改めて、今。『アルスラーン戦記』を語る。その5〜アルスラーンとダリューンの「主従愛」はシリーズ完結でさらに感極まる!【後編】
前編から引き続き、もうちょっとアルスラーンとダリューンの主従愛について書きたいので、アウトプットします。
すでにお分かりのことですが、アルスラーンとダリューンも原作16巻でついに命切れます。
蛇王ザッハーク一との戦いで、16翼将のほとんどを失い、ナルサスも失い(ナルサスは別の御仁に討たれるけど・・)最後は蛇王との一騎打ちでダリューンも失ったアルスラーン。
アルスラーン自身も命の全ての力を振り絞り、蛇王ザッハークと相討ち状態、彼も死出の旅路につくことに。
その際「遺言」の一つとして
「ダリューンと一緒の墓に埋めてくれ」
と言い残します。
これに対して「こんなの・・・わがままだ!」みたいな声・意見を読んだりしたのですが、私個人としては
これぞアルスラーンとダリューンの最終系の主従愛の完成形!
と秒で思いました(笑。
>アルスラーンにとっての「絶対的安心感を満たしてくれる存在」こそダリューン
アルスラーンは彼自身も「安心感のある存在」ですが、アルスラーンにとって安心感を満たす存在は「ダリューン」です。
何があっても味方でいてくれたのは、ダリューンです。
だからダリューンは16翼将の中でも、頭一つアルスラーンとの絆が固いのともいえましょう。
ダリューンは14歳〜19歳の多感な時期を生きたアルスラーンにとって「絶対的に支えてくれる最初で最後の存在」だと改めて思うのですよね。
まず殿下は、両親を早くに失います。
街で育ててくれた乳母夫婦も葡萄酒でアンドラゴラス王により毒殺され、孤独の王太子生活に突入。
そして「王都炎上」でカーラーンをはじめとし、バンバン大人たちに裏切られます(泣。
目の前で繰り広げられる黒い裏切りと身勝手な思惑錯綜の中、ダリューンだけは私欲なくアルスラーンの味方でした。
「どんなことがあっても味方」なのはダリューンで、「殿下にとってめちゃくちゃ安心感をもたらす」人物です。
ナルサスもアルスラーンを「高く評価」はしているし、彼なりの愛をアルスラーンに持ってます。
けれど、どこかで計算が働いています。
おまけにダリューンほど食い込んでもない。
原作2部に至っては、、
「アルスラーン殿下はあまりにも・・・」
などと何やら意味深発言が連発し始め、アルスラーンの行先を憂うかのようです。
ファランギースも、2部が進むにつれ陛下の優しい性格に対し「未来への心配」を醸し、懐疑的になっています。
(ルーシャンもそうだな。「優しすぎる・・・」と嘆いて死の旅路へ。。)
けれどダリューンだけは違うのです。
アトロパテネで「王子ひとり、騎士ひとり」というアニメ版のキャッチコピーそのもので、”ズタボロ”から二人でスタートし、その悲惨を二人で目の当たりにしています。
そこからナルサスに助力を求め、アルスラーン陣営は華やかになっていきますが、ダリューンだけはいつも殿下の心身を気にかけます。
アルスラーンの重い運命を知り、自分もそれを共有しお助けできたら・・荷を軽くできたら・・くらいに感じています。
シンドゥラ遠征で「殿下の正体は知ってます、私にとって大切な主君です」と言い切ります。
アニメ版の演出も良いシーンです。
原作に近いです(手を取ることはしない)。でもいつ見てもいいシーンです。
こんなシーンを設定できる田中芳樹先生はすごい。
キシュワードに「伯父の遺言もあるけど(殿下の元にありたいのは)、俺自身の意志」と断言し、征馬孤影となったアルスラーンを追いかけます。
2部に入り、ダリューンがシンドゥラのラジェンドラ王に勅使として赴く時、他の将から「相手が民衆であっても陛下に仇なすものがいたらどうする?」みたいなことを問われたら、
「陛下に刃を向けるもの、全て俺の敵だ」
