超訳、する前のニーチェ
ニーチェ。それは偉大なる深遠な哲学者である。彼の死後100年以上たったいまでも、彼の魅力が色褪せることはない。
彼の思想はどんな読み方にも耐えうる含蓄を含んでいる。その意味で2010年は画期的な年であった。新たな読み方が創出されたのである。「超訳」である。
これによりニーチェは超訳した。超訳したニーチェは新たなニーチェだ。ニーチェの思想の含蓄はその超訳さえも内包している。そこにはニーチェがいる。あの深遠なる思想家であり、われわれを元気づけてくれるニーチェがいる。
しかしニーチェは別の仮面を持っている。そう、超訳するまえのニーチェである。ニーチェは超訳した。しかし超訳するまえのニーチェもまたニーチェだ。彼はそのとき何者であったであろうか。そしてニーチェの思想とは何だったのだろうか。そして超訳とは。
というわけで今回私は「超訳する前のニーチェ」をみなさんにご紹介することにした。超訳する前のニーチェを存分に味わってもらうために、注釈などはほとんどつけなかった。ただ、言葉の意味をもっと理解したい人のために、順番号のつぎにカッコ付き番号をつけておいた。『超訳 ニーチェの言葉』の番号である。残念ながら私はまだ超訳の意味を完璧に理解しているわけではないので、参照された箇所が超訳された箇所なのかは断定することはできない。しかし、読者のニーチェ理解に資することだけは確かである。難しいと思った方はぜひ書店にでも足を運んで読んでもらいたい。
1(217)
しかし私は愛と希望をもってあなたに切に願う:君の魂に住まう英雄を投げ捨てたりしないでくれ、と。あなたの最も気高い希望を神聖なる状態で保ち続けてくれ、と。
参考文献
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ、白鳥春彦訳『超訳 ニーチェの言葉』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2010年。