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紙の可能性は無限だ - TAKEO PAPER SHOW 2023
心からそう感じた素晴らしい展示でした
本、新聞、チラシ、段ボール、ティッシュ…
紙は本当に身近な素材です。それだけに紙自体の可能性を深く考えることは少ないのではないでしょうか。
TAKEO PAPER SHOW 2023へ行ってきました。
デザインに関わっている人や紙好きの人はご存じだと思いますが、あの紙のメーカー“竹尾”です。
何度か私もこのイベントに伺っていますが、今回はコロナ禍を経て5年ぶりの開催だそうです。(月日が経つのは早い…)
企画・構成は原研哉さん。
さすがのクオリティで本当に行って良かった!と思える満足度の高い展示でした。
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会場構成としては3つのスペースに分かれていました。
1.『笑い』
既存の商品のパッケージの要素を分解してその魅力を紹介するスペース
2.『紙と循環』
紙の材料となる森林、製造・廃棄課程のCO2など、環境をテーマにしたスペース
3.『機能』
13組のクリエイターがタケオの紙を使って考えた新しい発想のプロダクトを紹介するスペース
1のスペースは時間があまりなかったので、さらりと通りすぎてしまったけれど、2.3のスペースはとても興味深く見させてもらいました。
紙と循環
このコーナーでは、森林の伐採・再生の循環や再生紙の活用はもちろんのこと、バージンパルプ(古紙ではない、新たに伐採した木から作ったパルプ)をうまく再生パルプと組み合わせて活用することの重要性の説明が興味深かったです。
パルプは再生するごとに繊維が短くなるとので、製品として使いにくくなっていきます。(多分繊維が絡みにくくなることで強度が下がるということだと思います)その使いにくくなった再生パルプにバージンパルプを一定量混ぜ合わせることで紙としてのクオリティを確保するという考えらしいです。
そういった考えがあることは全然知らなかったので、ただリサイクルすればいいというわけではないということがわかり、とても面白かったです。
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機能
そして、タケオの紙を使った13組のクリエイターのプロダクトデザインのコーナー。
いろいろな提案があり、それぞれクオリティがとても高いなぁと感心しながら拝見しました。そして自分はやはり紙という素材の特性をうまく利用したプロダクトが好きだな、と思いました。
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programmed PAPER | TAKT PROJECT
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あまり意識しないけれど、紙って表裏があって、どちらに反りやすいとかの性質があったりします。
そのちょっと困った性質を利用して、反ることによって容れ物をつくってしまおうという発想。
PASCOという紙の片面だけにUVシルクスクリーン印刷をして、その面が収縮しにくくする。印刷をしていない面は濡らして乾燥をすると収縮するので、その収縮率の差を利用して大きく反らせたとのこと。
これは最終的なアウトプットとしての形がもう少し魅力的だったらな、と少し思ったけれど、発想としてはとても好きでした。
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塗紙 -NURIKAMI- | NEW
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対象に塗ることによって、物体の形に合わせて紙をつくるという発想。
紙って最初はパルプを溶かしてそれを整形するものだから、その作業を直接梱包するものでやってしまおうという発想。
瓶とかそういう固くてつるつるのものに限られると思うけれど、どんな形にも最小限の材料で合わせて、且つ美しくつくることができるのでとてもいいなぁと思いました。
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一枚 | 三澤 遥
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1枚の紙を切るだけ・折るだけで新しい形を作ろうという試み。
とても有機的な形を繊細に作り上げて純粋に発想力とそれを成し遂げる力がすごいな!と思いました。
最終的にできあがっている形状もとても美しかったです。
とても熱意を感じる作品でした。
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ジグザグ梱包紙 | 三井 嶺
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最後に、今の時代だから実現しやすくなってきた発想のこのプロダクトが素晴らしかったです。
3Dスキャナーで梱包する対象を計測して、その形状でくりぬかれたジグザグに折られた段ボールにはめ込むというもの。
最小限の材料で全く動かない梱包が可能になるので、最近問題になっている過剰梱包も解決できそう。
また、一点ものや小ロットにも対応できるとのことで、これはいいなぁ!と思いました。
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紹介は以上になりますが、他にも面白いプロダクトの提案がたくさんありました。興味がある方は書籍が販売されるとのことですので読んでみてくださいね。
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次回のTAKEO PAPER SHOWも楽しみです。
それではまた。