・・・迷うことなく言い放ちます。
もうほんと、ダリューンは、アルスラーンの「守護神」状態。
アニメでは「過保護」という言葉が飛び交いますが、過保護以上ですよ。
強い「臣従愛」いや「守護神愛」です。
以上をもってしても「兄以上の存在だった」と・・アルスラーンが蛇王を仕留めにかかる前のセリフは、個人的にはめちゃ納得なのです。
「ダリューンと一緒の墓に葬って」というワガママも私個人としてはアリです。
>アルスラーンとダリューンに見られる「忠誠&主従愛」は際どくはあるけど「戦時」なら成り立つ
アルスラーンとダリューンの主従愛は、そのわかりやすく際立った描かれ方もあり、同人誌界でも「ダリューンとアルスラーンの衆道関係」を露骨に表現する女性”腐”作家も多いようです(笑。
ただ私は原作を読んでいても、わりに衆道色は匂ってきているのですよね。。
田中先生は完全否定するでしょうが、アルスラーンとダリューンの行動心理描写の文章から、”その匂い”はぷんぷんしているといって過言ではありません。
少し話はずれますが、北野武が『首』という映画で男色描写を行なっていてちょっと話題になりました。そのことについて彼は、
「戦国の最中にあって、主君をお守りするというのは、そこまでの強い絡まりや交わりがないと難しいはず」
みたいなことを言ってたのですが、ダリューンとアルスラーンも「露骨ではないにせよその流れはある」と確実に思わせられます。
アルスラーンは、第1部の神前決闘でダリューンが危ない目に遭いそうになるとめちゃくちゃ憤りますし、、
2部に入ってからは、シンドゥラへの勅使に立ったダリューンが7日帰還が遅れただけで、メンタルと行動がズタボロになりました(^^;;。
(アルスラーンらしくなくなるのです)
ダリューンに対する「大将軍」指名についても・・命令に対し対しまごついているダリューンに
「私の指名を受けてくれないのか」
とちょっと怒ります。
蛇王一派のせいで、次々と有力武将を失っていく中
「離れないでそばにいてほしい(甘えているのはわかってるんだけど)」
みたく言い放ったりもします。
ダリューンはダリューンで、アルスラーンに対する絶対的な忠誠心と彼なりの”主従愛”を持っています。
ナルサスからも「そこ」は期待されてしまっているし・・・
アルスラーンの”お願い”に関して「敵10万の兵士を目の前にするよりも狼狽」したりします。
(→敵10万以上にアルスラーンの恐縮態度に、メンタルやられてひるむ大陸最強の戦士・・・。いや、これ、完全にLOVEですよ、はい)
そして前述してますけど、極め付けは
「陛下の敵は、何人たりとも自分の敵だ!」
と迷うことなく言い放つ・・・
私は腐女子ではないですが、さすがにアルスラーンとダリューンの関係は2部に入っていっそう(プラトニックな)衆道精神そのものじゃないかあ。。と思わずにはいられないのです(爆。
1部と違い、魔道や蛇王ザッハークとの戦いに終始する2部はどうあっても全体的にトーンが暗いです。
そこかしこに悲痛な雰囲気が蔓延している状態なのですが、そんなストーリーの流れを重ねる上で、
「ダリューンと一緒に埋葬されたい」
と願うアルスラーンの率直な気持ちは、、ごく自然です。
身内がいないアルスラーンだからこそ、余計にダリューンとの人間愛は特別だったのよね。
(ダリューンには、大人になるまでヴァフリーズがいました。彼が絶対的安心感の存在だったので、ダリューンは捻くれてないのです)
とてもわかるきがするなーって純粋に思った次第です。
王都炎上から天涯無限まで。
アルスラーンとダリューンの関係性は終始一貫しています。
彼らは、際どくはあるけど、固い信頼と厚い主従愛で結ばれた「至高の関係」なのですよね。
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