未来の忘れ物
引き出しの奥に隠れてた 一葉のラブレター
思い出に浸るような歳じゃないし と破り捨てた
今となっては何が書かれていたか 覚えていない
甘酸っぱい記憶だけが ふいに鼻に揺れた
カラカラと回る幻燈機
たくさんの声が重なって聞き取れない
「––––」
あなたの声を見つけた気がした
すぐに誰か達の思い出に混ざっていく
伸ばそうとした手を止め 響(ゆら)ぐ心を覗く
波打つ水面に映る 幼い私と目が合った
ふふふ、あなたは素敵な恋をしているのね
もう、そんな顔しないで
あなたは世界で一番かわいい女の子よ
素直で、優しくて、傷つきやすくて、素敵な女の子
大きくなればもっともっと綺麗になるわ
あなたが驚くほどに、ね
だから自信をもって、告白して
そして振られてきなさい
二十年後に慰めてあげるわ