2023年、たくさん膝においた本の話
こんにちは、ペパボCS-Opsの@misaton です。
最近はもっぱらスレッズにおります(https://www.threads.net/@misaton__)
突然ですが、自分は本を読むスピードがそんなに早くありません。文章に目を通している時間より、内容を消化したり、触発されて考えたりしたことをメモったり、ノートに図を書いたりしている時間のほうが長いことも多いです。当然その間、本はぱかっと開いて伏せているので、人から本を借りるのは気が引けるタイプです(無意識なので・・・)。
あと上記の理由から基本的に紙派です。
話がそれました。その中でも、今年これはさすがにたくさん膝においたなという本(膝本)を紹介します。
辻村深月さんのいろんな人の「過去」についての短編集。
特定の切り出し方をすると「過去」はホラーコンテンツになると思っているのですが、その文脈において至高の一冊です。もしこの本と、その読書体験を気に入ったら、もう一冊のおすすめは、クリスティーの「春にして君を離れ」です。他に似ている本を知っている人がいたら、ぜひ教えてください。
社会学者 岸政彦さんと柴崎友香の共著。大阪に来た人と、大阪を出た人の、大阪で過ぎた時間と人生についてのエッセイ。関西を移動する機会があって、その時も読んでいたのですが、新幹線のホームにある大きな駅名の看板を見て、私は「新大阪」と「大阪」の違いもわかってないなと思ったことを思い出しました。
同じく岸政彦さんのベストセラー。
社会学者の著者が、学術的な観点からは分析も解釈もできないことをできるだけ集めて記した・・・なんだろう。これ、読んでいるときは静かに感動したり、呆然としたりする瞬間が何度もあるのですが、人にどうしてもうまく説明できない。
でも、「人に説明できる」という時点でなんらかの「理解」「再構築」「提示」をやっているわけだから、内容的には言語化できなくて当然なのかもしれない。この本のよさをとくべつ言語化できないということ自体が、この本が持つ特別な価値かもしれない。
むしろ、この本を読んでいるときに読み手に起きていることって本当に全員違いそう。いろんな人の「『断片的なものの社会学』体験」を聞きたい。今のところ二人に読んでもらって、その読書体験を聞いたけど、本人も忘れていたような人生の1シーンについて、どう思ったか、なんで覚えてるのか、今はそれをどう感じるのか・・・など話が尽きず、とてもよい体験になりました。この記事を読んだ誰かも、読んでくれたら、ぜひその体験を教えてください。
品田遊(;ダ・ヴィンチ・恐山)さんの日記本。noteで毎日更新される日記を数年間購読していて、紙の本で手元に残せるのが嬉しすぎる。文章がめちゃくちゃいいので毎日読めて嬉しい日々です。単純に文章のうまさや読んでいるあいだの個人的な体験のよさ(面白い、はっとする、納得する、あるある、と感じるなど)もあるけど、読みつづけると日常生活に著者の視点が多少定着して、「いいな」と思っていることに「ちょっと近づける(気がする)」が大きい気がします。初めて他人の日記を3年も読んでいるけど、こんな特異なインプットが成立していることじたいありがたすぎる。
書き終わって文章を見たら、他の振り返りと比べて明らかに「〜すぎる」が多いけど、好きなのでしょうがないですね。ちなみに、「Tシャツ水戸黄門」のメインのライターさんでもあります。
日記本が続きます。
柚木麻子さんの日記本。「とりあえずお湯わかせ」は生活の停滞(家にいるけど何も手につかない・・・時)を脱するとっかかりを掴むための、家訓のようなもの、とのこと。SNSやインターネットの記事、口コミの山に埋もれてしまって「本の購入失敗したくない」期に入ってしまっていた自分が、パラパラめくって購入を即決できた本で、直感どおり素晴らしい日記帳でした(失敗したくない期も脱出できた)。
持論だけど、元気がないときに元気な音楽を聴くともっと元気がなくなる。文章も同じで、「なんかうまくやれない」というとき(週の半分くらいはそう)に「こうすればいいよ!」みたいな正論はきつい。がっつり思索を促すような内容もつらい。BUT 日記本があると週半ばの自分がまろやかになれます。ソフトカバーで持ち心地もよいです。ぜひ。
心理学者/神経学者である著者(ステファン・ポージェス)によって提唱されるポリヴェーガル理論の入門書。主体が「安全である」と感じること(または感じないこと)が人の社会行動/生理学的反応にどのような影響を与えるのか、なぜ与えるのか、どうしてそんな仕組みになっていると考えられるのか・・・が、神経回路の進化の歴史を下りながら明らかにされるくだりが前半部分にあるのですが、特にこのあたりがめちゃくちゃ面白いです。NHKスペシャルの進化論コンテンツが好きだった人(好きな人)にはハマる内容だと思います。
この本の良さ、内容はうまく伝えられないので省略します。
でも、何回も開いて読んでいるし、たくさん膝においています。「こうなりたい」が詰まっているので「今週の自分は最悪だった」と思うときにも、「なんでこんな事になったんだ」と思うときにも開いています。来年読んだ時に、「ちょっと近づいてるとこもあるやん」と思えたらいいなあと思っています。
膝本の紹介は以上になります!
読んでいただきありがとうございました。
ちょいとでも気になる本があったら軽率にポチっていただき、読んでた本があったら気軽におしゃべりしたいな〜と願うばかりです。
最後に、こちらは🎄2023 ペパボCSアドベントカレンダーに寄せて書きました。明日以降も更新をお楽しみに🎅
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