その言葉の行方は #夕陽海彩の呟き
ふとした瞬間に、思う。
いま、ここで感じていることを、
その思いを、景色を感動を、
表す言葉を逃したくないと。
こうしたささやかなエッセイであっても、
それがいつか物語の種になるものであっても、
誰に見せることもなく、ただノートに書くものであっても、
そこに生まれた言葉を残しておきたいと。
でも、心に瞬間浮かんだ言葉は、
忙しさにかまけているうちに、
いつの間にか
砂が指の間から零れ落ちるように
どこへともなくとけてゆく。
書こうと思ったそのときに、
書ける状況にないときの
その、零れ落ちて私の元から流れ去った言葉は、
いったいどこへゆくのだろう。
時間がある時に書こう。
そう思っていても、何故だかもう、
同じものは書けない。
同じものには、ならないのだ。
それでも、
そのとき両手の間から零れてしまった
掬いきれなかった言葉のかけらたちが、
形を変えて、何かになっていればと思う。
その時の思いは、
たとえ書き残すことが叶わなくとも、
なかったものではないのだから。
自分でも気付かないうちに、
物語のかけらになっているのなら
その言葉は
時間をかけて、波間を彷徨った末に
確かに私の元に還ってきているのだろう。