物語があるからRPGは心に残る / 「テイルズオブアライズ」レビュー[PS4]
私がゲームにはまりはじめたきっかけは「テイルズオブジアビス」でした。姉が買ってきた話題のテイルズオブシリーズ最新作は、見事に私をRPGの世界に引きずり込んでくれた大切な作品。今思えば、シリーズ最高作品と言われているような矛盾のないストーリーや感動的な演出など、贅沢なデビュー戦。
そこから私がゲームを買う基準が「RPGであること」になるほど感動した作品で、そこからはテイルズシリーズをほとんどやりつくし、ハードを超えて楽しませてもらいました。
しばらく離れていた期間はあるものの、学生ではなく大人になってからでるシリーズ最新作ということで心躍らせながらプレイしました。
クリアした感想は「テイルズシリーズの新しい一歩」。すこし厳しい意見も含めながらレビューしていきます!
私自身のゲームのポイントが「ストーリー」と「戦闘」を重視しているので、そのあたりはご了承ください。
※以下ストーリーのネタバレもあります
戦闘システム
初めてプレイしたRPGがテイルズシリーズということで、アクションRPG育ちだった私はコマンド戦闘がきつくて仕方ありませんでした。
それほど戦闘でリアルタイムにキャラクターを動かせ、能力値や技ではなく自分のアクションの技量で戦闘できる!というのが大好きだったシリーズ。今回、今までのシリーズから、大きくボタン変更などありましたが、特に気にならず華やかに爽快に進化していました!
テイルズオブアライズの戦闘は、「AG(アーツゲージ)」、「ブーストアタック」、「CP(キュアポイント)」がポイント。
「AG(アーツゲージ)」はよりノンストレスに
「AG(アーツゲージ)」はシリーズではわりとおなじみのTPやMPに代わる行動ゲージ。これの数で行動できる数や種類が変わります。同シリーズですと「テイルズオブベルセリア」や「テイルズオブディスティニー」でも実装されており、大技を使ってもしばらくすれば時間経過で回復するため、雑魚敵でもバンバン技が使える上に、コンボがつながりやすく爽快なイメージがあります。
本作のひとつ前にでたナンバリング作品、「テイルズオブベルセリア」ではAGの回復が遅く、最大値も敵の撃破などでわざわざ戦闘中に増やさないといけなかったので非常にストレスでした。本作は回復も早く、何も考えずにぼこぼこ技も使えてとても快適に戦闘ができるイージーな仕様。
アクションRPGが不得意な方でも、初心者でも気軽に楽しめるなと思いました!
「ブーストアタック」が楽しい!
私は個人的にすごく好きだったブーストアタック!
ゲージが溜まると、お助け要素を含んだキャラクター固有の技を、方向キーで指定されたキャラが発動してくれます(空中の敵を落としたり、足の速い敵を鈍足にしたり!)。使用するとAGが3回復するうえに、戦闘パーティに入っていないキャラクターもアタックができるので「全員で戦っている感」がめちゃくちゃありました!
ストライク技というトドメの一撃も同じ要領で発動でき、こちらも戦闘に参加していないキャラクターも含めた、対応するキャラと呼応するキャラの2人で技を繰り出します。
作業のような戦闘とは真逆の、本当に全員で助け合いながら戦闘している、という感じがして、いい新機能だと思いました!
