秋の尾道旅。忘れたくない景色に何度も会いにゆく
2泊3日の尾道旅。秋の心地よく揺らめく海風に吹かれながら、晴れた日々を慈しむように歩いた3日間。秋も深まっているというのに、つい目を細めてしまうような強い日差しの中で、海と空と風と路地と街の空気とをしみじみと味わった3日間の記録です。
街と海
ホテルと夕日
しまなみ海道
グルメ
大好きな街の空気に、何度も会いにいく
広島県尾道市。この街は私にとって、ちょっと特別で、でもさりげない日常を送りたくなるような、そんな街。一時はこの街でずっと暮らしていこうと本気で思っていた、けどその選択はしなかった、近くて遠い街。たとえば、片思いをしている人がいて、けどそれを伝える勇気もないままひっそりと影で眺めている、そんな距離感かもしれない。
そんな街に、1年ぶりに足を運んだ。駅の改札を過ぎて目の前に飛び込んでくる海の青さはあのときのまま。ただよう空気感も。ふっと口角があがってしまうような穏やかな景色に、私は何度も救われてきたんだ。
尾道という街がこんなに優しい雰囲気に包まれているのは、街全体の空気感こそが魅力だからだろう。街全体の空気を感じられるからこそ、訪れた人はみんなこの街に心を奪われていくのだと思う。1つの目玉の観光スポットがあって、それを見学して観光は終わり、というのではない、また別の味わい方ができる街だ。
今回も私は飽きずに街を歩き回る。ふっと頬をかすめる金木犀の香りがたまらない。暖かい日差しのなかで一瞬吹く冷たい風が秋を感じさせる。そんな風に、1つ1つの景色を目に焼き付けて、全身で感じながらゆっくりと散策するのが、この街での過ごし方だ。
そう、別に、何もしない。ただこの街にただよう空気感を味わうだけで、私は旅の目的を果たせてしまうような。そんな気持ちにさえなってしまう。
海沿いに座ってパンを食べたり、沈みゆく夕日を意味もなくボーっと眺めたり、木陰に腰かけて本を読んだり。尾道に来ると、私はいつもこうだ。ほかの街でだって、ましてや自分の部屋のなかでさえできるかもしれない過ごし方。それなのに、こういう過ごし方しかしたくない、というように、頑固なまでにのんびりと、誤解をおそれず言うならば、無為な時間を過ごしてしまう。
心地よさがただよう街。何度も歩いている道、何度も見ている景色、何度も食べているもの。”何度”がいくつ積み重なったとしても、私はきっとこの街をかわらずに好きでい続けるんだろうな。