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「その翻訳学校は詐欺かもしれないよ」英語が得意なだけでは、翻訳者になれない理由_20110623

私の友達の翻訳者が時々、facebookで詐欺まがいの翻訳学校に関する注意喚起をしています。そこで私も微力ながら、翻訳学校で学んだ経験を共有して、怪しい翻訳学校を見分ける方法をお知らせしたいと思います。友達は翻訳者向けの注意喚起をしていますが、私は翻訳を知らない人向けに書こうと思います。

怪しい翻訳学校の宣伝文句には、以下のような趣旨が含まれます。これをみたら、ほぼ詐欺で間違いありません。

「3ヶ月で翻訳者になれる」

なぜ3ヶ月では翻訳者になれないのか。勉強することが沢山あるからです。翻訳者が勉強して、鍛えておくべきスキルとして「調査能力」「ITスキル」「日本語の文章力」の3つは必須です。こちらについて説明します。

なお以下は、論文や特許の文章を扱う「実務翻訳者」に関する情報を記載しました。映像や文芸作品を翻訳する「翻訳家」「文芸翻訳」「映像翻訳」については、別の情報を参照してください。


調査能力

翻訳者は仕事時間の半分以上を使って「調査」をします。翻訳する文章に関連する背景情報や、用語の知識を習得するためです。医療や特許、法律などに関する文章は、その業界特有の言い回しや用語を含みます。これを間違って訳すと、その翻訳者は業界について分かっていないと見なされ、仕事が来なくなります。最新情報については、通用する用語が定まっていなかったり、知識が新しすぎて何が書いてあるのか分からない場合も多々あります。これらについて正しい情報を自身が理解して、この訳語を使えば大丈夫と納得できるまで、調査します。

また、仕事に余裕のあるときには、調査能力を磨く努力も怠りません。効率よく調査するには、適切なキーワードを使って検索する必要があります。多くの翻訳者は、用語や言い回しに関する情報をストックするために、信頼できる情報源から日英の対訳文章を入手して、その情報をすぐに取り出せるように整理しています。

対訳入手先の例:PMDA 審査報告書の英語版


ITスキル

翻訳学校で学ぶ文系の人が、意外と苦労している分野です。タイプミスを防いだり、用語を一括入力したり、書式(例えば「、」か「,」のどちらを使うか)を整えたりするために、エクセルやワードのマクロが使いこなせると有利です。秀丸という文章の編集に適したアプリケーションを使用する翻訳者もいます。第一線でバリバリやっているひとは、ワードマクロか秀丸の使い手が多いです。

最近は、AIを使った機械翻訳も使われるようになってきました。翻訳業界では2020年頃から「機械翻訳の訳文を校正する」という仕事が発生しています。この仕事では、業務に適したアプリケーション(CATツールと呼ぶことが多いです)を使えることが、仕事を得られる条件になります。


日本語の文章能力

言わずもがな、ですね。「誤字・脱字がない」「文章内で用語やその使用方法が統一されている」「読みやすい」、この3点はできて当たり前です。ただし「読みやすい」を重視して下手に訳文をいじると、それは原文に自分流の解釈を加えた「勝手訳」と呼ばれます。

私は、医療関係の背景知識があったのですが、翻訳の時はこの知識の使い方をしょっちゅう間違っていました。私の訳文は「勝手訳」と採点されることが非常に多かったです。

想像してみてほしいのですが、難解な日本語をつかって書かれた分かりづらい文章があったとします。これを原文の意図を変えずに、分かりやすい日本語に直すことは、3ヶ月勉強しただけで可能になるでしょうか? 翻訳者は、これに近いことを毎日の業務でやっています。


以上、詐欺広告に騙されないよう、最低限、知っておきたい情報でした。

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最後に。本投稿を書こうと類似の記事をみてたら、こちらのブログの記述がとても分かりやすいと思いました。下に挙げた記事以外にも、翻訳者をめざしたいと思ったら、参考になる記事がたくさんあります(バナー広告は、参考にしないでくださいね)。


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ミサフク🧐考え事大好き
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