「CP(キュアポイント)」が戦闘のキー
これ最も賛否両論あるだろうな、と作品序盤でさえ思ってしまうのが「CP(キュアポイント)」。回復に必要なポイントですが、パーティ共通でアイテム消費などでしか回復ができず、その回復アイテムがめちゃくちゃに高い。笑
普通に戦闘をして、勝利したときにもらえるお金だけでは十分に回復アイテムが購入できないのではないかなと思います。合間にサブクエストを挟み、お金を稼がないといけないのですが、こちらのサブクエストについてはストーリーの項目で。
術や技は無制限に出せるようになったので、バランス的に回復のポイントが枯渇する仕様だったと思うのですが、なんせ貧乏なプレイになるので笑
せめて、コンボ数が稼げたら回復するとか、弱点を突くと微回復するといったテクニカル要素の報酬として回復できたらよかったなと思いました。
戦闘総評
このほか、わたしが感じたのは「作戦の指示が細かくできない」。
アイテム使うか否かぐらいしか指示ができなかったので、もっとターゲットを主人公と同じを狙うのかや、雑魚敵から狙って数を減らすのかなどを設定できる今までの作品同様の指示はほしかったなぁと思いました。
しかもボスがやたらと強い!笑
ワンパンでやられそうになるボス敵もいたので、より作戦をちゃんと設定できるようにしてほしかったです。
細かなストレスはなくなり、シンプルな戦闘は初心者にもわかりやすい!
しかし全体的な戦闘システムとしてみると少しテクニカル要素に対する報酬のようなものが物足りず、NPCで動く他キャラクターが割とお荷物になるという仕様でした。戦闘については良ゲーといったところでしょうか…!
グラフィック
グラフィックは今までのシリーズでも随一に綺麗!
特に前述したブーストアタックも大迫力で綺麗だったので、戦闘エフェクトを見るために戦闘しているといってもいいぐらい楽しめました。
戦闘やマップの美しさはもちろん、キャラクターの表情が素晴らしい…。
悲しいけどそれを我慢している表情、怒りを露わに憎しみに溢れる表情、どの表情もすごく繊細。人間って、1つのシンプルな表情であるときは少ないと思いますが、それを表現するのがとても上手でした。
途中で挟まるアニメーションが、「鬼滅の刃」の制作会社として有名な『ufotable』が担当しているので楽しみにしていましたが、OPに比べて挿入アニメーションは特筆するほど綺麗ではなく…!
鬼滅並みの綺麗さにしてしまうと容量的にも難しかったのもあるかと思いますが、全イベントグラフィックでもいいのでは…と思うほど、グラフィックの完成度が高かったです。
発売後に公開されたイントロダクションアニメ。このクオリティの劇中アニメーションであればすごかったでしょうね…!さすがufotable。
ともかく今までのアニメ調の雰囲気を崩しすぎず、次世代ハードの表現力だからこそのグラフィック、本当に素敵でした!次作も楽しみです。
マップ要素について
私が最も残念だなと思ったのは、マップ移動について。
最近のRPGの傾向的にしょうがないとは思うのですが、ワールドマップがなく、ダンジョンとタウンマップを往復するという仕様。ダンジョンも特に広くなく、テレビ画面で収まっている部分にしかいけない。
オープンワールドのRPGと逆行している仕様で、オープンワールドは目に見えているものの先にまだまだ世界が広がっているワクワク感が楽しめます。
今回アライズは、目に見えたところのみを探索する一本道のダンジョンのみで構成。なのでサクサク進むのは進みます。
ただ、全世界を旅するにしてはあまりにも狭すぎる。
今回領土が5つ出てくるのですが、村や街が1~2つずつしか出てこないため、全世界でも400人ぐらいしか人口おらんのか?となってしまうほどマップが狭いです。笑
終盤については、「え、街これだけ?」という場所もでてきます…。
また、その旅してきた場所をワールドマップで見ることもなく、ファストトラベルを駆使して小さなマップ内を探索するため、地形なども全く頭に入らない。
RPGとしての大きなやりがいのひとつ「うおー、私こんないろいろ街とかダンジョンいったのか、頑張ったわぁ」はないなぁ、と思いました。笑
同シリーズ前作「テイルズオブベルセリア」でもワールドマップはなく、ダンジョンと街の往復系の仕様でしたが、大陸を渡るのは船で移動している表現が出たり、その際には世界すべての地図がでて、どのあたりを移動しているのか視覚的にわかりました。
他シリーズでもワールドマップを自由に飛んだり、航海ができる乗り物がでてきて世界を旅している!という感覚があったのですが、今回は皆無だった感じがします。
特に、同じ街に2度行くということがほとんどなかったのに驚きました。
いくらダナが奴隷され続けていた星だとはいえ、それぞれの領土のひとたちの存在はほぼ無視して、ストーリーの都合で街を訪れ、キャラクターたちだけで決めて世界の命運を決めちゃってる感があり、終盤に向けてどんどん「なんかこんな感じでいいのか」感が増えていき…。
例えば「テイルズオブベルセリア」には各領土の中には複数のギルドがあり、国の都合とは別の意思や主張がある。
そういったひとたちを説得したり、時々戦って意思をぶつけあっていく、というプロセスがあって世界にのめりこめる感覚に繋がっていき、より感動するストーリーになる。
そんなストーリーへの没入感がなかったマップの作り・移動で残念でした。
グラフィックの美しさで画面的な没入感はあるので余計に残念…!
