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【雑学】似た国の旗が示す歴史の共通点

世界の国旗が似る理由:歴史と文化が作るデザインの共通点

 国旗はその国や地域の歴史、文化、そしてアイデンティティを象徴する重要なシンボルです。しかし、世界を見渡してみると、似た配色やデザインを持つ国旗が多く存在します。その背景には、地域ごとの歴史的つながりや文化的影響が深く関わっています。

 本記事では、アフリカ、北欧、東欧、中東、中南米など、特に特徴的な国旗の共通点とその背景について詳しく解説します。



アフリカの国旗に共通する「独立の色」

 アフリカの多くの国旗が緑、黄、赤の配色を持つ理由は、この組み合わせが「独立の色」として知られており、特にエチオピアの国旗に由来しています。エチオピアは、19世紀後半の帝国主義の波がアフリカ全土を席巻した中、ほぼ独立を維持した特異な存在です。

エチオピアの特別な歴史と影響力

エチオピアは植民地支配をほとんど受けなかったアフリカ唯一の国家です。この独立の象徴としての地位から、エチオピアはアフリカ全土の独立運動における希望の灯火となり、エチオピア国旗の配色がアフリカ諸国の国旗に採用されるようになりました。

  • 1896年:アドワの戦い
    エチオピアはイタリアとの戦争に勝利し、列強国に対して独立を守りました。この戦いはアフリカ諸国にとって誇りとなり、独立運動の象徴となります。

  • 1936–1941年:イタリアの一時的支配
    イタリア帝国の毒ガス攻撃や航空機の使用により、エチオピアは一時的に植民地支配を受けましたが、わずか5年後に独立を回復しました。この短期間の支配は、エチオピアの歴史において極めて例外的な出来事とされています。

 エチオピアの歴史的な独立の象徴性が、他のアフリカ諸国にとって模範となり、多くの国がエチオピア国旗の配色を採用しました。この結果、アフリカ諸国の国旗が似通う現象が生じたのです。


世界の国旗が似る理由と地域別の特徴

1. 北欧:スカンジナビアクロスの国旗

北欧の国旗に共通する特徴は、左寄りに配置された十字模様で、これを「スカンジナビアクロス」と呼びます。

  • 十字模様の起源
    この模様は中世ヨーロッパの十字軍遠征に由来します。当時、キリスト教国家の兵士たちは、自分たちが同じ側で戦う仲間であることを示すため、キリスト教の十字を旗に取り入れました。

  • デンマーク国旗:ダンネブロ
    十字模様を取り入れた最初の国旗はデンマークの「ダンネブロ」であり、これが後に北欧諸国全体に影響を与えました。

  • 歴史的な背景
    北欧三国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)は、政治的・王族間の結びつきが強く、1397年に成立した「カルマル同盟」によって統一されたことがあります。この歴史的な結束が、スカンジナビアクロスを共有する国旗デザインの誕生につながりました。


2. 東欧:汎スラブ色(白・青・赤)

東欧や南欧で見られる白、青、赤の配色は「汎スラブ色」として知られ、スラブ民族の結束を象徴しています。

  • スラブ民族の歴史
    スラブ民族はインド・ヨーロッパ語族に属し、かつてビスワ川やドニエプル川周辺で狩猟採集を行っていました。5世紀以降の民族移動によって、現在のロシア、ウクライナ、ポーランド、クロアチアなどに分布するようになりました。

  • 1848年:スラブ民族会議
    この会議では、スラブ民族の団結を象徴する色として、ロシア帝国の国旗の白、青、赤を基に汎スラブ色が採用されました。この結果、スラブ系諸国の国旗が似通うことになりました。


3. 中東:汎アラブ色(赤・白・黒・緑)

中東諸国の赤、白、黒、緑の配色は「汎アラブ色」と呼ばれ、アラブ民族の団結と解放を象徴しています。

  • 歴史的背景
    アラブ人はかつてオスマン帝国の支配を受けていましたが、第一次世界大戦でオスマン帝国が崩壊した際に独立を目指しました。その際、アラブ反乱の旗として汎アラブ色が採用されました。

  • 色の象徴性
    各色はアラブ民族やイスラム教の歴史と結びついています。

    • 白と黒:ムハンマドの旗の色

    • 緑:北アフリカのイスラム王朝が採用

    • 赤:オスマン帝国で使われた色

このように、アラブ民族の歴史が国旗デザインに反映され、似た配色の国旗が広まりました。


4. 中南米:中央アメリカ連邦と大コロンビア共和国

中南米の国旗が似ている理由は、植民地時代の歴史と独立運動に起因します。

  • 中央アメリカ連邦
    中央アメリカ地域は、スペインから独立する際に「中央アメリカ連邦」を形成しました。その際の国旗デザイン(青・白・青)が基となり、後に分裂して独立した各国がこのデザインを継承しました。

  • 大コロンビア共和国
    南米のベネズエラ、コロンビア、エクアドルの国旗の配色は、シモン・ボリバルが建国した「大コロンビア共和国」の国旗に由来します。ボリバルの理想である南米の団結を象徴するため、この配色が採用されました。


国旗が語る歴史とアイデンティティ

 国旗のデザインは、単なる装飾ではなく、その国や地域の歴史、文化、政治的なアイデンティティを物語る重要なシンボルです。アフリカの独立運動、北欧の歴史的結束、スラブ民族の団結、中東や中南米の解放運動など、それぞれの背景が色やデザインに凝縮されています。

 これらの国旗を見ることで、各地域がどのような歴史を歩み、どのようなつながりを持っているのかを深く理解することができます。

国旗を通じて、世界の歴史や文化の豊かさを再発見してみませんか?

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