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家族みんなが笑いだす うちのさつまいもごはん

1歳半の娘が、外で小さなマスコットを失くした。

この小さなマスコットキャラクターを握っていないと、娘は寝てくれない。失くした日の夜、2時間おきに起きては「ないの、どこ」と探して泣いた娘。

丸3日泣きじゃくって家族全員が疲弊した頃、笑顔を取り戻す救世主となったのは、さつまいもご飯だった。私はこの日のさつまいもごはんと、真っ赤な顔で笑った娘の笑顔を一生忘れない。ありがとう、さつまいも!

いも天を揚げると始まるちびまる子ちゃんの世界

いも天の写真なんか撮る暇はない。
残るのは「ごちそうさまでした」の空のお皿だけ。

うちは全員さつまいもが大好き。

衣をたっぷりと付けて、揚げたてをサクッとかぶりつく。中がほくほくっとした熱々のいも天は、手が止まらない。

私がいも天を揚げ始めると、ここはもう、ちびまる子ちゃんの世界

「1個だけ!」というおねだりを覚えた3歳の息子は「もう1個、もう1個」と、いも天を吸い込んでいく。便乗した夫が静かに近づいてきて、何も言わずにそっと手を伸ばす。そう、まるでちびまる子ちゃん父、ひろし

娘も当然、大騒ぎで「ちょーらい!ちょーらい!」となるわけで。私は料理しながら、娘が食べるのを手伝うというマルチタスクに突入する。

案の定、煮魚が仕上がる頃に残ったいも天は、かろうじて4枚。なんとも、あんなにたくさん揚げたのに、各々のお皿にのって食卓に運ばれたのはひとり1枚ずつ。

私の心の中でちびまる子ちゃんが「とほほ、食べなかった私がおバカだったよ」と背中を丸めた。「次からは、一番乗りで熱々を 負けずにたくさん食べてやる」そう、ともぞうの心の俳句を読んだ。

初めての芋ほり大会と「ぼくがつくったさつまいもごはん」

「さつまいもごはんにするの!」

園での初めての芋ほり大会。息子がにんまり顔で持って帰ってきたのは、立派なさつまいも。息子のリクエストは、さつまいもごはんだった。

うちのさつまいもごはんは、さつまいもが甘くなる”ちょっとした魔法”をかける。それが「手塩」だ。

「ぼくがするの!」息子の真剣な顔も可愛いもの。

さつまいもを好きな大きさに切ったら、両手の平に塩をつける。その塩がついた両手で、切ったさつまいもを優しく揉むように塩を馴染ませる。

手で馴染ませるからこそ、塩が満遍なく馴染む。このほんのひと手間で、炊き上がりのさつまいもがぐっと甘くなる。騙されたと思って試して欲しい。

土鍋にお米と分量の水を入れて、塩を少し。うちはお米4合で塩小さじ1。その上から、さつまいもをのせていつも通りに炊く。小さな鼻を高々に「ぼくが掘ったさつまいも」で「ぼくが料理したさつまいもごはん」が完成だ。

こんな簡単な料理で、自分でできることがひとつ増える。そうして、息子の”小さな自信の種”がむくむくと育っていく。

泣き止まなかった娘が笑った

なくしたのはモルカーのポテト

ほかほかのさつまいもごはん。マスコットキャラクターを無くして丸々3日間、昼も泣いて夜中も泣いて不機嫌だった娘が笑った。

ひと口食べて「おいちい」とにっこりした。

この瞬間を、私はこの先ずっと忘れない。歳をとって、よれよれの爺婆になったとき「あのときやっと娘が笑ったよね…」と何度も語らいたい。

結局、娘の泣き腫らした顔に耐えられなくなった夫は、仕事帰りに同じものを買ってきた。そして、元々あったかのようにそっと枕元に置いた。

いつかは離れていくものだから

発熱でふらふら病み上がりの父と母を尻目に
永久に廊下を走る、走る。

夫といつまで一緒にごはんを食べれるかなんて、誰にもわからない。目標はふたりで90歳!だけど、私が先に死ぬかも知れないし、夫が先にいなくなるかもしれない。

今は小さな小さな子どもたち。けれどいつかは家を出て、ひとりでごはんを食べる日が来るだろう。親が、独り立ちした子どもにできることなんて、ほとんどない。

だから今、家族でおいしく笑ってごはんを食べる、この日々を果てしなく愛しく思う。3歳児と1歳児がいると、そんな余裕もなくメチャクチャなのだけど。

いつか離れる日が来たとき、いも天を家族で奪い合った思い出が気持ちを温かくしてくれますように。ボウルから転がり落ちたさつまいもを見て、ただ笑った楽しかった思い出が、心を温かくしてくれますように。

「いつまでもずっと、あなたのことが大好きなんだよ。」

この想いを、子どもたちにも夫にも私の料理で届けたい。
それが私が目指す家庭料理だ。

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【塩だけのさつまいもごはん】
お米4合
さつまいも1本
塩小さじ1
手塩:分量外

【お醤油バターのさつまいもごはん】
お米4合
さつまいも1本
醤油大さじ1
バター1切れ

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