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気候変動と脱炭素ビジネス

 「気候変動」や「脱炭素ビジネス」は、私たちの未来にとって避けては通れない課題です。しかし、これまでに起こってきた気候変動の背景や、その影響がどのように現在のビジネスに関わっているかを、十分に理解している人は少ないかもしれません。

 ここでは、産業革命から現代に至るエネルギーの変遷と、それに伴う環境問題の進行、そして現在の脱炭素に向けた国際的な取り組みやビジネスへの影響について詳しく見ていきます!


1. 気候変動の歴史的背景:エネルギー革命と人類の選択

産業革命以前のエネルギー使用

 人類の歴史において、エネルギー源は主に木材や動物の力、水力など自然に依存していました。これらのエネルギーは、限られた範囲で利用され、環境に対して大きな影響を及ぼすことはありませんでした。しかし、18世紀の産業革命によって、石炭が主なエネルギー源として採用されると、社会全体が大きく変わり始めました。

 石炭の利用は、蒸気機関の発明によって工業の発展を促進し、鉄道や船舶による物流が一気に拡大しました。これにより、石炭は世界中のエネルギー需要を満たすための主力となり、産業革命後の社会経済を根底から支える存在となりました。しかし、石炭の燃焼によって排出される二酸化炭素(CO2)が、大気中に蓄積されることにより、地球の気候に影響を与え始めたのです。

石油の登場とエネルギー革命

 19世紀後半にアメリカで石油が採掘されると、次なるエネルギー革命が起こりました。1859年、ペンシルベニア州で初めて商業的な石油採掘が成功し、その後、石油が急速に世界中で利用されるようになりました。石油は、石炭に比べてより高効率で取り扱いやすく、燃料としての適性が高いため、自動車や飛行機といった新しい交通手段の発展にも寄与しました。これによって、石油はエネルギーの主力となり、20世紀の「石油の時代」が到来しました。

 ロックフェラーによるスタンダード・オイル社の設立により、石油産業はグローバルに拡大し、経済活動を支える基盤となりました。しかし、この石油もまた大量のCO2を排出し、環境への影響はますます大きくなっていきました。


2. 環境問題の意識の高まりと気候変動への対応

20世紀初頭:成長と危機の兆し

 20世紀前半、石炭や石油を使用したエネルギーは経済成長を支え続けましたが、同時にその負の側面も顕在化してきました。特に1970年代に入ると、環境汚染や資源枯渇の問題が深刻化し、気候変動に対する意識が世界中で高まりました。この時期、アメリカでは環境保護運動が活発化し、政府や企業も環境問題に対応する必要性を強く認識し始めました。

 1970年代のオイルショックは、石油への過度な依存が引き起こす経済的リスクを示す出来事となり、再生可能エネルギーの必要性が少しずつ認識され始めました。これにより、太陽光や風力といった代替エネルギーの研究開発が進められるようになりましたが、化石燃料が経済を支える主力である状況は変わりませんでした。

IPCCの設立と科学的アプローチ

 気候変動の問題に対して、科学的な視点から対応するため、1988年に国連によって「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が設立されました。IPCCは世界中の科学者や専門家を集め、気候変動の原因や影響についての調査を行い、その結果を各国政府に報告しています。

 1990年に発表された第1次報告書では、地球が温暖化しているという確固たる証拠が示されましたが、当初はその原因が自然の気候変動なのか、人類の活動によるものなのかは明確ではありませんでした。しかし、2001年の第3次報告書では、「人類の活動が地球温暖化の主な原因である」という明確な結論が示されました。これにより、CO2排出量の削減が世界的な課題として浮上し、国際社会は脱炭素への取り組みを加速させていくことになりました。


3. パリ協定:地球規模での脱炭素への取り組み

2015年のパリ協定の意義

 2015年、パリで開催された気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)において、歴史的な「パリ協定」が採択されました。この協定は、CO2排出量を削減し、地球温暖化を防ぐための国際的な枠組みを提供するものです。具体的には、地球の平均気温上昇を産業革命前と比較して「2度未満」に抑えること、さらに1.5度未満に抑える努力を求めることが大きな目標として掲げられました。

 パリ協定は、これまでの気候変動に関する合意とは異なり、参加する国々が自主的にCO2排出削減目標を設定し、それを5年ごとに報告する仕組みを導入しています。この仕組みによって、各国は国際社会に対して責任を持ち、進捗を報告することで、気候変動への取り組みを強化しています。

