論理的思考が苦手な人が、論理的な文章を書けるようになる方法
読まれる文章には、理由がある。
その謎を、きめ細やかに解説してくれる一冊の本と出会いました。
今回ご紹介するのは、『20歳の自分に読ませたい文章講義』。
文章を書くことを通じて誰かに良い影響を与えたい、喜んでもらいたい。そんな方に向けてこの本をご紹介したいです。
伝わる文章の仕組み、実践方法を、著書の内容から3つに絞ってご紹介。
さぁ、講義開始です。
文章の土台は「論理」である
つっかえたり読み直す必要のない文章は、リズムが良い。それは読者にとって理解しやすい文章の証です。
理解しやすい文章の共通点を「論理が成り立っているから」と、構造を説明している著者。
リズムが良い文章とは、単に綺麗な言葉や繊細な表現が使われているだけでは成り立ちません。表現の枝葉にこだわることで、より鮮明に内容をイメージできるのは確かです。ですが主語と述語が繋がっていないような、いわゆる論理が破綻している文章だったら......。
「理解できない」「よくわからない」と大半の方は読むのを止めてしまいますよね。
文章は論理が成り立っていることが大前提。読者が目で追う一行一行に明確な意味を持たせることで、結果として論路的な文章が完成するのです。
そうはいっても論理的って難しそうですよね。ご安心ください。著書は、「そもそも論理とは何か? 」の解説からはじめてくれます。
一度読むだけで、すっと理解できる「倫理的な文章」の構造をひとつひとつ紐解いていきましょう。
論理とは・・・
「論」=主張
「理」=理由
著書では、“主張”することに“理由”があるから「論理的」になると説明しています。
☆ハンバーグが美味しかった!(主張)
★お母さんの手作りだったから(理由)
☆友達と遊んで楽しかった!(主張)
★自転車で隣町まで冒険に出かけたから(理由)
主張だけ文章、理由だけの文章では、成り立たないことが想像つきますね。
この構成は、マトリョーシカをイメージするとさらにわかりやすくなります。
①大マトリョーシカ(主張)・・・文章を通じて訴えたい主張
②中マトリョーシカ(理由)・・・主張を訴える理由
③小マトリョーシカ(事実)・・・理由を補強する客観的事実
具体的な文章を例に見てみましょう。
①東京オリンピクで〇〇選手はメダル獲得をするだろう(主張)
②今シーズンは負けなし。世界大会で金メダルも獲得しているからだ(理由)
③さらに2位との差を10点以上離し世界新記録を叩き出している(事実)
「①主張」の人形を開けると「②理由」の人形が入っており、さらに中には「③客観的事実」の人形が補足説明の役割を果たしてくれる。
マトリョーシカ3構造の連携プレーが成り立ってこそ、論路的な文章なのです。
記事を読んで旅行に行きたくなった!パンケーキを食べたくなった!と、読者の行動に変化をもたらすためには、著者の「主張」とそれに伴う「理由と「事実」が明確でなければなりません。
文章とは、人を動かすための手段。
記事を読み終えたあと、読者がどんなアクションを起こしてくれたら嬉しいだろう......?想像し狙いを定めたら、あとはマトリョーシカの構成に沿って組み立てれば完成です。
これが、論理的な文章の書き方です。
文章は引き算。書かない内容を決める
いざ書こうとすると書けない理由。
それは書きたい内容が「ありすぎて選べない」から。
著書では「高校時代のエピソード」を紹介する事例を出して説明しています。
高校時代の思い出といえば、「体育祭」「文化祭」「長距離走」「部活」・・・
と、代表的なイベントだけでもこんなにあがってきますよね。できればどれも書きたい!でも3年間の思い出を全て書くにはキリがありません。
ここで大事なのが「書かないエピソードを決める」ことです。
部活のことを書かなかったらどうなるかな?あの友達との出会いを抜いたらどうなるだろう?と削るエピソードの選定をしていきます。
多くの情報から「引き算」をすることで、自分が最も伝えたい内容や価値観を、浮き彫りにさせることができるのです。
書けなくなったときは、素材は溢れるほどあることを思い出しましょう。欲張りは禁物です。
編集はハサミを持つこと
「編集」と聞いてイメージしやすい仕事のひとつが、映画制作ではないでしょうか。
膨大な時間をかけてやっと撮り終えたシーンも、いざ映画が公開されたら監督にばっさりカットされていた......なんて俳優の笑い話はよくメディアでも見かけますよね。
監督が訴えたいテーマに沿った物語の流れにするため、撮影したシーンをカットしてつなぎ合わせていくのが編集の役割です。ほんの数秒のさりげないシーンにも意図があり、緻密に構成が組まれている映画。
実は文章も、映画作成と同じように編集作業が必要です。とはいえ、丹精込めて書いた文章......。切り取る部分がわからない、切り取りたくない本音も理解できます。
そんなときは、疑問を持って読み返してみてください。この一文にどのような意図があるのか。伝えたいテーマに沿っているのか。問い続けることで、カットすべき余分な文章を見抜くことができます。
さらに大事な編集の視点。それは、“もったいない”と情に流されないことことです。
読者は書き手の苦労を評価するのではなく、作品の質を評価します。どれだけ苦労して書いた文章も、読者に伝わらなければ意味がありません。
膨大な時間をかけた文章でも、読み返したときに主題にあっていないと感じれば迷わずカットしましょう。
ハサミを入れることも編集力に欠かせない要素のひとつなのです。
文章とは、誰にでも使える道具。しかし使いこなすためには、論理的な文章構成や素材を引き算する考え方、ハサミを入れる編集視点が必要なのです。
発信するからには、相手に届けたい。そんな人の味方になってくれるノウハウが詰まった一冊でした。