ストーリー ※ネタバレ有で長いです
RPGにとっての"いいストーリー"って、ひとによっていろんな形があると思います。なので一概にストーリーを評価するのって難しい。
私にとって「いいストーリー」とは、感情移入ができて終わるのがさみしくなってしまうような物語&制作側がプレイヤーに伝えたかったことが理解できることかなと思います。
結論から言うと、アライズは終盤(主にOP変わって以降)からが、期待外れにもほどがある!というレベルでした。
序盤の感想は、奴隷パート短いので少し感情移入できない感はありましたが、プロローグもかっこよくて重厚感があり、どんな展開になるのかワクワク。
また、出生が謎なキャラが多いのが魅力的。痛覚のない主人公、”茨”という呪いを持ったヒロイン、迫害を受け続けてきた魔法使いのただひとりの末裔などなど。序盤のはやく続きが気になる!という運びは完璧でした。
ただ、序盤から少し感じていたのは、ボス戦がご都合感があること。
基本的に領将(スルド)が待っていて、正面から挑んでいく!って。それがほぼ5人だったので同じパターンの繰り返しに飽きてしまい、わりと3人目ぐらいから面倒な感じになりました。
しかし世界の真相が気になるため進められる!
もう1点序盤で気になったのは、ジルファをあれだけ持ち上げて(操作はできないが戦闘に参加できる、TORの演説シーン並みの演説がある笑、パーティ内の肉親)、リンウェルもジルファの言葉で変わったみたいな表現をしつつ、ジルファがずっと頑張ってきた前の領土でのイベントがメインストーリーでないのか…と思いました。
サブイベントもほとんどクリアしましたが、そういった深いストーリーは見られず。テイルズ自体がキャラクターで売っているところもあり、キャラの可愛さや魅力はわかるのですが、それぞれを突き動かしている信念が見えてこない。
今回はパーティにも敵にも「このキャラいいキャラだったなあ」というキャラクターができず。カワイイとかかっこいいは思ったんですが、そのへんの深堀がなぜなされなかったのが残念でした…。
また、おつかい系のサブクエストばかりで、結構骨が折れました…。討伐してこい、か何かの採集。キャラの愛らしさとか意外な一面は見れるんですが、もっとバックグラウンドに触れるサブクエが欲しかったなぁ。
レネギスでのスルドの支持者に話を聞いて、後付けみたいに「あのひとたちも一人の人だったんだ」って言うだけだったのも、もっと深堀してほしかった!さらに、よく言われていますがヴォルラーンのバックグラウンド見えていなさすぎて、ラストの戦闘も違和感を感じました。
ラストの「元気玉ラスト」も、理由があまりわからず…。奇跡を起こすというのはRPGっぽくて好きな展開です!!