アメリカと中国の動き

 特に注目すべきは、世界最大のCO2排出国であるアメリカと中国がともにパリ協定に署名したことです。両国は、経済規模が大きく、エネルギー消費量も莫大であるため、彼らの協力なしには気候変動対策の効果を最大化することはできません。この協定によって、アメリカや中国をはじめとする多くの国がCO2排出削減に本格的に取り組む姿勢を示しました。

 しかし、その後、アメリカはトランプ政権下で一時的にパリ協定から離脱し、世界中に大きなショックを与えました。脱炭素の動きが停滞する懸念が広がりましたが、2021年にバイデン政権が発足すると、すぐにアメリカはパリ協定に復帰し、国際的な協力体制が再び整いました。


4. クリーンエネルギーとビジネスの未来:再生可能エネルギーへのシフト

再生可能エネルギーの急速な成長

 気候変動に対応するために、石炭や石油などの化石燃料に依存しない新しいエネルギー源が求められています。特に、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーは、クリーンなエネルギーとして大きな注目を集めています。

 その中で、アメリカの電力会社「ネクステラ・エナジー」は、再生可能エネルギー分野で成功を収めた代表的な企業の一つです。フロリダ州で設立された小さな電力会社であったネクステラは、風力発電と太陽光発電に

 早期に投資し、現在ではアメリカ国内最大の再生可能エネルギー供給者となっています。特に、コロナ禍で石油需要が減少した際、エクソンモービルを一時的に株価で上回るなど、再生可能エネルギーの可能性を示しました。

ヨーロッパの炭素税と排出量取引の影響

 ヨーロッパでは、気候変動対策の一環として「炭素税」が導入されています。これは、CO2を大量に排出する企業に対して税金を課すもので、CO2排出削減のインセンティブを提供するものです。さらに、EUでは「排出量取引」という仕組みも導入されており、CO2排出量が削減できた企業が、その排出削減量を他の企業に売却することができます。これにより、再生可能エネルギーを利用する企業が経済的に有利な立場に立つことが可能になります。


5. ESG投資と投資家の影響力

投資家の新たな視点:ESG投資

 環境問題に対する意識の高まりは、企業経営だけでなく、投資家の行動にも大きな影響を与えています。特に、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した企業への投資が「ESG投資」として注目されています。ESG投資は、企業が環境に対する責任を果たしながらも、持続可能な成長を遂げることを目指す新しい投資の形です。

 世界最大の投資会社ブラックロックは、環境に悪影響を与える企業には投資しないという方針を公式に発表し、ESG投資の重要性を世界中に広めています。また、こうした投資家の行動は、企業にとっても無視できない圧力となり、環境に配慮した経営戦略を強化する必要性を高めています。

ダイベストメントの影響

 一方で、環境に悪影響を与える企業から資金を引き上げる「ダイベストメント」も加速しています。ダイベストメントは、投資家が環境に悪い企業を排除することで、企業に対して変革を迫る有力な手段です。この動きは世界中で広がり、企業が環境問題に取り組まない限り、資金調達や成長の機会を失う可能性が高まっています。

ダイベストメント(Divestment)とは、環境や社会に悪影響を及ぼす企業や産業(SDGsなどの実現と逆行する取り組みを行う企業や産業)から資金を引き上げることを指します。
 具体的には、石炭や石油などの化石燃料産業、または環境保護基準を満たさない企業への資金提供をやめる動きが代表例です。ダイベストメントは、こうした企業に対して経済的な圧力をかけ、持続可能で環境に優しいビジネスへの転換を促す手段として広まっています。

https://www.asahi.com/sdgs/article/14586316

まとめ: 脱炭素社会への道筋

 気候変動への対応は、これからのビジネスにおいて避けては通れない課題です。CO2を大量に排出する企業は、今後厳しい規制や税負担に直面する一方で、再生可能エネルギーを活用する企業は成長のチャンスを迎えています。国際社会や投資家が一体となって、持続可能な未来に向けた取り組みを進める中で、私たち一人ひとりもこの流れに対応していくことが重要です。

 これからのビジネスは、環境に配慮したクリーンな技術や持続可能なモデルを取り入れ、脱炭素社会への移行を進めることが成功の鍵となります。持続可能な未来を目指し、個人、企業、政府が共に力を合わせ、脱炭素時代のビジネスを切り開いていく必要があります。

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