やカットの美しさ、音楽や美術の効果はさすがウォン・カーウァイというべきです。中国圏の世界的俳優二人が主演。コン・リーが朽ちていく高級ホステスを抑えた演技ながら妖艶に演じ、チャン・チェンが狂おしい恋に落ちる仕立て屋を実直に演じています。一度観ている映画なのにあまりよく覚えていませんでしたが、美しい映画でした。
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しかし例によって「邦題」には納得がいきません。原題は「愛神 手」。これがこの映画の内容を最も的確に表していると思います。まあ確かに「若い仕立屋が恋をしている」ことに間違いはないのですが、これではちょと違います。これはエロチックな「手」の映画、「触る」ことの映画なのだと思うのです。
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