でも、なぜそうなったのか、何も知らないダナで暮らす人たちの純粋な恐怖とか気持ちとかで変えられたのか?メインストーリーだけだと、10にも満たない街の限られた人しか関わっていないのと、マップ移動の件でも話した通りあまり思い入れのない街のひとたちの思いを、勝手に星霊の声にして、倒せたのか?と疑問なラスト。
リンウェルの「星霊の声をきける力」は最終ダンジョンでのちょっとしたイベントで突如わかった力。それをキーにするという。笑
まさかこんなぶちっと終わらなかった、というようなラストだったのが最もクリア後「う~ん」となったところ。
また、主人公のシオンのことが好きで救いたい!という個人的な気持ちで動くのは全然いいんですが、その熱さみたいなのもいちゃいちゃするシーンしか作られていない印象が残りました。
すべては、キャラクターへの愛着が生まれにくかったということが招いているかなと思います。
いろんなメディアが大きく取り上げ、今回は新規参入を狙った作品だからこそ、久々のハッピーエンドなのもよかったんですが、心に訴えかけるものが感じられなかったなぁという印象です。
これは私の個人的な意見ですが、ラストダンジョン前に、レナとダナをひとつにするストーリー挟んだりしてあったら違ったのかなぁ、と。
実際にテュオハリムさんとの話で本編にも出ていた「もとは一つだった世界を本当に一つにする」という話。
あれを「頑張ってやっていくよ」って終わりにするのではなくて、いままでの5つの領土を回って少しずつレネギスのひとたちをダナに送っていき、そこでまた人同士のぶつかりを解消していって、サブキャラやパーティの過去をまた知れる…みたいな展開があればさらに感情移入できたんだろうなと思いました。
40時間弱でクリアしましたが、心に残る作品になるならあと10時間や20時間あってもよかったなぁと思います。
音楽・ゲームシステム等
綾香さんの曲はどちらも素晴らしかったです!戦闘BGMも壮大なものが多く綺麗でした。
謎をすべて残したまま綾香さんのOPが流れてきたら、「ここからさらに面白くなるんだ!」と期待してしまいました(実質そこから10時間ぐらいでクリアできるのではと思えるほどの内容の少なさ…笑)。音楽に期待しすぎた私もいました。笑
「Hallo,again」やっぱりいい曲です。いつもと少し違う悲しげなムービーも好きでした!
システム周りは、ロードも短くとても快適!
敵がめちゃくちゃに強かったりするので、どこでもセーブできるのはありがたかったです。ただ、オートセーブは私は個人的にはRPGとしてはイージーな作りに感じてしまうのでこちらは賛否両論あるかと思います。
全滅して前のセーブポイントからやり直さないといけないっていう仕様が私は好きなので。笑
あとは細かい部分ですが、サブクエストを確認するシステムがかなりわかりにくく、中盤までどこで引き受けたサブクエストを確認できるのかわかりませんでした。笑
こちらはまた改善されるのかなと思います。
最後に
「心の黎明を告げるRPG」。
自分のをつくるものを解き放ち、素直に幸せになろうとする、願いをかなえようとする気持ちを呼び覚ましてくれるようないい言葉だと思います。
25周年作品で、新しい試みがひしひしと伝わってきたアライズでした。戦闘システム、グラフィック。アートディレクターの岩本稔さんはずっとテイルズのキャラデザをしたくて下積みを積まれた、すごい熱意のある方です。
世界で大ヒットしている、海外作品と並ぼうとしているんだなという熱意がすごく伝わってきました。グラフィック、世界観など、今までよりもアートという面でシリーズ内で頭一つ抜けたアライズだと思います。
インタビュー内で話されている「10年後になってもプレイヤーの心の中に生き残って、思い出になるようなキャラクター」。デザインだけの部分ではない、ひとりのキャラクターとして思い出に残るためには、キャラクターの物語がもっと語られてほしいなと思いました。
次のナンバリング作品は、今回のような世界観・アートディレクションで深みのあるストーリーのものができればいいなぁと、やっぱりファンとして楽しみです!
*またスクリーンショット追加します*
▼他のゲームレビュー
作品づくりに使用させていただきます。毎年1作品は制作していきますので、よろしければあたたかく見守ってくださるとうれしいです。作品のオンライン販売もしております。