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30歳の記念に、ホテルでひとり読書・内省合宿を。

先日、30歳になった。たった数日で「20代の私」と「30代の私」に変化が起こるわけではないけれど、でもなんだか、「30代の私」に意味づけをしたくなっている。

「30代になった私」は、いまどんな気持ちでいて、どんな30代を過ごしたいと考えているのだろう。少し立ち止まって、ゆっくりとこれからについて思いを馳せる時間を作りたくて。20代を終えて30歳になった私を「20代、お疲れ様」と労わってあげたくて。

私は30歳の記念に、ホテルにこもりひとりで読書・内省合宿をしようと決めた。


ひとり読書・内省合宿の目的

家にいると、いろんな私が垣間見えてくる。仕事をする私、掃除をする私、料理をする私、妻である私、忙しくする私。家にいても読書や内省はできるけれど、「ただの私」に戻ってその時間を過ごすのは難しい。料理の合間に本を読んだり、仕事の前に内省したり。生活とは切り離せことがほとんどだ。

なんかもう、一度「○○の私」から離れたところで、「ただの私」として、誰にも構わず時間を気にせずに読書や内省をしてみたい、と純粋に感たのだった。快適で清潔なホテルにこもり、温かい光に包まれながら、読書や内省をする。たまにベッドに寝転んだりなんかして。寝たい時間に寝るし、おきたい時間に起きる。ひとりだけの丸ごと自由な時間を過ごしたい。

そう思い立ったが吉日、私はひとり読書・内省合宿の妄想をはじめた。

ひとり読書・内省合宿の舞台はどこにしようか。

さて、ひとり読書・内省合宿の舞台はどこにしようか。観光が目的ではないから、いってしまえば行き先はどこだっていい。けど、いつもとは少しだけ違う気分、すなわち旅気分を味わいたい。ホテルにこもって読書や内省をするのが主たる目的だから、あまり遠すぎない場所がいい。はじめて行く場所だと観光したくなりそうだから、何度も足を運んでいる、けど散歩をしたくなるような街がいい。そして、惹かれるホテルがその街にあることが前提だ。

なんて、難しい舞台決め。京都に暮らす私が候補として挙げたのは、奈良・姫路・倉敷・滋賀・敦賀あたり。電車で2~3時間で行けるところばかりで、ほどよく近くて、ほどよく旅気分を味わえるところ。

結局、私は奈良に行き先を決めた。「ノボテル奈良」の部屋の内装が気に入って、さらには隣に蔦屋書店があったので、読書合宿に最適ではないか、と思い立ったのだ。蔦屋書店でその日の気分で読みたい本を決める。仕事のためだとか勉強のためだとかではなく、ただその時間を満たすためだけの読書をしたい。

まずは、その時読みたい本を選ぶ

奈良駅に着いてチェックインするまえに、蔦屋書店で本選びを楽しむことにした。あらかじめ読みたい本を選んでおくのもいいなぁと思ったんだけれど、気分というものはすぐ変わるもので。まさに「その日」の気分で本を選びたかったのだ。

奈良の蔦屋書店は初めて訪れた。光の入り方が美しい建物に、ジャンルごとに本が並んでいる。小説からエッセイ、自己啓発、絵本。ZINEなども置かれていた。大型書店とは少しだけ違う絶妙なセレクトに私は心踊る。この素敵に並ぶ本のなかから、自由に選んでいいというのだ。なんて贅沢な時間。

「本が好き」というときに、本を読む行為はもちろんだけど、ほとんど本を選ぶ時間も含まれている気がする。この本を読んだらどんな世界が広がっているのだろうか。読む前からワクワクできる、というような。

私が読みたいと直感で選んだのは、4冊。
・「大人」を解放する30歳からの心理学/キム・ヘナム
・わたしの本のある日々/小林聡美
・「ふつうの暮らし」を美学する/青田麻未
・はだかんぼうたち/江國香織

前から読みたかった本というわけではなく、その日に初めて出会った本ばかり。こういう出会いが嬉しいから、私は本屋さんに意味もなく足を運ぶのが好きなんだ。

チェックインまで少し時間があったので近くにあった平城宮跡に行ってみる。車が行き交う大通り沿いに、突然だだっ広い別世界が広がる。

天気がいいから、やっぱり散歩をしたくなる。読書・内省合宿では、ホテルにこもることを目的にしている。だから散歩はあまりしないように、と心がけていたのだけれど、晴れたからそれは仕方なく、散歩に出かけないといけない、と強く思う。だって晴れだから!晴れの日を選んでホテルを予約したのは私なのだけれども。

チェックインしたら、そこからは私だけの時間だ

15時ちょうどにホテルにチェックインをする。今回泊まった「ノボテル奈良」は9月にオープンしたばかり。館内も部屋もピカピカで、外資系らしくパキッとした清潔さがあって、部屋に入った瞬間に私はこの空間を気に入った。

