13(9)
ところで、本だけでなく人間のどんな行為も、何らかの仕方で、別の行為、決断、思想に影響を及ぼすということ、生じることの全てはこれから生じるであろう全てのものと解きほぐせないほど硬く結びついていること、このことをよく考えてみるなら、人は存在している現実的な不死を、運動の不死を認識することになる。一度動いたものはあらゆる存在するものの総体的な連帯の中にいる。ちょうど昆虫が琥珀の中にいるように。そしてそこに閉じ込められて永遠化されるのである。
14(29)
仕事。ーー仕事は生活の背骨である。
15(30)
互いに黙りあっているのは素晴らしい、
互いに笑い合っているのは、もっと素晴らしいーー
絹のような空地の下で
苔やぶなの木によりかかって
友と気持ちよく高笑いして
そして互いに白い歯をみせている。
16(31)
中途半端な知識ーー外国語をほとんど話せない人は、よく話せる人よりも外国語に喜ぶ。楽しむことは中途半端な知識を持つ者にある。
17(44)
仕事の価値。ーー仕事はものを考えさせないようにする:そこに仕事の最も大きな恵みがある。というのも仕事は、ごくありふれた疑念や不安に襲われるときに、だれかに咎められることなく引きこもることのできる防護施設だからである。
18(67)
舌の虚栄心。ーー人が自分の悪い性質や強欲さを隠そうが、それをあからさまに認めたりしようが、両方とも自分の虚栄心がそうすることで得をしたがっているのである。彼がいかに賢く使い分けているか、誰の前ではその性質を隠し、誰の前では真面目に曝け出しているのか、ひとはよく注意してみるべきだ。
19(75)
友。ーー同情することではなく、喜びとともにあることが、友をつくる。
友の欠如。ーー友がいないのは嫉妬または不遜な態度のせいだと推察される。多くの人に友達がいるのは、ただ嫉妬の要因がないという幸運な状況であるからにすぎない。
20(79)
信頼となれなれしさ。ーー他人とわざと親密になろうとする者はたいてい信頼されているのかどうかの確信が持ててない。信頼されていると自信のある者は、なれなれしさには価値をほとんど認めない。
21(80)
交際と思い上がり。ーー常に功績のある人々のなかで自らの立ち位置を知ると、思い上がりを忘れてゆく;一人でいることは傲慢さを植えつける。若い人は思いあがっている。なぜなら、なんでもないのに多くのことができると示したがっている自分と同じような連中と交際しているからである。
22(95)
罪のない腐敗。ーー公の批判という鋭い息吹が入り込まないあらゆる施設では、罪のない腐敗がきのこのように生えている(つまり例えば学芸団体や元老院には)。
23(100)
攻撃の動機。ーー人が攻撃するのは誰かに苦痛を与えたり、その人を打ち負かしたりするためだけではない。おそらく自分の力を自覚したいためだけのこともある。