大きな窓のそばに、足をのばせるソファがあって、光は優しいオレンジ色。机もあるから内省もばっちり。我ながらいいホテルを選んだものだと感心した。

ここからは、もう自由だ。本を読む。内省する。本を読む。内省する。の繰り返し。

わざわざホテルに行かなくとも、読書や内省なんて行為は、毎日のように好き好んでしている。だけれど、内省をするぞ、と意気込んで環境を用意してあげると、もっと深い階層まで潜り込める気がする。

日常と距離をとって初めて気づくことがあるものだ。さあ、ここからは内省するためだけの時間だぞ、とのびのびとすることで出てくる思考がある。考えるのに疲れたら、ソファにだらっと座って本を読む。

本を読むのに満足したら、ペンを手に取って机に向かう。その繰り返し。時には小説を読み、時にはエッセイを読み、時には30代のテーマを考える。

私は、本を読んだり内省をしたりする、そのものの時間が好きなのだ、と静かに悟る。オレンジ色のライトに照らされた手元。文字を書いていくことで感情が宿っていく。本を読むことでここじゃないどこかに、小説ならば誰かの暮らしのなかに、旅することができる。

何を読んだか、とか何を内省したか、はもはやどうだっていい。その時間を過ごせた事実だけで私を救ってくれるのだ。

日常に気づきを得るために、非日常に出かける

江國香織さんの小説を読み進めていると、以下のような一節があった。

プレイヤーに、桃はロン・カーターのCDをのせる。スイッチが青く光り、暗すぎる、と桃自身も思った部屋のなかに、ジャズ・ベーシストの弾くバッハが流れた。

はだかんぼうたち/江國香織(p.7)

小説の世界の延長線上を感じていたくて、ロン・カーターの音楽にBGMを変えてみる。ウッドベースの心地よい響きが広がる。うーん、いい時間。

こんな時間を過ごすと、レコードなんかでゆっくりゆっくり一昔前の名曲を流しながら夜の時間を過ごしたいな、という気持ちを抱いていたことを思い出す。

音楽を部屋で流して湯船に浸かりながら遠く流れる音楽を聴いていると、何もしないでボーッとする時間が私には必要だと気づかされる。いつもシャワーで済ませてしまうものだから、それが当たり前になりすぎて気づくことすらなかったこと。

こうやって、非日常にいたとしても、結局思い浮かぶのは日常のことだ。当たり前すぎて気づけないことを、日常と距離を置くことで気づかせる作業。たった1日の非日常を大切にするだけでなく、毎日続いていく日常を大切にしないといけないということを、非日常のなかで思い知るのだった。

夜になると、より静かな時間が流れる。昼はコーヒーお供に読書や内省タイムだったけど、夜はハイボール片手に静かな時間を過ごす。スマホを手の届かない棚に置いておいたので、時間が何時かもわからない。

もちろんSNSは全部アンインストール。こんな時間を過ごすときにはそもそもアンインストールしなくたって自然と見なくなるものだ。なぜ日常ではSNSを見ずにはいられないのだろうか、と不思議に思う。

時間の流れも、世間で飛び交うニュースも分からぬまま、ただ私の周りに流れる空気に身を委ねる。ホテルでのひとりの時間は、そんな心地い空気に包まれる。

自分を満たして、日常に戻る

さて、続くのは日常だ。どれだけ最高の2日間を過ごしたとしても、日常で最高の日々を過ごせないと、意味がない。非日常で考えたこと、感じたことを、どのように日々の暮らしに落とし込めばいいのか。そんなことをうつらうつら考えながら、いまこのnoteを書いている。

自分のことは自分で満たしてあげる。満たせば満たせるほど、毎日の暮らしが彩られていくだろうし、周りの人や物事に対しても優しく穏やかでいられるはず。今回の読書・内省合宿では、その”満たす”のきっかけを作ってくれたように思う。望めばどんな暮らしだってできるのかもしれないと思わせてくれる。好きな時間を好きな時間と認識するきっかけ。そんなものをくれた時間だった。

40歳の次の節目を迎えた時、どんな気持ちでこの日のことを思い出すのだろう。日々叶えたいことをコツコツ叶えて自分を満たしていけば、いい時間だったね、と言えるような30代の日々になっているかもしれない。そうやって、すでに次の節目にぼんやりと思いを馳せるのである。


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「自分の好き」を知るために、いろんな時間の使い方を試している。今回、ひとりでのホテルでの時間を目的にしたホテルステイは初めてだったけれど、想像以上に心地いい豊かな時間が過ごせた。私はいつまでも、私の暮らしを試して楽しんでいきたいなぁと思うのです。

◆過去の暮らしを楽しむための実験


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